キャブレター

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Bendix-Technico 製の ストロンバーグ式1バレル ダウンドラフトキャブレターModel.BXUV-3と、部品各部の名称

キャブレターcarburetor, イングランド地域の英語ではcarburettor)は、 内燃機関において、 燃料と空気を混合する装置である。戦後間もなくの頃はカーブレーターと表記される事もあった。

日本語では気化器と呼ばれるが実際は気化ではなく霧化である。

語源は、内燃機関の吸入気に、炭素化合物である石油系燃料を加え、混合させる働きをすることから、炭素と化合させるという意味の「carburet」に-erを付けたもの。 イングランド地域の英語car burettorは液体を少量添加するための器具ビュレットの車両用という意味である。

目次

[編集] 作動原理

キャブレターの基本概要図

以前は家庭でも見られた、アイロンがけや障子張りに用いられた、口で吹くタイプの霧吹きや、塗装や薬剤散布に用いられる、吸い上げ式のスプレーガンと同じ原理。

キャブレターに供給される燃料はボウルと呼ばれる部屋に一時貯まる。ボウルは開放構造で内部は大気圧に保たれている。常に燃料に浸かる場所には燃料の取り込みを制限するジェットと呼ぶ小穴があり、その先は複雑な形をしたチューブポートにつながっている。

一方、エンジンの回転に伴い、ポンピングにより発生した負圧によりキャブレターに吸い込まれる空気は、ベンチュリと呼ばれる流路を絞った部位を通過する。そのベンチュリ部では、いわゆる「ベンチュリ効果」により空気の流速が上がり、大気圧より圧力が低下する(低下の度合いはベルヌーイの定理によりわかる)。圧力が最も低くなる場所に、前述のポートがある。ポートは通常小さな穴、もしくは溝状である。こうしてポート付近に大気との圧力差が生まれることでボウルの燃料はチューブ内を突き進み、ポートから霧吹きのように拡散して、混合気が作られる。

スロットルを操作してもキャブレターは燃料の流れ自体は制御しない。キャブレターのスロットルは飽くまでも吸入空気の量を制御するだけであり、吸入空気量に応じてジェットで計量された燃料が吹き込まれるだけである。

[編集] ベンチュリ形式

[編集] 固定ベンチュリ型

ベンチュリ部を通過する吸気速度が燃料の吐出量を決定するタイプ。高性能エンジン用のウエーバーやソレックスをはじめ、多くのアメリカ車と日本車の一部のダウンドラフトキャブレターに見られる。今日ではこのタイプのキャブレターを製造するメーカーは少なくなっているが、日本国内ではオーイーアール(OER)が旧式のソレックスなどの更新向けにこのタイプのキャブレターの製造販売を続けている。

オートバイにおいては、ハーレー・ダビッドソンが1989年までこの形式のキャブレターを使用し続けていた事が著名である。特に戦前から戦後間もなくに掛けて使用されたリンカート(Linkart)キャブレターは、日本製の陸王でも日本気化器のライセンス生産品が搭載されていた。しかし、陸王倒産後の1960年代以降は、国産オートバイではこの形式のキャブレターが採用される事はなくなった。

[編集] 可変ベンチュリ型

吸気通路の開口面積をピストンバルブやフラットバルブで変化させる方式。エンジン回転の全域にわたって適切な吸気速度が得られる。自動車においては、日立、ゼニス・ストロンバーグを始めとするサイドドラフト・SUキャブレターが最も一般的に使用された。今日まで残るものではCV型とVM型の2方式に大別される。

[編集] CV型

CV(Constant Velocity または Constant Vacuum)型では、アクセルワイヤーは空気の流量を調整するバタフライバルブのみを操作する。ベンチュリ部はバキュームピストン(ダイヤフラム)によって形成され、その下端には穴が開けられている。バキュームピストンには膜が付いており、膜の片側にはベンチュリ部の負圧がかかり、反対側は大気に開放している。バキュームピストンはバネで支持され、バネの力と負圧のバランスでベンチュリ径が自動的に決まり、その後は流速がほぼ一定になるように自動調節される。ベンチュリ径が運転者の操作で直接変化しないため、操作に対しては寛容だが、その分レスポンスが悪い。自動車においてはSU式が代表的である。

