オリオン (宇宙船)

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有人月面探査に向かうオリオンのイメージ

オリオンOrionまたオライオンとも)は、アメリカ航空宇宙局 (NASA) が2010年に運用が終了するスペースシャトルの代替として開発中の宇宙船である。かつてはCrew Exploration Vehicle(クルー・エクスプロレイション・ビークル、略称はCEV)と呼ばれていたが、2006年8月22日、NASAはオリオン座に因み、同宇宙船を「オリオン」と正式に命名した。この宇宙船は国際宇宙ステーション (ISS) への人員の輸送手段として、また次期有人着陸計画(コンステレーション計画)への使用も期待されている。

目次

[編集] 概要

[編集] 宇宙船

宇宙船はアポロ計画で使われた機体に近いカプセル形状をしている。この円錐形の司令船は、アポロが底面直径3.8mで定員3人であったのに対して、オリオンは底面直径5m(当初の計画では5.5mだった)、寸法は1.5倍、容積は3倍で、6人のクルーが生活できる。定員はISSへの往復の場合が6名だが、月探査では4名を予定している。また、有人火星探査も睨んでいる。アポロが完全使い捨てであったのに対し、オリオンは10回程度繰り返し使用する計画である。

後部に連結される円筒形の機械船は、やはりアポロ同様に月への往復に使用するロケットエンジンを備えている。燃料は液体酸素メタンである(注:メタン推進系の採用は見直し中)。これは将来の有人火星探査において、火星大気中の二酸化炭素からメタンを現地生産するかもしれないためである。また、ロシアソユーズ宇宙船と同様に、太陽電池パドルを設置することで、長期間の電力供給を可能にする予定である。

[編集] 打上げロケット

人員打ち上げ機 (Crew Launch Vehicle: CLV) としては、構想段階では「インライン・ミディアムリフター」と呼ばれていた専用のロケットアレスIが用意される。開発コストを削減する為、スペースシャトルのシステムと、既存のロケット製造技術を流用する。アレスIの第1段には、スペースシャトルの固体ロケットブースター (SRB) を4セグメントから5セグメントに延長したタイプを使用し、第2段にはサターンロケットで使われた液体酸素と液体水素を使用するJ-2エンジンの改良型となるJ-2Xエンジン1基を使用する予定となっている。 スペースシャトル並みに地球低軌道へ約25トンの打ち上げ能力を持つ予定。

貨物(月着陸船)の打ち上げ機 (Cargo Launch Vehicle: CaLV) としては、アレスVが使われる。月探査時にはCaLVで月着陸船を地球の周回軌道上に打ち上げてから、クルーを乗せたCLVを打ち上げ、軌道上でドッキングすることになる。アレスVは、第1段のメインエンジンには、ボーイング社のデルタIVに使われている液体酸素と液体水素を使用するRS-68エンジン5基が採用された。打ち上げ能力を補うために5セグメント固体ロケットブースター2基も使われる。2段にはJ-2Xエンジン1基が使用される。 こちらはサターンV並みに、地球周回軌道に約125トンの打ち上げ能力を持つ予定。

[編集] スケジュール

NASAは当初、2011年までに試作機を製作、早ければ2014年にも有人飛行を行うとしていた。しかし、2007年4月にそのスケジュールを見直し、オリオン宇宙船とアレスIの試作機は2013年、有人飛行は2015年以降に延期となった。これに伴い、開発費も39億ドルから43億ドルと上昇している[1]

これにより、ISS完成に伴いシャトルが退役する予定の2010年から最低5年のブランクが生じる事となり、その間のISS滞在要員輸送手段は事実上ロシアのソユーズのみとなる。また、アレスVの飛行は2018年以降で、それもアルタイル月着陸船の打ち上げが優先されるため、ISSへの物資輸送も日本のHTV[2]やロシアのプログレスなどに頼ることになる。

[編集] なぜシャトルタイプではないのか

アレスIの打ち上げ(想像図)

オリオンがアメリカで30年近く放棄されてきたアポロソユーズ型の使い捨て型ロケットシステムに回帰する理由は以下の通りである。

  • シャトルに比べてロシアのソユーズの評価が相対的に高い。シャトルは1980年代初期に建造された4機(後に1機追加)がほぼそのまま使われ続け、うち2機が事故によってクルー全員の命と共に失われている。一方ソユーズは40年余りの間に100機以上が打ち上げられており、2度の死亡事故を含めて何度か重大な事故を起こしたが、その都度改良が加えられ、1990年代以降は人命に危険が及ぶ事故は起きていない。
  • オービタに装備されている主翼垂直尾翼)は打ち上げ時と大気圏再突入〜帰還時にしか使用されないため、大気のない宇宙空間に出れば全く用をなさなくなる。そのうえ、翼の分だけオービタの表面積も大きくなり、太陽光の輻射熱を大量に受けてしまうため、非常に効率が悪くなる。打ち上げと帰還時にだけ翼を使用するくらいなら、むしろ翼のない方がよほど効率的である。
  • オービタを繰り返し使用するには多額のメンテナンス費用が必要で、使い捨て(短期利用)の宇宙船を使用したシステムの方がよほど経済的である。
  • 耐熱タイルの問題。打ち上げ時に脆い耐熱タイルを外部にさらしているのは危険で、コロンビア号空中分解事故も主翼の耐熱タイルを損傷したことが原因と考えられている。オリオンのシステムであれば耐熱部分をフェアリングで保護して打ち上げることができるため、同様の事故は回避できる。
  • シャトルには緊急脱出装置を搭載できなかったが、カプセル型宇宙船では、緊急脱出用ロケット(通称「LES」)を設置することが可能である。トラブル時にはカプセルのみを切り離して安全な場所へ避難できる。このシステムはアポロやソユーズでも設置され、ソユーズで一度使われて安全に避難できることが実証されている。
  • 次世代シャトルとして開発されていたベンチャースター計画の失敗。シャトルのコスト高を解決する方法として完全再利用型のSTSが計画されたが、技術的な難易度が極めて高く実現には至らなかった。
  • ISSの稼働により、シャトルのような大量輸送・長期滞在の機能が不要になるため。

なお、日本のJAXAにおいてHOPE計画の中止に伴って有志により提案されたふじ計画との相似性を指摘し、21世紀初頭における宇宙からの回収システムの技術的な最適値はカプセル型であるとする意見もある。

[編集] 脚注

  1. ^米シャトル後継「オリオン」、有人初飛行は15年以降か読売新聞 2007年4月21日
  2. ^シャトル代替に存在感…HTV初飛行」 読売新聞 2009年9月12日

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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最終更新 2009年10月29日 (木) 01:12 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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