System/360
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| シリーズ名 | アーキテクチャ名 |
|---|---|
| IBM 701など | (モデルごと) |
| System/360 | |
| System/370, 30x0, 4300, 9370 |
System/370 |
| S/370-XA | |
| ESA/370 | |
| ES/9000, S/390 |
ESA/390 |
| zSeries | z/Architecture |
| System z (z9) | |
| System z (z10) | |
System/360(S/360、システム/360、しすてむさんろくまる)は、IBMが開発、1964年4月7日(日本では翌4月8日)に発表、以後順次出荷した汎用コンピュータ(メインフレーム)のシリーズである。
初めての汎用コンピュータであり、統一されたコンピュータ・アーキテクチャによりユーザー・プログラムや周辺機器の転用が可能となり、コンピュータ・ファミリを形成した。IBMのマシンで、本格的な「オペレーティングシステム」や「仮想機械」が登場したのもSystem/360である。
System/360シリーズの大成功により、コンピュータでは後発であったIBMは、競合他社を圧倒することになる。
System/360シリーズのアーキテクチャやアプリケーション・プログラムの互換性は、後続のSystem/370だけでなく、2008年現在の最新のSystem zまで引き継がれている。
目次 |
[編集] 概要
コンピュータ・アーキテクチャと実装を明確に区別した最初のコンピュータシリーズである。System/360の設計責任者はジーン・アムダールであり、後に独立してアムダール社を設立した。
それまでのコンピュータは、1つの業務を処理するのにはそれ専用のコンピュータとして製造され(専用機)、他の業務へ転用はできなかったが、System/360 は様々なソフトウェアを入れ替える事により、多種多様の業務に対応できるのが特徴(汎用機)。「360度(円の角度)、様々な業務に対応できる」という事で、360 と付けられた。構成によっていくつかのサブモデル(360/40など)がある。また、360の後継としてSystem/370シリーズがある。
汎用コンピュータとしては、このコンピュータが初とされている。
System/360は、IBM をメインフレームの巨人メーカーへと育て上げた。当時のメインフレーム市場における IBM の強さを「白雪姫と7人の小人」とたとえているものもある。1967年頃には、大型コンピュータにおける米国メーカーの出荷高の7割以上を IBM が占め、他社を圧倒してメインフレーム市場をほぼ独占する。他の7社は、UNIVAC、Honeywell、GE、CDC、RCA、NCR、バロースで、数%ずつのシェアを分け合った。
[編集] コンピュータ・ファミリ
それまでとは異なり、IBMは小型から大型までのさまざまなモデルを含むコンピュータシリーズ全体を開発し、全てにおいて同じ命令セットが動作するようにした(一部市場向けには例外あり)。これによって顧客は小さなシステムで運用をはじめて、必要に応じて(ソフトウェアを変更することなく)上位モデルにアップグレードすることが可能となった。さらに多くのモデルでは顧客の以前の機種(例えばIBM 1401やIBM 1620)をマイクロコードでエミュレーションするオプションを提供していた。これにより従来のプログラムもそのまま新しいマシンで動作させることができた。
この柔軟性により、導入にあたっての障害が小さくなった。他のベンダー(ゼネラル・エレクトリック以外)では機種間の互換性がないため、顧客の要望に応えるために個々の機種が高性能に設計されていて、結果として高価すぎて導入しにくいことが多かった。System/360はこの市場の成り立ちを全く変えてしまい、企業は低価格で安心して下位機種からリースすることができた(当時、IBMはコンピュータを販売するのではなくリースしていた。これは戦前の会計用パンチカードシステムのころからの伝統であり、不況に強いビジネスモデルと言われている)。
IBMは6モデルのコンピュータと40機種の共通周辺機器を発表した。最終的にはNASA向けの特殊な機種も含めて14モデルがリリースされた。最も安価なモデルは 360/20 で、24Kの磁気コアメモリを装備し、レジスタ本数も他のモデルの半分であり命令セットは他の機種と完全互換ではない(小企業向けであり、それ以上のものではない)。
1964年の最初の発表では、30, 40, 50, 60, 62, 70 というモデルが含まれている。モデル30, 40, 50 は中小型システムで、従来のIBM 1400シリーズの市場をカバーする。これらは1965年中頃に出荷が開始された。モデル60以上のモデルはIBM 700/7000シリーズの市場をカバーすることを想定していたが出荷されることなく、モデル65 と 75 が新たに発表され、モデル65 は1965年11月に出荷開始され、モデル75 は1966年1月に出荷開始された。
下位モデルとして、モデル20(1966年、上述)、22(1971年)、25(1968年)が追加された。モデル44(1966年)は中型の科学技術計算向けであり、浮動小数点演算機構が付加されているものの一部命令が削除されている。上位モデルとして、モデル67(1966年、後述)、85(1969年)、91(1967年)、95(1968年)、195(1971年)が追加された。モデル195 はSystem/360と後継のSystem/370のギャップを埋めるために出された機種である。
360/67 は1966年8月に出荷開始されたモデルで、IBMとしては初の動的アドレス変換機構(現在ではMMUと呼ばれるもの)とCP-67オペレーティングシステムによる仮想機械機能を提供した。
System/360の全モデルは1977年末には販売停止となった。
[編集] アーキテクチャ
System/360の汎用レジスタは、32ビットで16本である(アセンブリ言語では R0~R15 と呼称)。4つの浮動小数点レジスタも存在し、32ビットまたは 64ビットの浮動小数点演算に使用可能である。
