電磁調理器

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電磁調理器(赤い部分は動作中のラジエントヒーター(RH)で、従来の電気コンロの効率を改善したもの。右手前と左奥が誘導加熱(IH)部で、動作中に発光することはないが、通電状態を示すために電気コンロを模して加熱部周辺が光る機能を持たせたものもある)
卓上電磁調理器

電磁調理器(でんじちょうりき)は、IH調理器とも呼ばれ、内部に存在するコイル電磁誘導と鎖交磁束を利用して、金属を加熱し調理できる機械ガスを使用せず、電気のみで稼動する。一般的には焜炉型をしている調理器具を言うが、IH炊飯器などの、同じ加熱原理を用いる機器を含めることがある。IHクッキングヒーターと言った場合は焜炉型の調理器を限定して指す場合が多い。

目次

[編集] 概要

電気コンロ同様に燃焼式ではないため、室内の空気を汚さない、及び防火対策の簡略化(=内装制限の緩和)などのメリットがある。そして安定した加熱管理制御を得意とするため、スープなどの液体の加熱に適している。反面、鍋釜等をガラストップ(コイル)から遠ざけてしまうと、誘導加熱および鍋釜等の温度検出が出来ず加熱を停止させてしまうため、フライパンを使った場合に調理ムラを生じ易いといったネックがある。

電磁調理器では、ガスコンロのようにスルメや海苔を炙ることが出来ない。もっともガスコンロでも鍋検知機能が搭載された機種があり、その場合は鍋検知機能を解除する必要がある。

[編集] 加熱原理

詳細は「誘導加熱」を参照

電磁誘導の原理による誘導加熱を利用して、コンロ上に置いた鍋釜等の底面にジュール熱を発生させて調理する。直接鍋釜が熱を発するために熱効率は非常に高い。しかし電気エネルギーを熱エネルギーへ変換するため、火力発電所で発電された電力であれば熱エネルギーへの再変換となり、結果として総合エネルギー効率は火を使用する調理機器と比べ若干低くなる。(約6%程度。CO2削減量は遙かに大きい。)

[編集] ガス調理器と比較した場合の得失

電磁調理器を従来のガス調理器と比較した場合、誘導加熱であることで以下のような得失がある。

  1. 直接加熱であり熱効率が高い
    • 電熱器でを加熱する場合は熱線放射と加熱空気による伝熱のため、電気エネルギーのロスが生じるが、電磁調理器では原理上このような損失がほとんどなく熱効率が高い(約83%。尚、ガスコンロは約55%。)。しかし、1次エネルギーからの変換効率とするとエネルギー効率は若干悪くなる。(最近のコンバインドサイクル火力発電の効率は59%であり約49%となる。しかしCO2排出量はガスコンロに比べて格段に削減できる。)
  2. 天盤が平らなため、掃除が簡単。
  3. 裸火がないため、着衣に火がつく心配がない。
  4. 空気を汚さない(ガスは燃焼時に水蒸気と二酸化炭素が発生する)。
  5. コイルに流す電力を制御することによって容易に火力を制御することができる。反面、電磁調理器が作動しているのか分かりにくい(熱を持った調理機器に触れると危険)ため、作動中はランプなどで注意を促す製品が多い。
  6. 電磁調理器に対応した調理器具(鍋・フライパンやかんなど)が必要となる。材質(ステンレス鋼、鉄琺瑯など)、厚み(肉厚でないと反りやすい)、形状(底が平ら)が重要となる。電力会社が推奨する鍋は適切な品質で作られているが、高価である上に、底が肉厚のため重く、食材が入った状態で持ち上げるのはそれなりの筋力も必要。
  7. 鍋底のみを加熱するため、鍋やフライパンの持ち手が熱くならない。
  8. 揚げ物をしていても周囲が熱くならない。
  9. オールメタル対応と呼ばれるIHコンロの場合は、銅やアルミの鍋も利用できるが熱効率が落ち、火力が弱くなる。
  10. 火力は、立ち消えの心配のないとろ火から、素早く湯沸かしできるハイパワーまで幅が広い。
  11. 調理後、鍋が接していた部分は鍋底並みに高温なのでやけどなどに注意する。ガスコンロのように高熱になる部分が明確ではないので、「高温注意サイン」として天板へのプリント表示や、光で位置を示す電磁調理器もある。
  12. 上昇気流があまり発生しないため、換気がしにくく、周囲に油が付着する場合がある。

