EPSON PCシリーズ

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EPSON PCシリーズは、セイコーエプソン社が販売していたPC-9800シリーズ互換機である。コマーシャルでは国民機と呼称されたこともある(なお、この「国民機」というフレーズは、俗にPC-9800シリーズを指す用語としても用いられた)。

目次

[編集] 概要

EPSON PCシリーズは、インテル社のi80286を採用した PC-9801VX/RX/DX 等が主流となった1987年から、Windows95が発売される前の1995年初頭にわたって生産、販売されたNEC PC-9801互換機である。

初期は同等な性能の機種では日本電気(NEC)製品より安く、同価格帯のNEC製品より高速であることを、末期はNEC機には無い特殊なアップグレードパスを用意することをコンセプトとして製造販売が続けられた。

[編集] アーキテクチャ

[編集] 黎明期

1987年4月発売の初代機「PC-286」はCPUにi80286 10MHzを採用し、PC-9801VX21相当の性能を持つ機械として発表されたが、NECにBIOSが9801のリバースエンジニアリングによるものであり、NECの著作権を侵害しているとされ、並行してクリーンルーム設計で開発されていたBIOSと差し替えの上発売された。なお、この問題を受けてBASICROMで持たない仕様に変更されていた[1]。その半年後に、デザインを一新しより低価格化した「PC-286V」が発売されるものの、売れ行きはいま一つ低調であった。

1987年ラップトップ機のPC-286Lシリーズを発売。NECのラップトップ機であるPC-98LTが、PC-9800シリーズでありながらテキストVRAMを持たず互換性に乏しかったのに対し、ほぼPC-9801VM2相当の互換性を持たせた[2]。またCバスを独自に小型化した汎用バス「Lスロット」を搭載していた。但し表示デバイスは2階調表示のSTN液晶またはNTN液晶(白色表示)で、カラー表示を前提としたアプリではやや見難い欠点があった。このシリーズはその後8階調表示のPC-286LE、高速版のPC-286Book、PC-386Book-Lなどを経てPC-286Noteシリーズに引き継がれた。

1988年には、PC-9801RX相当の12MHzの286を搭載しより安価な「PC-286VE」、同様にPC-9801RA相当の20MHzのi386DXを搭載した「PC-386」、NEC機には存在しない16MHz駆動のAm286を搭載した「PC-286X」が発売されにわかに注目を浴びることとなった。この高速286路線は、1990年発売の20MHz駆動の「PC-286VX」やその普及型である16MHzの「PC-286VG」と続くこととなる。また、本体キーボード一体型のPC-CLUB(PC-286C)、プリンタ一体型のラップトップ機PC-ONE(PC-286LP)などの機種も発売された。また、8MHzベースクロックのCPUを搭載するに当たっては、互換性を考慮して、RS-232C経由での通信用に、別途5MHzのベースクロックを供給した。水晶発振子では世界に名だたるセイコーグループゆえに可能であったのだろうが、NECはこれが原因で14400bpsモデムの登場期に「NECよりEPSONの方が互換性が高い」と後に皮肉られることになる。

この世代までのPC-386と全てのPC-286は、グラフィックやテキスト表示が高速で、動作中にCPU動作速度の切り替えが行える等の特色を有していたが、PC-9801VX以降に搭載されているEGCを持たず、PC-9801VM相当のGRCGのみが搭載されていたため、一部のゲームなどに対する互換性が低かった。このことから、「高速なVM」の域を脱してはいなかったと言える。また、ラインアップ上ハイレゾ機が用意されていなかったことは、別の意味から互換性の問題を抱えることともなった。

もっとも、当時市場に流通していたPC-9800シリーズ対応市販アプリケーションソフトの大半は「VM対応」であり、すなわちPC-9801VX以降の備えるEGC機能を活用していなかった。その意味では「高速で安価なVM」である事に徹したPC-286/386シリーズに相応の競争力があったのは事実であり、特にパソコンゲームのファンや同人ソフトの製作者たちに好まれた。