[編集] VM型

VM (Villiers Monoblock または Variable Manifold) 型は、アクセルワイヤーが直接ピストンバルブを操作するため、空気の流量調整と同時に、ベンチュリ部の口径を直接変化させることになり、鋭いレスポンスが得られる一方、開け過ぎると空気の流速が低下して燃料の供給が滞るなど、運転者の技能によって大きく性能が左右される。ピストンバルブ式とも呼ぶ。強制開閉式と呼ばれることも多いが、これは本来スロットルバルブの閉じ側もワイヤー等により確実に操作できる方式のことを指す。

[編集] その他

上記の2形式に該当しない物として、フォードの開発したVV(Variable Venturi)型が挙げられる。「MOTORCRAFT.VV」の商品名で知られ、1977年から1991年まで、主にピックアップや大型トラックを中心に搭載された。

この形式は固定ベンチュリ型ダウンドラフトキャブレターをベースに、スロットルポジションセンサーでスロットルバルブの開度を監視しながら、メータリングロッドの付いた可動式ベンチュリをサーボモーターで動かしてベンチュリ径を常時変化させていくというもので、CV式の亜種とも言えるような形式である。[1]

信頼性にやや難があったとされ、ステージド・マルチバレルキャブレターが主流であったアメリカでもフォードの一部車種のみの採用で終わった。

[編集] 自動車用キャブレター

エンジンに搭載される全ての燃料装置に求められる要素は:

  • エンジンの吸入空気量を正確に測定し、
  • 吸入空気量に応じた正確な量の燃料をエンジンに供給し、
  • 尚かつ空気と燃料をきめ細かく均等に混合した混合気を生産出来なければならない。

この作業は、空気と燃料(ガソリン)が理想的な流体であれば容易な事であるが、実際には空気と燃料及び両者の混合気は粘着性、流体抗力、慣性などの影響を受けてその性質を複雑に変化させる上、エンジンの回転数によって混合気の流速自体が変化する為、その制御には極めて複雑な動作機構が必要となる。

また、燃料装置には様々な気温気圧、エンジン回転数、エンジン負荷、及びコーナリング負荷(遠心力)などの諸条件の変動を克服した上で、冷間始動、暖気完了後の温間再始動、アイドリング及び低速負荷走行、全開加速、高速高負荷・フルパワー巡航、パーシャルスロットル開度による低負荷巡航など、あらゆる走行・始動条件で適切な空燃比の混合気をエンジンに供給しなければならない。さらに近年では、排気ガス規制の克服の為の補正すらも必要となってくる。

キャブレターはこれら全ての条件の下で正しく機能するように発展してきた燃料装置であり、殆どのキャブレターが作動原理の項で述べられているごく基本的な気化機能の他に、様々な条件下での補正機能を持つ「系統」と呼ばれるメカニズムを有している。

[編集] アイドリング系統

スロットルが完全に閉じている位置から僅かに開かれる時、スロットルバルブの後ろでは高速な気流が発生する。この時、最も気流の気圧が低圧になる部分に設けられたアイドリングジェット(アイドルジェット)と呼ばれる追加の燃料供給穴からアイドリングに必要な量の燃料が供給される。

アイドリングジェットに対して、通常のスロットル操作によりベンチュリへの燃料供給を行うジェットをメインジェットと呼ぶ。アイドリングジェットはスロットルバルブがアイドリング開度の状態の時のみ動作し、通常の開度では燃料供給は行わない。

スロットルをアイドリングに適した開度に固定する為の機構として、アイドリングアジャストスクリューと呼ばれるネジが備え付けられている。このネジを締め込む事でスロットルバルブはより開き(アイドリングが上がる)、緩める事でスロットルはより閉じる(アイドリングが下がる)。

[編集] スロットル系統(メイン系統)

スロットルバルブが次第に開けられる時、バレル内の流速が速まっていくのに従って、ベルヌーイの定理によりインテークマニホールドの吸入負圧は次第に小さくなり、バレル内部の気圧も次第に上がっていく。この時、負圧によって作動していたアイドリング系統は動作を停止する。

同時にベンチュリを通過する空気の流速も速まり、この時にベンチュリの中央付近に設けられたメインジェットから燃料が供給される。キャブレターによっては、1個以上のブースターベンチュリ(追加ベンチュリ)が、メインベンチュリの内部に設置され、メインベンチュリの効果を高めている。スロットルバルブが次第に閉じられていき、バレル内部の流速が弱まり、吸入負圧が増大してアイドリング系統が再び燃料供給を開始するまで、上記の動作は継続して行われ続ける。

