F-5 (戦闘機)

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ノースロップ F-5

米空軍のF-5EタイガーII

米空軍のF-5EタイガーII

F-5は、ノースロップ社が1950年代に開発したアメリカ合衆国戦闘機。小型軽量で取得も運用も容易であったため、冷戦当時にアジアアフリカ南アメリカなどのアメリカの友好国の発展途上国にも大量に輸出された。愛称はA/B型が「フリーダム・ファイター(Freedom Fighter)」、改良型のE/F型は「タイガーII(Tiger II)」。アメリカ空軍の練習機であるT-38 タロンという姉妹機もある。

目次

[編集] 機体概要

極めて小型の機体に、直線翼に近い後退角の小さな主翼を取り付けている。この主翼形式はロッキードF-104の影響が大であると言われている。後退角を大きく取れば、最高速度や遷音速での加速性能に優れるものの、翼幅荷重が大きくなって旋回性能(運動性)は低下する。後退角を小さくすれば旋回性能は向上し、特に低速域での運動性が大きく向上する。主翼に(小型のものであるが)ストレーキが付いているのも特徴であり、意図したものではないが本機の性能向上に役立っている。双方とも後のF/A-18に継承されている[1]。なお後述するが、改良型では空戦フラップの採用によって、運動性はさらに向上している。

エンジンは元来ミサイル用として開発されたGE社のターボジェットエンジン、J85の双発である。J85は画期的な小型ジェットエンジンであり、重量やサイズに対しての推力の大きさは、当時の重く大きな大推力ターボジェットを遥かに凌ぐものであった(ジェットエンジンは小型であればあるほど推力重量比は大きくなる傾向にあり、ある意味当然の結果であった[2])。このJ85エンジンを双発にした事で、F-5は極めてコンパクトにまとめられたのである。小型エンジンを多数使う事の短所は、燃費効率は逆に悪くなる事と、コストが上昇する事である。しかしJ85はミサイルや無人標的機、他の小型機にも大量採用されているエンジンであり、量産効果によってコストを下げる事ができた。

また後述の通り本機は、冷戦下においてアメリカと友好関係にあった発展途上国用の供与機であり、燃費効率の良いエンジンによって長大な航続力を持つと周辺国の脅威になるので、供与する側のアメリカとしてはあまり望ましい事ではないのである。

[編集] 開発の経緯

[編集] F-5A/B

F-5A/Bは、他社との新戦闘機競争で大きく水をあけられていたノースロップ社が、第二次世界大戦中に建造され、まだ当時多数残っていたアメリカ海軍軽空母用の艦載機として計画されたのが萌芽であった。しかし、結局海軍はそれら軽空母を退役させる事にしたため、ノースロップは海外輸出市場に活路を見出す事になった。同時にノースロップは空軍のT-33の後継機にも目をつけ、戦闘機型をN-156F、練習機型をN-156Tとして並行して開発を進めた。このN-156T案は空軍にT-38タロンとして採用され、N-156Fも自社資金で開発を継続した。

当時発展途上国向けへの戦闘機の供与計画が進んでいた。すでにF-86は旧式化し、最新鋭であったF-104は高度な操縦・整備技術を要して高価であり、軍事機密も多く、主に冷戦下において共産圏との対立の先端にいたヨーロッパ諸国や日本といった有力な同盟国への供与に限られた(ただし、パキスタンヨルダンにもA/B型が供与された)。このため、廉価で、航法/測距レーダーといった基本的なレーダーさえも搭載せず(パイロットは目視で飛行と攻撃を行なった)、小型エンジンを使用しているために整備が容易で、飛行性能が優れていたことから、N-156Fは発展途上国向けの海外供与戦闘機に選ばれることとなる。こうして自社資金開発を進めていたN-156Fは、アメリカ政府から資金援助と空軍の航空機ナンバーが与えられ、F-5と命名された。