[編集] 電磁調理器とガスコンロ(燃焼式を代表とする)

家庭内に設置する上で、機能特性により派生する異なる点を次に挙げる。

換気
酸素供給(不完全燃焼防止)の為にガスコンロは適切な換気を必要とするが、電磁調理器は酸素供給を目的とした換気は必要としない。
排気
ガスコンロは燃焼ガスのドラフト効果もあり、排気捕捉率が高い。電磁調理器は燃焼ガスが発生しない為、排気ファンの能力は高めの設計が望ましい。また、換気の項目に示しているが、排気(室外へ出す)するには、給気(又は吸気 室内に入れる)が必要であり、換気は必要である。
ガスコンロは排気捕捉率が高く(排気と油分などが一緒になってすぐに換気扇まで昇っていく)周囲が汚れにくいが、電磁調理器は油分や水蒸気が広範囲に拡散してしまう。
放熱
電磁調理器は、鍋底のみを加熱するため、調理時の放熱が少ない。そのため、厨房の暑さ対策のための空調設備を削減することができる。
但し、ガスコンロの様に排気熱を利用して鍋全体を包み込むような加熱ができない。
調理器具
電磁調理器はその特性上、ある程度の電気抵抗を持つ金属製で、平らな底を持つ鍋しか使えない。
使用不可の例…磁力線を受け止められないガラス製や土鍋、電気抵抗の小さいアルミ製や銅製(オールメタル対応IHなら使えるが、出力は下がる)、底の丸い中華鍋、足つきの鍋
電力会社からは鍋底が平らで、かつ十分な磁力線を受けられるような、電磁調理器対応の鍋が推奨されている。一般の調理器具よりも高価なので、電磁調理器の導入時には鍋などの買い替えも予算に入れておくべきである。
底が平らであることが電磁調理器を安全に使用する上で重要である。これは、安全装置(温度センサー)の感知方法の違いによるものである。ガスコンロはバネの力を利用した直接接触センサーであり、調理器具(使い込み、底の変形があっても)を選ばない。一方、電磁調理器はその天板が真平らという特性上、天板下に埋め込まれている安全センサーと鍋底が密着している必要がある。
電磁調理器は、軽い調理器具を使用するときに、鍋底と天板との間の水気による横滑りを注意する必要がある。テーブルの上においたお椀が自然と滑り出す原理と同じである。
清掃性
天板の清掃は電磁調理器が格段に清掃性において優れている。ガスコンロもガラストップコンロが主流となっているが、燃焼口廻り(バーナー部・五徳部)が有る限りこの差は埋まらない。
調理後の清掃での注意点…電磁調理器のガラス天板のうち、調理中に鍋が接していた部分は鍋底と同じく高温なので、やけどに注意する。熱で溶ける樹脂製の調味料入れなどを置くと溶けてくっついてしまう。また、高温のガラス天板に味噌やケチャップをこぼしたままにしておくと、熱で変質し黒い塊になってこびりつく恐れがあるので放置しない。
電磁調理器において忘れがちなのが、フィルター部の清掃である。電気製品であるため、内部基盤部で発生する熱を逃がさないと不具合の原因となるためフィルターの目詰りには注意を要する。
電磁調理器のグリル部分は、中間の高さに電熱線を収めた管が突き出しているものが多い。安全上取り外して洗うことができず、清掃の邪魔に感じる利用者も多い。
内装制限
建築基準法により火気を取り扱う部屋では内装制限(不燃材料やたれ壁の設置義務)が定まっている。また、消防法(主に地方の火災予防条例)にて各自治体判断にて決められているが、電磁調理器では規制が当たらないことが多く自由度の高い設計が行なえる。例として、固定されたテーブル面に組み込み、天板デザインを同一とするデザインや、剥き出しとした屋内梁を取り入れた設計などがある。ただ、加熱されたフライパンや一部にラジエントヒーターが組み合わさったものでは、可燃物が触れると燃焼するため考慮する必要は残る。
内線規程
電気消費機器等の規制で内線規程があり、電磁調理器は内線規程により最大出力制限がある。よって、ガスコンロのように3口+グリルを同時使用することができない、または出力(火力)が抑制される為、意識して用いる必要がある。(最近は3口+グリルを同時使用できる機種も発売されている。)
電磁波
電磁調理器はその特性上電磁波が発生する。この電磁波の影響については具体的な危険性は立証されていない。また安全であるという立証は不可能である。特に商用周波についてはほぼ安全であるとの認識ができあがりつつあるが、高周波電磁界についての論議は継続されている。確かなこととして、一部ペースメーカーの誤作動や、腕・手への金属装着部への加熱の危険性がある。また、電磁波そのものの影響ではないが、発振周波数を音として感じ不快に思う者もいる。
災害
燃焼式は火災震災などの際、燃料漏洩による被害拡大や二次災害が予測される。これに対し電磁調理器が使用する商用電源は有事の際には直ちに遮断することができ、災害発生時の安全性については優位と言える。反面、プロパンガス用のガスコンロが災害発生後、安全が確認され次第直ちに復旧が可能であるのに対して、電磁調理器はインフラ破壊によって商用電力が遮断されるとまったく使用することができず、給電設備の復旧を待たなければならない。停電は積雪や台風などによっても発生するため、プロパンガス地域では停電を嫌ってガステーブルを使用する家庭もある。