[編集] パワージェット(パワーバルブ)

パワージェット(パワーバルブ)とは、高回転高負荷時にメインジェットを補助する機構の事で、全開領域でメインジェットのみでは燃料が不足がちになる場合において燃料を追加供給する事で、プレイグニッションやデトネーションを防ぎ、エンジンをよりクールに保つ事が出来る。

パワージェットはスプリングで開閉が制御される一種のバルブであり、通常はバレル内が負圧状態の時は閉じるように設定されている。スロットルが開いていくのに従って吸入負圧は減少し、パワージェットのバルブスプリングはパワージェットを少しずつ開いていく。スロットルが全開状態になっている時はバレル内は大気圧(正圧)に近い状態となる為、パワージェットも全開状態となる。

パワージェットはそのエンジンの特性に応じて補正する燃料量が厳密に設定される為、オートバイ用キャブレターなどの場合には予め設定が固定されており、一部の市販レーサー車両を除いて[2]調整が不可能な場合が多い。

初期の2ストロークエンジンに用いられたパワージェットの中には、4ストロークエンジンのパワージェットとは逆に、バレル内が負圧状態の時に開き、正圧状態になると閉じる設定のものが用いられているキャブレターが存在した。これは、全開領域で燃調がやや薄めになる程より高回転まで回転が伸びていく2ストロークエンジンの特性を利用した物である。このような動作をするキャブレターの場合には、常用回転域は常にパワージェットによる補正が掛かる為、選択されるメインジェットはパワージェットが無い同サイズのキャブレターよりもやや薄めの番手が選択される。しかし、高回転域で意図的に薄めの燃調を取ると焼き付きのリスクも大きくなる為、耐久性が重視される近年の2ストロークエンジンではこのような動作のパワージェットは余り用いられなくなっている。

幾つかの自動車用キャブレターではパワージェットの代わりとなる高回転高負荷時の増量機構として、メータリングロッドステップアップロッドと呼ばれる機構を用いる物もある。メータリングロッドとは全体がテーパー状に加工されている棒であり、メインジェットに差し込まれるようにセットされている。そして、この棒は吸入負圧により上下するバキュームピストン(ダイアフラム)若しくはスロットルリンケージに取り付けられており、スロットルが開かれてバレル内の吸入負圧が減少するか、スロットルと連動して強制的に引き抜かれる事でメインジェットの燃料流量を次第に増量していく。このようなロッド機構は1950年代に米国Carter社の2ベンチュリー式4バレルキャブレターで初めて採用され、その後1980年代にCarter社が自動車用キャブレターの製造を終えるまでには1バレルから4バレルまで全てのキャブレターに搭載されるようになった。2ステージキャブレターの場合には通常、プライマリーバレルにのみメータリングロッドが使用されるが、Rochester Quadrajetのようにセカンダリーバレルにもこのロッドが搭載される物も存在する。

また、現在の日本製オートバイで使用されているCV/VMキャブレターの内部機構であるニードルジェットは、原理的にはこのメータリングロッドとほぼ同じ物である。2ストロークエンジン向けの一部の純正キャブレターにはニードルジェットによる流量調整にパワージェットを組み合わせ、さらにきめ細かな増量補正を行うものも存在する。

[編集] 加速ポンプ

詳細は「加速ポンプ」を参照

パワージェットが高回転域での全般的な燃料増量補正を行うのに対して、加速ポンプは急激なスロットル操作による急加速を掛けた際にのみ緊急増量を行う一種の噴射ポンプである。

[編集] チョーク系統

詳細は「チョーク弁」を参照

チョーク弁が実用化される以前の旧式キャブレターはティクラーを用いる。

[編集] その他の系統

EFEヒーターを裏面からみたところ。1985年式オールズモビル・Cutlass Supreme Broughamの2バレルダウンドラフトキャブレターに用いられていたもの。

これらの各系統は相互作用を行う為に機械的なリンケージ若しくは吸入負圧を用いたダイヤフラム制御、若しくは気圧・気温センサーなどを用いた電子制御機器によるサーボ機構により複雑にリンクして動作を行っている。キャブレターのレスポンスの向上、或いは排ガス規制の適合の為にこのような制御は行われている。