当初、F-5A/Bは純粋に供与機として用いられ、外国空軍への技術指導と訓練以外でのアメリカ空軍での使用予定はなかった。しかし、供与された国からの実績要求などから、アメリカ空軍内で試験的にF-5Aの飛行隊編成が行われ、ベトナム戦争において対地攻撃に用いられた。ただし、このF-5Aは空中給油能力、装甲の追加など、従来のF-5Aとは異なる「特別仕様」のため、F-5Cという非公式のニックネームで呼ばれる事もある。このF-5の参加した作戦はスコシ・タイガー作戦と命名され、F-5の作戦能力と双発エンジンによる被弾時の生存性が高く評価される事となった。ただし、MiG-21との直接の交戦は無く、もっぱら対地攻撃に使用されていた。「スコシ」と言うのは日本語の「少し」のことであるが、「少し虎」ではなく「小さな虎」といいたかったのだということである(「少し」の辞書的訳語をlittleとしていたが、littleをsukoshiで置き換えて外国語風の語感にする例があった)。

供与された国としては、旧南ベトナム中華民国タイイランエチオピアヨルダン大韓民国ノルウェーリビアギリシャトルコモロッコなどがある。この他にパキスタン第3次印パ戦争中に、リビアのF-5Aをパイロットと共に「提供」され、数機使用していたとされる(この他にサウジアラビアがF-5E飛行隊を同国に派遣していたともいわれる)。また、ベトナム戦争終結後、南北統一後のベトナムでは、旧南ベトナム空軍から接収したF-5A(ベトナム空軍の展示ではF-5E)が対地攻撃任務機としてカンボジア侵攻に用いられていた。

また、カナダオランダでは自己資金によって改良とライセンス生産が行われ、カナダはCF-5、オランダはNF-5と呼称した。ただし、オランダは資金難などからカナダに生産を委託した。また、CF-5はベネズエラにも輸出され、現地ではVF-5と称される。この2つのF-5バージョンは、ベトナム戦争での使用経験と共に、F-5E/Fの開発での大きなヒントとなった。この他ではスペインノックダウン生産を行っている(SF-5)。

F-5A/Bは、経済性や発展途上国において初のジェット戦闘機としての利便性に加え、高価な戦闘機に勝るとも劣らない抜群の機動性で広まった戦闘機である。ベトナム戦争以外でめぼしい戦績は無いが、西サハラ紛争でモロッコが、オガデン紛争で(革命後の)エチオピアが実戦に使用したといわれる。ただし、そのほとんどが対地攻撃に用いられた。

F-5A/Bはその後、F-5E/Fもしくはその他の戦闘機に交替していったものの、ギリシャトルコはアメリカを介して退役したF-5A/Bを大量に入手して主力戦闘機の補助や対地攻撃に充てた。現在でも一線の戦闘機として就役しているのはベネズエラなどである。この他にカナダで退役したCF-5が、近代改修後にボツワナで再就役している。

[編集] F-5E/F

1960年代後半に入ると、ソ連MiG-21を中小国空軍向けにも輸出し始めた。MiG-21はレーダーを装備しており、目視でのみ戦闘を行いレーダーを持たないF-5A/Bでは対抗が困難になりつつあった。またエンジンパワーも劣っていた。そのためアメリカ国防省では、F-5A/Bに代わる新たな供与戦闘機の比較審査を1970年に呼びかけた。

比較審査にはロッキードCL-1200チャンスボートV-1000F-4の簡易型など各メーカーによる提案があったが、アメリカ空軍はノースロップより提案のあったF-5-21案を採用し、F-5Eと命名した。

スイス空軍の曲技飛行隊パトルイユ・スイス」のF-5EタイガーII

基本的にF-5E/Fは、F-5A/Bの改良型であるものの、

  1. エンジンを強化、
  2. F-5Aでは皆無であったレーダー類を追加、
  3. CF-5やNF-5で採用された空戦フラップや2段伸縮式の前脚の採用

などが行われ、F-5Aに比べて横幅が多少広くなっている。MiG-21を仮想敵とみなして開発されたものの、基本的に空対空レーダーのみに戦術レーダーを限定するなど、政治的な配慮もなされていた(ただし、イランサウジアラビアモロッコ向けの機体には空対地レーダーが自己資金で追加装備され、マーベリック空対地ミサイルなども装備できる仕様となった)。

F-5FはF-5B同様、副座の戦闘練習機であるが、F-5Bと異なり、本格的な空戦にも参加できるようにF-5E同様の機関砲・戦闘システムを残し(ただし、機関砲の搭載数は1門に減少)、燃料搭載量もF-5Eと同様にした。このため、機関砲を装備しないF-5Bとは大きく異なり、寸法やサイズ等が変更された。