[編集] 指摘されている問題点

電磁誘導を基本原理としているため当然であるが、電磁波(主に磁界、商用周波数帯および高周波帯)が発生する。一部の研究者などによる測定では、利用時に周辺にて電磁波を測定すると、国際的な電磁波の制限のガイドラインを超えることがあるという指摘がある。今のところ電磁波全般の健康への安全性・危険性は証明されていないが、一部の消費者団体などが安全性を問題視し始めており、その主張を扱った書籍も出版されている。それに対し、電力会社、メーカーや日本電機工業会(JEMA)では、安全である旨の主張を行っている。

詳細は「電磁波#生体への影響」を参照

電磁調理器は、安全でエネルギー効率も良く簡単に使えるという事を「宣伝文句」として販売されているが、「宣伝文句」が必ずしも現実に即してるいるわけではないという主張も一部の消費者団体からなされており、2006年現在、そのメリット・デメリットについてメーカーや電力会社など利害関係者、国や民間の研究者、反対の立場である団体、専門機関などで研究が行われている。

電磁調理器と都市ガス(13A)を使用するガスコンロを熱効率を考慮のうえ、同じ熱量の加熱で排出される二酸化炭素排出量で比べた場合、発電等も含めたトータルではIH調理器の方が排出量が大きいという主張もある。これは、調理として電力を使用する時間帯の主電源は火力発電であり、その1次エネルギーとして占める天然ガスを設定した場合において、発電効率及び送電ロスを加味した場合によるものとされている。

電磁調理器の販売台数が急増するのに伴い火災などの事故が頻発しており、その主原因は「消費者の誤使用」と経済産業省の調査結果が出ているため、同省はその対策強化を進める方針を決め「ガス調理器も長年、啓発や改良を重ねてきた。IH調理器もメーカーだけではなく、電力会社も啓発や製品改良を進めていくべきだ」と表明している[1]

[編集] 脚注

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  1. ^ 火を使わないのに火事!? IH調理器事故続発で対策強化 - 1 / 2 msn産経ニュース 2009年6月3日

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年10月19日 (月) 14:28 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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