K-T境界
K-T境界の最新ニュースをまとめて検索!
K-T境界(ケイ・ティーきょうかい)とは地質年代区分の用語で、約6500万年前の中生代と新生代の境目に相当する。生命誕生以来何度か発生した大量絶滅のうち最新の事件(恐竜を代表とする大型爬虫類やアンモナイトが絶滅した)が起きたことで有名。
K-T境界では、直径約10kmの巨大隕石がユカタン半島付近に落下したことが判明している。この隕石落下は生物相変化をいっそう促進したと考えられるが、その影響の大きさについては諸説ある。
目次 |
[編集] 名称
白亜紀と新生代第三紀の境目に位置する。白亜紀は英語では Cretaceous だが、頭文字がCで始まる地質年代区分が多いため、ドイツ語の Kreide からとった頭文字Kが略号として用いられる。これと、英語で第三紀を意味する Tertiary の頭文字Tとを組み合わせてK-T境界としている。ただし、現在は第三紀の語は正式な用語として使われておらず、古第三紀(Paleogene)との境界であることからK-P境界の語が用いられる[1]。
[編集] 大量絶滅
中生代は大型爬虫類の時代であった。地上では恐竜が、空中では翼竜が海中では首長竜や魚竜が繁栄していた。K-T境界を境にして、これらの大型爬虫類の全てが絶滅した。生き残ったのは、爬虫類の系統では比較的小型のカメ、ヘビ、トカゲ及びワニなどに限られた。恐竜直系の子孫である鳥類も絶滅を免れている。海中ではアンモナイト類をはじめとする海生生物の4割(有孔虫では種の97%以上と属の92%以上)が姿を消した。この時期に絶滅した生物種は、全体の70%ほどと見積もられている。これらの生物がいなくなった後、それらの生物が占めていたニッチは哺乳類と鳥類によって置き換わり、現在の生態系が形成された。陸上の植物相は、白亜紀中頃には既にジュラ紀末まで隆盛を誇ったソテツ類などの裸子植物に代わって、被子植物を主体とするものに変わっていた。K-T境界以後も被子植物主体の植物相であることは変わらないものの、花粉分析の結果、K-T境界直後のシダ植物の一時的進出を挟んで、構成を大きく変化させていることが明らかになった。
[編集] 地球気候の変化
中生代を通じて地球の気候は温暖であった。当時の爬虫類の分布から想定して、平均気温は現在より10~15℃程度高かったと考えられる。原因として大気中の二酸化炭素の濃度が現在よりも高く、温室効果が大きかった事があげられる。中生代は火山活動が比較的活発で、火山ガスによって二酸化炭素が大量に大気中へ供給された。中生代の二酸化炭素濃度は現在(0.03%)の10倍以上あったと推定されている。中生代に繁栄した恐竜を代表とする生物種は、この高温に適応した生物であった。しかし白亜紀末期には気温が徐々に低下し始めていたため、隕石落下前の地層から発見される化石では、大型恐竜やアンモナイト類の種の数が減少していた。
[編集] 高濃度のイリジウム:隕石説と火山説
1980年、地質学者のウォルター・アルヴァレズ(Walter Alvarez、一般にはアルバレスとも)とその父でノーベル賞受賞者でもある物理学者ルイス・アルヴァレズ(Luis Alvarez)は、K-T境界における大量絶滅の主原因を隕石とする論文を発表した[2]。アルヴァレズ父子はイタリアのグビオに産するK-T境界の薄い粘土層を分析し、他の地層と比べきわめて高濃度のイリジウムを検出した。イリジウムは、地表では極めて希少な元素である反面、隕石には多く含まれること、デンマークに産出する同様の粘土層からも同じ結果を得たことで、イリジウムの濃集は局地的な現象ではなく地球規模の現象の結果であると予測されることから、彼らはその起源を隕石に求めた。
この論文は、地質学者の激しい抵抗で迎えられた[3]。反論のなかで最も有力だったものが、イリジウムの起源を火山活動に求めた火山説である。地表では希少なイリジウムも、地下深部には多く存在する。それが当時起こっていた活発な火山活動(デカントラップ)により地表に放出されたとするのが火山説であり、隕石説に反対する多くの地質学者がこの説を支持した。
以来、およそ10年にわたって、隕石説と火山説の間で展開された論争は、1991年に、ユカタン半島において白亜期末に形成されたと見られるクレーター跡が発見されるに至って、隕石説に軍配が上がる形で決着した。
[編集] 巨大隕石落下の証拠
白亜紀と第三紀を境する、イリジウムに富む薄い粘土層はイタリアやデンマークだけでなく、アメリカや日本等世界各地に分布している。特に北アメリカでは、イリジウム濃縮層とそれよりやや厚い粘土層の2層が観察され、衝突の結果形成されたクレーターが付近に存在すると考えられてきた。
