M2ブラッドレー歩兵戦闘車

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M2/M3 ブラッドレー
M2 Bradley
基礎データ
全長 6.55m
全幅 3.60m
全高 2.98m
重量 30.4t
乗員数 3名 + 兵員6名(M2 IFV)
装甲・武装
装甲 アルミニウム / 鋼
主武装 M242 25mm機関砲
2連装TOW 対戦車ミサイル発射機
副武装 7.62mm機関銃M240
機動力
速度 66km/h (整地)
7.2km/h (水上)
エンジン ディーゼル
600hp
懸架・駆動 トーションバー
行動距離 483km
  

M2 ブラッドレー歩兵戦闘車(M2 Bradley Infantry Fighting Vehicle)は、アメリカ合衆国で開発された歩兵戦闘車(IFV)である。1981年アメリカ陸軍に採用された。M3 ブラッドレー騎兵戦闘車(M3 Bradley Cavalry Fighting Vehicle)という装甲偵察車(CFV)型も存在する。

ブラッドレーという名称は、第二次世界大戦ヨーロッパ戦線で活躍した米軍の将軍オマー・N・ブラッドレー元帥にちなむ。[出典 1]米軍での運用が開始された1981年以降、6,724両が生産された。[出典 2]

目次

[編集] 設計開発と量産

M2 ブラッドレーに搭乗する米陸軍第3機甲騎兵連隊(イラク)

M2 ブラッドレーは、ベトナム戦争などで使用されたM113装甲兵員輸送車シリーズの後継車両としてM1戦車と共に設計開発され、次の能力が求められた。

  1. M1戦車に追従できる路外機動能力
  2. ソ連の歩兵戦闘車であるBMP-1シリーズを凌駕する

BMP-1は73mm低圧砲とサガー対戦車ミサイルを備えていたため、新たに開発する装甲兵員輸送車は必然的に重武装となり、また重量でも11-12トンのM113と比べても22.7トンと2倍になって、エンジンを含む駆動系も大型化した。このため、Armored Personnel Carrier(装甲兵員輸送車)ではなくInfantry Fighting Vehicle(歩兵戦闘車)という新たな戦闘車両のカテゴリーが設けられ、価格高騰[1]の理由として説明された。この車体重量は、開発が進むに連れてさらに増してゆく。

1981年の試作とそれに続く量産以降、1994年までにIFV/CFVの2種で総数6,724両[2]が生産された[出典 3][出典 2]アメリカの兵器製造委託企業ユナイテッド・ディフェンス(United Defence)が製造を請け負っていたが、2005年にユナイテッド・ディフェンスを買収したBAE システムズ・ランド・アンド・アーマメンツで製造と改修がなされている。

[編集] 特徴

基本となった"M2 IFV"は、固有乗員と下車戦闘兵員の合計9名を搭載できる輸送能力と共にM242 25 mm 機関砲TOW対戦車ミサイルを搭載している。

1982年に採用された初期量産型のM2 (M2A0) では、C-141輸送機での輸送可能であることも必要条件であった。これは、1988年に採用されたM2A2において、C-141輸送機の後継であるC-17輸送機での輸送可能であることが必要条件となった。[出典 4]

また、設計における主要目的の一つが、M1 エイブラムス戦車に随伴可能なスピードを維持できることであった為、走破性能は非常に優れている。車体の外部装甲はアルミニウム溶接で車内の重要な部分にはラミネート装甲という構造になっている。[出典 1]しかし、これが欠点の一つとして挙げられることもあり、アルミニウム装甲は成形炸薬弾(HEAT)の直撃を受けると蒸発・消失しやすく、弾薬の搭載量が多いことから、生存性は低下していると考えられた。

湾岸戦争での実戦経験を経て、後に装甲の強化など大幅に改良されたM2A1、M2A2が登場した。M2A2からは戦場での生存性を高める為に、アップリケ装甲(爆発反応装甲)の装備が可能なようにされており、徹底した試験と評価を経て採用され、イラク戦争に実戦参加した。[出典 1]M2A3では重量も33トンに達し、行動距離は402 kmへと短くなっているが、搭載兵員数が6名から7名に増えるなど、車体も再設計された。[出典 4]

[編集] 武装

M242 25mm機関砲
M242 ブッシュマスター 25mm機関砲は毎分約200発の連射が可能で、射角+60°〜-10°、有効射程2.5kmで、単発/100発/200発が切り替えられる。弾種:徹甲弾APDS-T、榴弾HET-T。弾数:900発(IFV)、1,500発(CFV)[3]
TOW対戦車ミサイル
最大射程3,750mのTOW対戦車ミサイルの2連装発射機により、重装甲車両に対する攻撃が可能になっている。発射機内2発+予備3発。
M240C 7.62mm機関銃
M242C機関砲の右側に同軸にM240 7.62mm機関銃も備える。弾数:2,200発(IFV)、9,460発(CFV)[4]
M231 5.56mm FPW
ガンポートより射撃するための小銃。専用に開発されたM16小銃の派生型で、銃身が短縮されているほか、ガンポートに固定して使用することから、銃床も省かれている。ガンポートの廃止以後は搭載されていない。