一部のキャブレターは冷間始動時の始動性向上の為に初期燃料気化促進装置(EFE)と呼ばれる機器が用いられる事もある。これはインテークマニホールドとスロットルの間に挟み込まれる格子状の板であり、電熱ヒーターを搭載する事により燃料の気化をより促進する効果の他、格子板によりインテークマニホールドや燃焼室内に乱流を引き起こして燃焼効率を向上させる効果もある。

なお、このEFEの基本概念と似たような理論として、2ストロークエンジンのリードバルブに多孔プレートを取り付けて、クランクケース及び燃焼室内に乱流を引き起こすアイデアがYSP藤沢の山本俊彦により考案され、特許取得が成されている。[3]

[編集] 燃料供給系統

[編集] フロートチャンバー

1950年代のホーリー製"Visi-Flo" Model.1904キャブレターのフロート室。ガラス製フロートボウルが用いられていた

キャブレターには常時バレルへの安定した燃料供給を実現する為に、フロートチャンバー(フロートボウル)と呼ばれる燃料の一時貯蔵場所が設けられている。フロートチャンバーには燃料ポンプや燃料タンクからの自然流下によって、絶えず一定量の燃料が貯蔵されるようになっている。フロートチャンバーの中には真鍮樹脂、或いはコルクなどで作られた浮き(フロート)が内蔵されており、このフロートによって開閉されるフロートバルブが設けられている。

フロートチャンバーの作動原理は貯水槽(例えば水洗トイレ)の原理とよく似ており、

  1. 燃料ポンプの働きでフロートチャンバー内に燃料が送られると、フロートが上昇する。
  2. 持ち上がったフロートはフロートバルブを押し上げ、燃料流入通路を閉じる。
  3. 燃料が消費され、フロートチャンバ内の油面が下がると、フロートも下がり、フロートバルブが再び開く。この一連の動作により、燃料流入通路の開閉を常に繰り返し、フロートチャンバー内の油面(液面)を一定に保つ役割がある。

通常、フロートチャンバー内の液面はフロートのアームを曲げるか、フロートの止めネジの調整により任意に高さを調整できる。これはフロート油面調整とも呼ばれ、フロートの油面の高低によりメインジェットの燃料流量にも影響を与える為、多連装キャブレターにおいては重要な調整項目の一つでもある。

もしもフロートが何らかの原因で破損して浮力を失った場合、フロートバルブが流入する燃料を停止出来なくなってフロート室から燃料が溢れるオーバーフローを引き起こす事になる。特に真鍮製フロートの場合は燃料の気化の際に発生するワニス成分により腐食して穴が開く場合がある為、長期間エンジンを作動させない場合にはフロートから燃料を抜いておくなどの措置を取る事が望ましい。

フロート室内はフロートの浮力を維持する為に外部の大気圧と同じ気圧になるようにエアベントチューブなどにより通気性が確保されている。もしもこのエアベントチューブが何らかの原因で塞がれてしまうと、フロート室内の気圧はバレルの吸入負圧によって真空になってしまい、フロートの浮力が無くなってオーバーフローが発生する。

[編集] ダイヤフラムチャンバー

チェーンソー草刈機などの小型エンジンに使用されるキャブレターにおいては、どんな角度でもエンジンを操作しなければならない事から、通常のフロートチャンバーを使用する事が出来ない。その代わりに負圧で作動するダイヤフラムを用いたダイヤフラムチャンバーが使用されている。

フレキシブルなダイヤフラムが燃料チャンバーの蓋となっており、エンジンが始動すると吸入負圧によってバルブを作動させ、チャンバー室内に燃料を導入する。ダイヤフラムバルブはメインジェットの燃料消費量とほぼイコールになるように流量が調整されている為、どんな作動状況でも常に一定のままでチャンバー内の油面が維持されるようになっている。

[編集] オートバイ用キャブレター

二輪車のキャブレター(矢印)
キャブレターのフロート(矢印)

最近の四輪車は主に燃料噴射装置(フューエルインジェクション)を採用しているが、二輪車では現在でも多く見ることができる。上記の自動車用キャブレターの作動原理を基本として、オートバイ用キャブレターは以下の系統により構成される。