粘土層中には、高熱で地表の岩石が融解して飛び散ったことを示すガラス質の岩石テクタイトやスフェルール、高温高圧下で変成した衝撃変成石英(Shocked Quartz)、ダイヤモンドも発見されており、これらはすべて、衝突時の衝撃により形成されたと考えられている。また粘土中には多量のすすが含まれ、これは衝突時の高熱により地上の植生等が大規模な火災を起こした証拠と考えられている。
1980年の論文の時点で、落下したと考えられる隕石の大きさ(直径10km程度)は計算されていたが、落下したことの最も確実な証拠であるクレーターの場所については、先述の通り北アメリカ近辺にあるらしい、という以外明らかではなかった。
1991年、ユカタン半島北部に存在する円形の磁気異常と重力異常構造が再発見され[4]、その後の調査の結果、求めるクレーター跡であると認められた。
K-T境界では、上記のように直径約10kmの巨大隕石が落下した。落下地点は現在のメキシコユカタン半島の北西端チクシュルーブで、落下により直径100km以上[5]、深さ15~25kmのチクシュルーブ・クレーターが形成されたことが確認された(写真参照)。
また、落下地点は当時浅海域だったと推定され、キューバでは隕石落下による巨大津波を示す堆積物も見つかっている[6]。
[編集] 想定されるシナリオ
大量絶滅の主原因は、巨大隕石の落下による環境急変とする説が広く知られているが、その他に大陸の移動による気候変動、植物相の変化による動物の餌の不足、などいくつかの説があり、まだ結論は出ていない。
大量絶滅の原因が巨大隕石の落下であった場合に想定されるシナリオは次のようなものである。
- 隕石本体は衝撃による発熱で気化蒸発し、塵となって大気中に広がった。
- 落下海域では巨大津波が発生し、津波は全世界の海岸を襲った。
- 落下地点の岩盤は高熱により融解し周囲に飛び散った。落下の衝撃により周辺の岩盤が破壊され巨大なクレーターが生成した。クレーターの形成時に大量の岩屑が空中に舞い上がった。
- 大気は塵によって不透明となり日光が地表に届かなくなって、地表が寒冷化した。
- 大気中に舞い上がった岩石中に含まれていた硫黄分が酸性雨を降らせた。
- 環境の激変に適応できなかった多数の生物が死滅した。
[編集] 顕生代の内訳のグラフ
地質時代区分表は地質時代を参照。
| 古 |
|
新 | |||||||||
|
|||||||||||
|
[編集] 脚注
- ^ 松井(2009)による。
- ^ Alvarez, L.W., Alvarez,W., et al. (1980). “Extraterrestrial Cause for the Cretaceous-Tertiary Extinction”. Science 208 (4448): 1095-1108. DOI: 10.1126/science.208.4448.1095.
- ^ 斉一説に真っ向から反する仮説と捉えられたのである。(パウエル、2001年)
- ^ 石油地質学者はこの構造を1980年より以前に知っていた。(パウエル、2001年)
- ^ その後の研究で直径は約250kmと見積もられている。(パウエル、2001年)
- ^ 松井(2009)による。
[編集] 参考図書
- ウォルター・アルヴァレズ(Walter Alvarez) 『絶滅のクレーター - T・レックス最後の日』 新評論、1997年。ISBN 4794803338。
- 平山廉 『最新恐竜学』 平凡社新書、1999年。ISBN 4582850111。
- リチャード ミュラー 『恐竜はネメシスを見たか』 手塚治虫訳、集英社、1987年。ISBN 4087730824。
- ジェームズ・ローレンス・パウエル 『白亜紀に夜がくる-恐竜の絶滅と現代地質学』 寺嶋英志・瀬戸口烈司訳、青土社、2001年。ISBN 4791759079。
- ピーター・ダグラス・ウォード 『生きた化石と大量絶滅-メトセラの軌跡』 瀬戸口烈司・原田憲一・大野照文訳、青土社、2005年。ISBN 4791761839。
- 松井孝典 『新版 再現! 巨大隕石衝突-6500万年前の謎を解く』 岩波書店、2009年。ISBN 978-4000074957。
[編集] 関連項目
最終更新 2009年11月7日 (土) 09:17 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
【K-T境界】変更履歴