[編集] 車体・走行系

アルミニウム合金(Al, Mg, Zn)の全溶接の装甲に履帯を備えた車体に、カミンズ製VTA-903ディーゼル・エンジン(500馬力)と662リットルの燃料を搭載して、最大速度65km/h、航続距離480kmという性能である。

車内は右前部がエンジン室、左前部に操縦手が座り、車体中央の砲塔には右に車長、左に砲手が位置し、(A2型以降は)後部空間内に下車戦闘する兵員6名がほぼ互い違いに前後を向く5名と左の壁に背を付け右を向く1名とやや変則的に座乗する[5]

[編集] 実戦使用

湾岸戦争では、M1エイブラムスよりも多くのイラク軍車両を破壊したが、12輌のブラッドレーが損傷し、20輌が失われた。敵の砲火で失われたのは3輌で、友軍による誤射が最も多かったことを受け、赤外線識別パネルの追加と識別マーキングを施された。

イラク戦争やその後の占領下では、RPG-7(ロケット推進擲弾)や即席爆発装置(IED)による攻撃を頻繁に受けている。RPGやIEDによる攻撃のみなら完全な破壊には至らないので、車体を犠牲にして乗員は難を逃れるという方針があるものの、死者の数が増えていることも事実である。

アメリカ陸軍ではこの他、1990年代半ば以降、ボスニア派遣軍でブラッドレーが使用されており、2006年の時点で損失したブラッドレーの数は55輌である。[出典 5]

[編集] 車種

主要な車種として、M2 ブラッドレー歩兵戦闘車(IFV)とM3 ブラッドレー騎兵戦闘車(CFV)の2つのファミリーがあり、これらは同一の基本車体(シャーシ)を使用しているが、細部の装備等が異なっている。また対空型や車台の他への利用もある。

M2A2 ブラッドレー
湾岸戦争に送られたM3 ブラッドレー
M6 ラインバッカー

[編集] M2ブラッドレー歩兵戦闘車

M2ブラッドレー歩兵戦闘車(IFV)は、3名の固有乗員に加えて下車戦闘する歩兵分隊6名が完全武装で搭乗できる。

[編集] M3ブラッドレー騎兵戦闘車

M3ブラッドレー騎兵戦闘車(CFV)は、3名の固有乗員に加えて偵察チーム2名が搭乗可能であり、追加の無線装備や対戦車ミサイルTOWドラゴン・ジャベリン)が搭載可能である。なお、M3 ブラッドレー騎兵戦闘車の搭載機関砲は30mm 機関砲という情報もあった。

[編集] M6 ラインバッカー

M2A2 ODSの派生型で、砲塔横にFIM-92 スティンガー 地対空ミサイル 4連装発射機を装備した対空型である。米陸軍では退役する予定である。

[編集] BSFV

BSFV(Bradley Stinger Fighting Vehicle)は、SAMを携行する歩兵(対空特技兵)の輸送と支援を行うために設計された。

[編集] ウォーハンマー・ブラッドレー

M2A2 ODSの派生型で、対戦車戦闘力の向上型。FGM-148 ジャベリン 対戦車ミサイルを2基搭載し、照準器を改修した。

[編集] M7 ブラッドレー FSV

既存の観測車両と交代するため、ブラッドレーをFSV(火力支援車)に改修。慣性航法装置、コトロールパネルと目標指示システムなどが追加されている。

[編集] 他への利用

MLRS
ブラッドレーの基本車体の設計がM270 多連装ロケットシステム発射機にも利用されている。

[編集] 基本型と改良型

M2とM3のいずれも約25年の間に4回の改良型が生み出され、基本型と合わせて5種類の車輌が作られた。

[編集] M2A0 - M3

1982年に採用されたシリーズの基本となった初期量産型である。赤外線画像処理装置とブッシュマスター機関砲の照準器を統合したシステムが標準装備された。全長6.45m、全幅3.2m、全高2.97m、戦闘重量22.7トンであった。

[編集] M2A1 - M3A1

1986年に採用された。TOW II ミサイルに換装し、消火システムなど防御力を意識したシステムを導入。NBC排ガスフィルターも装備された。

[編集] M2A2 - M3A2

1988年に採用された。エンジンの出力向上やサスペッションの改良を受け、弾薬保管庫の改善や防弾ライナーと爆発反応装甲の追加など防御が大きく改善された。防弾鋼板が最大で25mm、エンジンも強化され600馬力となった。