[編集] EGC搭載から終焉まで

1990年12月発売の「PC-386S」は25MHzのi386DXと互換EGCを搭載し、同時発売の「PC-386G」では33MHzのi386DXとハイレゾモードを搭載するという方針の大転換を行った。これは、NECがハイレゾ機をNESA搭載のPC-H98シリーズに移行したのを受け、安価で高速なハイレゾ機という一種の隙間市場を狙ったものであろう。セイコーエプソンはこの時期にNECとの間でNESAに関するライセンス契約を結んだとされるが、これはそこに包含される一部仕様のライセンス取得が主目的であったらしく、最終的にエプソンはNESA搭載機を製造販売せずに終わっている。

この頃、フロッピーディスクが5インチから、ワープロ専用機等で爆発的に普及しつつあった3.5インチへと一気に移行しつつあった。その隙間のニーズを突く形で、エプソンは1991年6月の「PC-386GS」から、3.5インチFDD2基と5インチFDD1基を搭載するモデルを投入した。FDDを標準で3基搭載するPCは他に例がなく、この時期のEPSON PCの特徴として知られている。

1992年6月発売の「PC-486GR」では、i486SX 25MHz、グラフィックアクセラレータ専用ローカルバス搭載、オーバードライブプロセッサによるものでない正規のPentiumへのアップグレードを保証、とNECの同世代機に比してCPUクロック、グラフィック描画性能について圧倒的な高性能を低価格で実現し、ベストセラーとなった。後から部品交換や追加することでマシンの性能を段階的に向上可能とするこの設計コンセプトは「UP GRADEコンセプト」とよばれ、以後のエプソン製98互換機の一大特徴となった。続くPC-386/486ノートシリーズ各機種でも、CPUやHDD、増設FDDやカード、液晶モジュールなどのパーツを、交換できるような設計がされた(PC-386NAR、PC-486NAS以降)。また、ノートシリーズ用のHDDパックを内蔵できるデスクトップ機もあった。

性能的にはハイエンドに移行していったとはいえ、それでもシステムセット価格ではNECのメインストリームより、実売価格で2~3割以上安価に供給されていた。また、ハイレゾをオプションとすることで価格を下げた「PC-486GF」も発売された。EPSONの486機の方がNECの386機より安かったのである。従前の路線である「安価なPC-9800互換機」を変えたわけではなかった。

また、変わったところでPC-486 PORTABLE(PT)というペンコンピュータがこの時期に発売されている。

この時期のエプソンの動きとして注目されることの一つに、サウンドブラスターシリーズで知られるCreative社との共同開発による、Cバス対応版Sound BLASTER 16の提供がある。これは、NEC純正のサウンドボードが低機能なPC-9801-26Kと高機能だが非常に高価なPC-9801-73しかなく、当時流行しつつあったマルチメディア対応、特にWindows上でのPCM音声の取り扱いに適当なサウンドボードが存在しなかったために開発されたものである。

もっとも、その一方でこのボードは本来のSB16相当のFM/PCMサウンド機能だけではなく、PC-9801-26ボードとのFMサウンド機能の互換性を持たせるため、オプションとしてOPNチップとその周辺チップを追加搭載するためのソケットが用意されているという大きな特徴があり、I-Oデータ社の取り扱いによるボードの外販もあって本家NEC製98のユーザーにも普及し、一時は海外からの移植ゲームを中心に対応ソフトが提供されるなど、98用サウンドボード市場に一大勢力を形成した。

しかし、1993年1月PC-9821 A-mateシリーズ発売によって上記のアドバンテージは全て覆された。

また、後続のPC-486/586シリーズにおいてはPC-9821の機能拡張の中核をなすPEGC相当のVGA解像度グラフィック機能の実装や、86音源相当のFM/PCMサウンド機能の搭載は行われなかった。1993年9月「PC-486HX」においてはPCI 1.0準拠のローカルバスを搭載するなど独自拡張路線を貫いたが、1995年6月の「PC-586RJ」をもってシリーズは終焉を迎えた。

