J-2ロケットエンジン

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J-2エンジン詳細
J-2エンジンを5基搭載したサターンV ロケット二段目(S-II)

ロケットダイン社製J-2ロケットエンジンは、スペース・シャトルのメインエンジン(Space Shuttle Main Engine, SSME)が誕生するまでは、アメリカで最大の液体水素を燃料とするロケットエンジンであった。またNASAコンステレーション計画において、アレスI およびアレスV の二段目ロケットとして復活することが決定した。

J-2はサターンIB 型ロケットおよびサターンV 型ロケットの主要な構成部分であり、S-II(サターンV 第二段)には5基、S-IVB(サターンIB 第一段およびサターンV 第三段)には1基が使用された。ノヴァ・ロケット(計画倒れに終わった、サターンV よりも巨大な幻のロケット)の上段では、より多くのJ-2を使おうという提案が出されたこともあった。

J-2エンジンの最大の特徴は、一度燃焼を停止させたものを、宇宙空間で再度点火することが可能であるということである。サターンV の第三段は最初から二回噴射することが予定されていて、一回目は2分間の噴射でアポロ宇宙船を地球周回軌道に到達させ、いったんエンジンを停止して飛行士が軌道上で宇宙船に異常がないかどうかを確認した後、再度6分半噴射して宇宙船を脱出速度まで到達させ、月へと向かわせるというものであった。

目次

[編集] J-2S

J-2エンジンの性能を向上させる実験計画は、1964年にJ-2Xという名称でスタートした(後に同名の全く異なる計画が行なわれたため、しばしば混同される)。原型のJ-2からの主な変更点は、燃料の供給システムをガス発生器サイクル(Gas Generator Cycle)からタップオフ・サイクル(tap-off cycle)に変更したことである。

一般に液体燃料ロケットエンジンは、毎秒数百リットル以上もの燃料や酸化剤を消費するため、それらをタンクから燃焼室に送るための強力な動力が必要になってくる。ガス発生器サイクルは最も基本的なシステムで、ポンプの出口から燃料と酸化剤の一部を取り出し、別に設置したガス発生器の中で燃焼させ、その排気ガスによってポンプに直結したタービンを駆動するというものである。使用済みの排気ガスはノズルの中に排出され、推力として還元される。

これに対しタップオフ・サイクルは、主燃焼室にあたかも蛇口(tap)を設置するようにして直接燃焼ガスの一部を取り出し、タービンを駆動させるものである。これによって、主燃焼ガスの半分以下の温度の燃焼ガスを利用でき、ガス発生器を設置する必要がなくなるというメリットがある[1]。またエンジンを構成する部品が少なくなるため、各種装置の始動のタイミングが的確になり、点火もしやすくなる。

さらにJ-2では、液体水素と液体酸素の混合比率を変えることで燃焼圧力を的確に変化させる推力調整機能が追加されたことにより、幅広い打ち上げ計画に柔軟に対応できるようになった。また無重力状態の軌道上で、燃焼前に燃料をタンクの底に押しつけ、エンジンに送り込むために微少な推力を発生させる「アイドリング・モード」機能も新規に追加された。

実験段階でロケットダインは試作品J-2Sを6基製作し、それらは1965年から1972年にかけ、のべ30,858秒(8時間34分18秒)にわたり燃焼試験が行なわれたが、アポロ計画が中止されサターンロケットの発注がなくなったために、J-2Sの開発も取りやめになった。その後もNASAはJ-2Sをアポロ以外の様々な計画に使用することを検討し、スペースシャトルの初期の概念図では5基のJ-2Sを搭載したイラストなども描かれていたが、実現されることはなかった。

[編集] J-2T

J-2Sの開発計画が進行している間、NASAはJ-2Sにターボマシンと、空力的な効果を考慮に入れたエアロスパイク・ノズルを搭載して性能を向上させたモデルについても検討していた。推力90トンを発揮するJ-2T-200kと、推力113トンを発揮するJ-2T-250kの二種類の試作品が製作され、J-2Sと同様長時間にわたって燃焼試験が行なわれたが、アポロ計画の中止によって取りやめになった。

[編集] J-2X

J-2X概念図

現行のスペースシャトルは2010年に退役し、その後はアポロ宇宙船を基礎にして新規に開発されたオリオン宇宙船を使用する、コンステレーション計画が発足する。

ところでそのオリオン宇宙船を打ち上げるアレスI ロケットの二段目に、どのエンジンを使用するかという点については、NASAも考慮を重ねた。当初はスペースシャトルのメインエンジンであるSSMEを使うことも考えられたが、SSMEは地上で点火するように設計されている。それを宇宙空間で点火するように設計し直し、さらに燃焼試験なども一からやり直すことの手間暇を考えると、J-2を改良して推力を133トンにまで向上させたJ-2Xを使用したほうがよいとNASAは判断した。

この決定は2006年2月18日になされ、原案では地球脱出用ロケットに2基のJ-2Xが搭載されることになっていた。これにより、アレスI は2010年にシャトルが退役してから3年以内に、オリオン宇宙船は2014年までに発射が可能になると予想される。さらにJ-2Xを、宇宙船発射用のアレスI と貨物発射用のアレスV の両方に使うことにすれば、開発の手間はさらに省けることになる。そこで2007年8月23日にステンニス宇宙センター(Stennis Space Center)に燃焼試験台が建設され、J-2X開発のために2007年12月から2008年5月にかけて、旧式のJ-2エンジンの燃焼試験が行われた。

J-2Xは、アポロ計画で使用された原型のJ-2よりもはるかに効率的でシンプルな構造になっており、またコストの面においても、シャトルのSSMEよりもずっと安上がりになるように設計されている。燃料ポンプの駆動には、上記のガス発生器サイクルが使用される。

2007年7月16日、NASAはロケットダイン社と、アレスI およびアレスV ロケットの上段に使用するJ-2Xのデザイン・開発・試験・評価に関する総額12億ドルの契約を正式に交わした。同年9月8日には、ロケットダインはJ-2Xで使用されるガス発生器の試験が順調に行なわれたことを表明した。

[編集] 詳細

[編集] J-2

J-2エンジン

推力(高々度):90トン(890kN
燃焼時間:500秒
乾燥重量:1,579kg
装備重量:1,637kg
ノズル圧力比:27.5対1
燃料/酸化剤:液体水素/液体酸素
混合比:5.50
製作:ロケットダイン社
使用ロケット:S-IVB(サターンV 三段目およびサターンIB 二段目)で1基、S-II(サターンV 二段目)で5基

[編集] J-2S

推力(真空中):120トン(1179kN)
比推力(真空中):436秒(秒速4,276m)
乾燥重量:1,467kg
装備重量:1,724kg
燃料/酸化剤:液体水素/液体酸素
製作:ロックウェル・インターナショナル/ロケットダイン社

[編集] J-2X

推力(真空中):133トン
比推力(真空中):448秒
乾燥重量:2,469kg
燃料/酸化剤:液体水素/液体酸素
製作:プラット・アンド・ホイットニー/ロケットダイン社
使用ロケット:アレスI 上段で1基、アレスV 上段で1基

[編集] 参考文献・注記

  1. ^ 中村佳朗監修/鈴木弘一著『ロケットエンジン』森北出版株式会社

最終更新 2009年11月22日 (日) 15:34 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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