  • フロート系統:走行中のキャブレターへの安定した燃料供給を司る。フロートチャンバー(フロート室、フロートチャンバとも呼ばれる)、フロート(浮き)、フロートバルブ(燃料流入量調節バルブ)で構成される。
  • メイン系統:中速回転(パーシャル=部分負荷域)から高速回転(フル=高負荷域)における燃料の計量などを司る。
    メインジェット、メインジェットホルダ(メインエアブリードと一体)、ジェットニードル、ニードルジェット、メインエアジェットで構成される。
  • スロー系統:アイドル時や低速回転時の燃料の計量などを司る。スロージェット(または、パイロットジェット)、スロージェットホルダ、バイパスポート、アイドルポート、スローエアジェットで構成される。
  • スターター系統:エンジン始動時の燃料の計量などを司る。チョーク弁機構もこの系統である。

フロート系統以外はエンジンの状態に適した混合気をシリンダーに供給するために分かれている。フロートチャンバーから吸い上げられた燃料は、ブリードで空気を混入され、各系統のポートからメインボア内に噴出する。これが空気の流れによってシリンダー内に導かれるが、この時はまだ燃料は気化されておらず状である。その後、圧縮行程時の熱によって一気に気化して混合気となり、燃焼に適した均一な状態となる。

なお、基本構造は自動車用のキャブレターとほぼ同じではあるが、純正採用されているキャブレターの殆どがその車種のエンジン出力に合わせて専用設計されている物であり、一部の社外販売品の競技用キャブレターを除き、部品交換で調整可能な項目がメインジェット、スロージェット、ジェットニードル(段数)、パイロットスクリュー(エアスクリュー)の4項目程度に限定されている事が殆どである。その為、排気量の大きなエンジンに載せ替える場合には、可能であればキャブレターもそのエンジンの物に同時交換する事が望ましいとされている。

特にCV型キャブレターの場合は、バキュームピストン及びバキュームピストンスプリングがそのエンジンの設計負圧に合わせて設定されている為、排気量の大きな上級車種の部品でボアアップを行う場合や、排気量の異なる他車種への流用を行う場合には、厳密にはバキュームピストンをその車種の純正部品(同メーカーのCVキャブレターが純正キャブレターとして設定されていれば、の話であるが)に交換しなければ、正確なセッティングが行いきれない可能性がある事に注意が必要である。

[編集] 現状

最近の四輪車・二輪車は、排ガス規制への対応もあり、キャブレターではなく、燃料噴射装置(フューエルインジェクション)を採用するものが増えている。2008年現在、乗用車、商用車に関わらず新車で購入可能なガソリン四輪車では軽自動車を含め、キャブレターを搭載したモデルは完全に姿を消している。排ガス規制の対象外で、もっぱらキャブレターが使われていた原付を含む二輪車も、2006年から排ガス規制の対象となり、キャブレターから燃料噴射装置への移行が順次進められている。日本においては平成12年度排出ガス規制の施行を目前に控えた平成11年(1999年)までは電子制御式キャブレターのガソリン四輪車が軽トラックなどの軽商用車及び一部の小型トラック[4]に存在したが、平成12年(2000年)までにはこれらの車種も全て燃料噴射装置に置き換えられた。

燃料噴射式は、流入空気(酸素)量と排気ガス中の残存酸素量、オルタネーターエアコンコンプレッサーパワーステアリングポンプなどの負荷変動を、コンピュータセンサーにより絶えず検知し、供給燃料の無駄を減らし、かつ、三元触媒が効率良く働く空燃比としているのに比べ、キャブレターの燃料供給量は、メインボア内の負圧と、各種ジェットによる規制で決めているため、その量はかなりアバウトであり、燃費と環境対策の対応は難しくなっている。昭和53年規制適合車(乗用車の認定型式が「E-」ではじまるもの)や後年の平成10年アイドリング規制適合車(乗用車の認定型式が「GF-」ではじまるもの)のごく一部までは見られた形式であったが、制御技術の進化により、90年代に入るとインジェクション車が大半を占めるようになった。

二輪車でも大型車を中心に燃料噴射装置を採用している車種が増加しているが、四輪車に比べ趣味性が強いこともあってか、アバウトであるが故のキャブレター独特の粗野なフィーリングにも根強い人気がある。スロットルを回すとダイレクトでエンジンに反応があるのも人気が衰えない要素の一つと思われる(FI車はスロットルを回すと、エンジンが反応するまでに極々僅かではあるがタイムラグが生じる)。

航空用レシプロエンジンにはキャブレター、インジェクター(インジェクション = 燃料噴射式)のいずれの方式を使うものもある。但し、背面飛行の際の燃料欠乏を防ぐ為に特殊な設計が必要とされる為、軍用機では比較的早期に燃料噴射装置への移行が進んでいった。