メモリアドレッシングは「ベース+ディスプレースメント」形式でレジスタ R1~R15 をベースに使うことができる。ディスプレースメントは 12ビットなので最大4096バイトまで示すことができる。R0 レジスタはベースとして使うことはできず、「0」をベースに指定するとメモリの先頭 4Kバイトの範囲を指定することになっていた。
命令コードは 1バイトで、最低でも1バイトのイミディエート値が一種のオペランドとして存在する。命令は必ず 2バイト境界に配置しなければならない(命令の先頭アドレスが2で割り切れる)。命令には三種類の形式がある。オペランド無し(2バイト)、1オペランド(4バイト)、2オペランド(6バイト)である。MVC(文字移動)命令などは最大でも256バイトしか転送できない。それ以上の転送には複数回のMVC命令を実行する必要がある(System/370ではもっと強力な命令が追加された)。1オペランドは2バイトである。4ビットでベースレジスタを指定し、残り 12ビットでディスプレースメントを指定する。MVC命令は 6バイトであり、R7+0 から R8+1 へ255バイトを転送する命令のコードは「D2FF 7000 8001」となる(FFの部分が転送サイズ)。
[編集] システムソフトウェア
OS/360は中型のSystem/360コンピュータ向けに開発された。小型機種向けには BOS/360(ベーシック)、COS/360(カード)、TOS/360(テープ)、DOS/360(ディスク)があり、DOS/360は後に VSE に進化した。大型機種は OS/360 MVT(MVSに進化)を使用する予定だった。MVTは開発に時間がかかりすぎたため、機能の限定された MFT が主に使用された。TSS/360(Multicsのコピー)も予定されたが正常に動作させることができず、代わりに CP-67(前述)、MTS、TSO(タイムシェアリングシステム)などが使われた。CP-67 は後の VM/370 にも採用され、VM/CMS としてSystem/370の上位機種で長く使われた。
上位機種のOSは、なかなか当初予定していたものが完成しなかった。当時ソフトウェア工学は始まったばかりの学問であり、大規模ソフトウェアの開発手法は明らかになっていなかった。そのため単に人海戦術でプログラマを投入すればよいと経営側が考えていたことが最大の誤算である。この失敗とMulticsの失敗によってソフトウェア工学の重要性が認識されるようになった。
- → 詳細はOS/360参照
[編集] 基本ハードウェア
発明されたばかりの集積回路は信頼性や可用性に不安があったため、IBMはハイブリッド集積回路を使用した。個々のトランジスタやダイオードと基板にプリントされた抵抗などでフリップフロップを構成して、プラスチックか金属でカバーを施した。これをいくつかプリント基板に実装して SLTモジュール(Solid Logic Technology)と呼んだ。
[編集] プロジェクトとその影響
System/360開発プロジェクトには多額の費用がかかっており、フォーチュン誌による "$5 billion gamble" という表現の示すとおり、IBMはSystem/360に社運をかけたと言っても過言ではない(2002年の価値に換算すると280億ドルつまり約3兆円)。そして、IBMは賭けに勝ったのである。同時期のあのアポロ計画の予算が250億ドルである。
System/360では、以下のような業界標準が生まれた。
- 8ビットでバイトを構成(4ビットや6ビットをバイトとする案もあった)
- バイト単位のアドレス(ワード単位アドレスではない)
- 32ビット ワード
- 2の補数による演算(業界初ではないが、System/360で採用されたことで標準となった)
- セグメント方式とページング方式によるメモリ管理
- マイクロプログラム方式の商用化
- IBM 浮動小数点標準(20年後にIEEE 754に取って代わられた)
- EBCDIC文字セット
本来、System/360はASCIIキャラクターセットを使用していた。IBMは ASCIIの標準化にも深く関わっている。しかし、360をリリースするとき周辺機器が ASCII コードに対応していなかった。また、大企業や政府は大量のBCDファイルを持っていて ASCII コードに抵抗があった。BCDは簡単にEBCDICに変換できたが、ASCIIではそうはいかなかったのである。 EBCDIC は初期のSystem/360で使用され、それが大成功したがために業界標準となってしまい、その後の汎用コンピュータは互換性を維持するためにEBCDICをサポートし続けた。
[編集] 後継機種と派生機種
System/360は1971年にSystem/370シリーズに置き換えられた。(当初の計画では劇的に進化したFSテクノロジーで置き換えるはずだったが、コストと時間がかかり過ぎ、1970年代中盤に計画が中止された。)その後の互換システムとしては、アムダールの470ファミリ、IBM自身の3090、System/390、zSeries、System zがある。また、ソビエト連邦もSystem/360互換機を製造していた(ES EVM)。
放射線耐性を強化するなどの改造を加えた System/360 は System/4 Pi アビオニクスコンピュータと呼ばれ、いくつかのジェット戦闘機やジェット爆撃機に使われた。完全 32ビットの AP-101版では、4 Pi は二重化されたフォールトトレラントなスペースシャトルのコンピュータシステムに使われた。アメリカ連邦航空局 (FAA) はSystem/360を改造した特殊なクラスターを IBM 9020 と呼び、1970年から1990年代まで航空管制に使用していた。(9020用ソフトウェアは新ハードウェア上でもエミュレーション機能上で使われている。)
[編集] 参考文献
- M.キャンベル-ケリー、W.アスプレイ 著、山本菊男 訳 『コンピューター200年史 : 情報マシーン開発物語』 海文堂、1999年、ISBN 978-4-303-71430-7(旧ISBN 4-303-71430-5)
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最終更新 2009年10月31日 (土) 09:06 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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