その一方で、F-5の得意分野といえる利便性や経済性も受け継がれ、F-5A/Bを運用していた国の他にも、メキシコホンジュラスなどがF-5E/Fを採用した。

アメリカ空海軍では抜群の運動性能と、類似の機体サイズから トップガン等空戦訓練教程での、仮想MiG-21あるいは汎用の仮想敵機として、長く使用された。なお、1987年に公開されたアメリカ映画トップガン」では、仮想敵役としてのMiGではなく、架空機の「MiG-28」として登場する。(訓練のシーンでは本来のF-5としても登場する。なお、F-5は「MiG-28に比べると高速性能で劣るが基本的な特性は似ている」らしい。)

[編集] スペック(F-5E)

F-5E TIGER II 三面図
  • 乗員:1名
  • 全長:14.6m
  • 全幅:8.13m(翼端ミサイル発射レール無し)
  • 全高:4.4m
  • 最高速度:M1.6
  • エンジン:J85-GE-21×2基
  • 推力:2,270kg×2
  • 空虚重量:4,349kg
  • 最大離陸重量:11,187kg
  • 固定武装:20mm機銃×2門
  • 搭載兵装:AIM-9サイドワインダー、AGM-65マベリック、Mk82/84無誘導爆弾、CBU-24/49/52/58クラスター爆弾など

[編集] 派生型

ウィキメディア・コモンズ
  • F-5A:初期型。
  • F-5B:練習攻撃機。
  • RF-5A:F-5Aの偵察機型で機首にカメラを搭載した。
  • F-5E:F-5Aの改良型。エンジンなどを強化。
  • F-5F:F-5Eの複座練習戦闘型。F-5Eと同格のレーダーを搭載し、20mm機銃×1門を固定装備。
  • RF-5E:F-5Eの偵察機型。機首のレーダーと右側の20mm機銃1門を撤去してカメラを搭載。愛称はタイガーアイ。
  • F-5N:スイスで余剰となったF-5Eが米海軍でアグレッサーとして再就役した際の呼称。
  • F-5G(F-20):F-5のエンジンをJ85×2からF404×1に変更し、電子機器を近代化した機体。中華民国がF-16の導入を検討した際にF-16/79と共に提案されたが、中華民国の要求能力を満たしていない事、さらにアメリカによる中華民国への兵器輸出禁止(実際は自粛に近かった)を理由に不採用となり、その後中華民国は国産戦闘機の経国を開発した。同国と対立する中華人民共和国を刺激しないようにあえて新形式とせずF-5の派生型としての命名であったが、中華民国への輸出を断念した時点で新形式のF-20と改名した。

    詳細は「F-20 (戦闘機)」を参照

  • F-5EM:ブラジル空軍が近代化改修を実施したF-5Eの名称。アビオニクス類や航法装置、コクピットが近代化された。
  • F-5FM:ブラジル空軍が近代化改修を実施したF-5Fの名称。
  • X-29グラマンがF-5他の部品より製造した前進翼実験機。
  • Saeqeh-80:イランの自称『国産戦闘機』。F-5を強引に双垂直尾翼化しただけかのような外観を持つ。飛行性能、エンジン、武装、電子機器等の詳細は一切非公開だが、空気取り入れ口やそこからエンジンに繋がるダクトが全く変更されていないことから、エンジンはF-5のものをそのまま用いていると思われる。

[編集] 採用国


[編集] 登場作品

[編集] 参考

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  1. ^ 余談だがデルタ翼を採用すれば、翼幅荷重は大きくなっても、翼面積は大きくとれるので翼面荷重は小さくなり、こちらの場合は主に高速域での運動性が向上する。本機のような直線翼に近い主翼形式とは、一長一短である。
  2. ^ あるジェットエンジンを、同じ技術を用いたまま、寸法比をそのままにサイズを2分の1にすると、開口部の面積が4分の1になる。つまり推力もおおよそ4分の1になる。一方で重量は8分の1になり、推力が4分の1で重量が8分の1なので、結果として推力重量比は2倍になる。理論的にジェットエンジンは、小型であればあるほど推力重量比が大きくなるのである。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年9月15日 (火) 14:28 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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