[編集] 終焉後

エプソンは、エプソンダイレクトやエンデバーシリーズを立ち上げるなど、PC/AT互換機(非・国民機)路線に移行し、EPSON PCシリーズは登録ユーザへのアップグレードパーツの優待販売とWindows 95(EPSON PCシリーズ用Windows 95は、最終的に5万本を販売した[3])の販売をもって、サポートを終了した。

その後、エプソンは「プラットフォーム・エミュレータ 98/V」を発売し、その体験版も無償で公開した。「98/V」はPC/AT互換機上でPC-9800シリーズ用ソフトウェアを動作させるためのエミュレータソフトウェアである。

「98/V」は純粋なソフトウェアエミュレータ版とEGC互換チップ等を実装したISAカードと専用ソフトウェアがセットとなったハードウェアエミュレータ版の2種が提供された。前者にはGRCG相当の描画機能しかサポートしなかったものの、使用条件を満たすPC/AT互換機上であれば機種を選ばず動作するというメリットがあり、後者にはISAスロット1本の消費と引き替えに、ソフトウェア版に比して格段に高速な動作とEGC相当の描画機能が提供されるというメリットがあった。

とは言え、これらはいずれもPC-9801-26K以降のNEC純正FM音源を公式にはサポートしなかった(後にユーザーによりフリーソフトが作成された)ためにゲームには不向きであった。それ故、EPSON PCユーザーは以後Windowsの快適な環境を最優先にPC/AT互換機に乗り換えるか、それともMS-DOSゲーム環境を重視して、この時期以降急激に低価格化していったPC-9821シリーズを購入するかの二者択一を迫られる事となっていったのである。

[編集] 本体の型番

EPSON PCシリーズはごく一部の機種を除き、搭載しているCPUの名前を冠している[4]。ラップトップ機には「L」、ノート機には「NOTE」、ブックタイプ機には「BOOK」と続くものの、デスクトップにおいては、アルファベットに一貫した命名基準は無い模様である。

※初期には当時のPC-9800シリーズの命名基準を意識した、Vが5インチFDD搭載のメインストリーム、Xが高速・拡張性重視のやや大型の筐体、Uがホビー指向の3.5インチFDD搭載の小型筐体機というグループ分けはされていた。

なお、「Pro-486」のみは命名基準から唯一逸脱している。

[編集] サードパーティー機器・OS

NECは自社の販売するN88-BASIC(DISK-BASIC)やMS-DOSに自社製ハードウェアであるか確認する処理を付け加えるなどした(通称:EPSONチェック)が、セイコーエプソンではそれを解除するパッチ(SIP:ソフトウェアインストレーションプログラム)を供給し、サードパーティー機器の互換性検証を行い情報提供を行っていた。

もっとも、EPSONが開発したCバス用グラフィックアクセラレータにはPC-9801シリーズで動作しないようにプロテクトされていた事例も存在する。

ちなみにこのEPSONチェックはPC/AT互換機が台頭してきてからのリリースとなったMS-DOS 6.2以降では廃止となっている。

なお、EPSONは自社で移植したMS-DOSや、N88-BASICと互換性のある独自のDISK-BASICも発売していた。MS-DOSのVersion4の移植版は、EPSONから発売されたのみで、NECからは発売されていない。

また、エプソンはWindowsについてはVer.3.1までの各バージョンと、ハードウェア終息後にユーザーに対する事実上最後のアフターケアとなったWindows 95の提供を行い、OS/2についてもVer.2系まではサポートがあったが、Windowsでも98以降とNT系、OS/2ではWARP(Ver.3)以降については移植が行われていない。

[編集] 脚注

  1. ^ 当時のNEC関係者は、何故最初からクリーンルーム方式で開発されたBIOSを搭載して発売しなかったのか意図が良く判らないと述べている。
  2. ^ つまり「PC-286」を名乗ってはいるが80286搭載ではなく、V30搭載である。
  3. ^日経産業新聞』1998年4月15日付
  4. ^ 但しPC-286U、最初のラップトップ機PC-286L、LE、最初のノート機PC-286NOTE executive、PC-286NOTE Fの5機種はCPUにV30を搭載している。

[編集] 関連項目

最終更新 2009年5月16日 (土) 23:13 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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