[編集] M2A2 ODS/ODS-E - M3A2 ODS

名称のODSは"Operation Desert Storm"(砂漠の嵐作戦)を意味しており、湾岸戦争での教訓から改良が施された。1996年から運用開始。1,423輌がODSへと改良された。

戦術インターネットを利用するためのアップリケ・コンピュータ、レーザー測距器 (ELRF)、戦術ナビゲーション (TACNAV)、GPSレシーバー (PLGR)、デジタルコンパス (DCS)、有線誘導ミサイル妨害用にサンダース製AN/VLQ-8A電子光学妨害装置、戦場認識データリンクシステム (FBCB2) などが追加された。他にも内部のシステムや構造も大幅に改造され、下車戦闘チームの座席は1名分減って両側2つで定員6名となった。戦闘重量は27.2トンとなった。

[編集] M2A3 - M3A3

目標補足能力と火器管制能力を改善するため完全デジタル化、あるいは電子機器のアップグレードが行われた。車長用独立旋回式映像装置(CIV)、TRW製コンピュータによるFBCB2戦闘指揮システム、第2世代FLIR、下車チーム用と砲塔・操縦席の平面ディスプレイも加えられた。

改修は1997年より開始され、1,902台がA3にアップデートされる予定である。戦闘重量は30.4トンとなった[出典 3]

[編集] 歩兵分隊

米陸軍では4輌のIFVで機械化歩兵小隊を組み、M1戦車とIFVという車輌に随伴して下車した歩兵分隊チームが互いの弱点を補いながら戦闘に臨む体制をとっている。

A2型以降のM2ブラッドレー歩兵戦闘車(IFV)は、各車輌ごとに下車戦闘する歩兵分隊6名が搭乗しており、歩兵分隊24名に加えて機械化歩兵小隊の小隊長でもあるIFVの1号車の車長が下車して戦闘指揮を行なうことが多く、同様に他の2輌の車長も下車する。IFVの車長が欠けた3輌のIFVはぞれぞれ残る2名の内、砲手が車長代行となり予備砲手が砲手を務める。下車戦闘歩兵の27名は9名ずつ3つの歩兵分隊となり、3名の元車長が分隊長となって戦う事になる[出典 3]

[編集] 採用国

[編集] M2ブラッドレー歩兵戦闘車が登場する作品

  • 映画「ペンタゴン・ウォーズ/暴かれた陰謀」 - ペンタゴンで行われている兵器開発M2ブラッドレー歩兵戦闘車の開発にまつわる腐敗など実話に基づいて描かれている。
  • ゲーム「マーセナリーズ」 - 国連軍の歩兵戦闘車として登場する。

[編集] 出典

  1. ^ M2A3 and M3A3 Bradley Fighting Vehicle Systems (BFVS), Federation of American Scientists (FAS) 2000-05-05 (英語)
  2. ^ M2 and M3 Bradley Fighting Vehicle Systems (BFVS), GlobalSecurity.org 2005-06-24(英語)
  3. ^ 河津幸英著 『イラク戦争』 アリアドネ企画 2005年7月10日第一版発行、ISBN 4-384-03400-8
  4. ^ M2 Bradley Fighting Vehicle, Gary's Combat Vehicle Reference Guide 2007-10-25(英語)
  5. ^ Thompson LB, Korb LJ, Wadhams CP. Army Equipment After IraqPDF Lexington Institute and Center for American Progress. 2008-10-30

[編集] 注記

  1. ^ 平均単価は結局、317万USドルとなった。
  2. ^ M2 ブラッドレー歩兵戦闘車が4,641両でM3 ブラッドレー騎兵戦闘車が2,083両である。
  3. ^ 高速徹甲弾を発射する砲に共通の危険だが、本機関砲でも徹甲弾発射時には砲口前方にサボが超音速で放たれるため、友軍歩兵などはその前方100m左右17度の範囲には立ち入らないように求められる。
  4. ^ 下車戦闘部隊の携行する機関銃もM240Cの同種のM240B 7.62mm汎用機関銃(650発/分-850分/分、11.1kg)である。初期型のM2には車体後部側面に兵士が乗車戦闘を行う為のガンポート(銃眼)が設けられていたが、後に装甲強化のため廃止された。
  5. ^ A1型までは下車戦闘兵の座席は7名分あり後部の6名に加えて操縦手の後ろ、砲塔の左前に1名の機関銃手席があった。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

ウィキメディア・コモンズ

最終更新 2009年10月21日 (水) 11:40 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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