一般的にキャブレター方式は燃料噴射式に比べ、電気が不要で、構成部品が少なく、製品コストも低い特徴を持つ。磨耗や折損などの機械的トラブルがあるものの、電気的トラブルは通常無いため、用途によっては進んで導入する価値がある。このため、チェーンソー刈払機などのエンジンでは、依然としてキャブレターが使われている。

また、構造に対する知識と整備の心得があれば、個人でのメンテナンスやリビルドも十分可能であり、エンジン出力をコントロールする感覚が楽しめることと相まって、二輪やクラシックカーなど、趣味の世界では、いまだ主流となっている。

一方、一般の自動車修理サービス業での現実は、自動車(四輪車)のほとんどすべてが燃料噴射式に切り替わってしまった(自動車の新車でのキャブレター採用は、一部の小型登録車【主に1500cc以下のクラス】や軽自動車の安価な機種に電子制御キャブレターが使われていた1990年代が最後となった)ため、新車を主に扱う自動車ディーラーだけでなく、幅広く車を扱う専業の自動車整備工場であっても、キャブレターを整備する技術が維持継承されているところは少なくなってしまった。また、高性能エンジン用のソレックスやウエーバーにおいても、製造メーカーの消滅や部品の製造廃止などによって、新品のジェットやベンチュリの入手が年々難しくなってきており、整備技術の途絶も相まって一般の整備工場では整備やセッティングが困難となる事例も珍しくはなくなっている。

ある程度年配のドライバーになると、「アクセルを数回踏んでから(エンジンが冷えている状態ではアクセルを3~4回踏み、エンジンが暖まっている状態ではアクセルを全体の約1/2程度を踏みこむ)」セルモーターを回す人がいるが、キャブレター車時代の名残である。 オートチョーク機構の作動の為、このような「儀式」が必要であった。

[編集] 特有の不具合

キャブレター車特有の不具合として、イグニションスイッチを切ってもエンジンが止まらない現象=ラン・オン(run on)が発生することがある。これは長年の使用によりエンジン燃焼室内にカーボンが堆積している車に時折見られるもので、スパークプラグの点火が止まってもカーボンの燃焼が火種となって混合気の燃焼が継続し、それによりエンジンが回り吸気が続くためキャブレターからの燃料供給が止まらず、結果、エンジンが止まらなくなるものである。この現象が発生した時には、サイドブレーキを引きフットブレーキも踏んでから、雑にクラッチをつないで故意にエンストを起こして止める方法がある。点火プラグによらない爆発であることから、「ディーゼリング」と呼ばれることもある。

また、フロート系統の不具合により、フロート内の燃料がインテークパイプ内に溢れ続けるオーバーフローという症状が発生する事もある。重度なオーバーフローはシリンダー内へ燃料が溜まる要因となり、場合によってはウォーターハンマーによるエンジン破損を招く恐れがある為、症状を発見した場合には直ちにフロートチャンバーの油面調整や、フロートバルブの交換などの修理を行う事が望ましい。

寒冷地においては、霧化の際にキャブレターの周囲から気化熱が奪われる事で、キャブレター本体に結露や凍結などが発生し、霧化が行えなくなる事でエンストが発生するアイシングが起きる場合がある。アイシングによりスロットルバルブが凍結して張り付く事で、エンジン回転が低下しなくなる重大なトラブルが発生する場合もある。この為、車種によってはキャブレター本体にエンジンで暖められた冷却水を導入し、キャブレター本体を暖める事でアイシングの発生を防止する対策を採っているものもある。

逆に酷暑の場合や、冷却系統の重大なトラブル、燃料配管の取り回しの不具合などにより、キャブレターが過度に熱せられる事でフロートチャンバー内の燃料が沸騰し、霧化が行えなくなる事でエンストが発生するパーコレーションが起きる場合もある。通常、純正キャブレターの場合は余程の酷暑で無い限りは余り起こらない現象であるが、チューニングを実施し大幅に出力が向上したエンジンや、社外品のキャブレターを導入して燃料配管の取り回しを変更した場合は、このトラブルに注意が必要となる。

[編集] 分類

1961年式フェラーリ・250TRスパイダーの、フェラーリ・コロンボ Type125 "テスタロッサ"エンジン。6個のウエーバー・ダウンドラフト2バレルキャブレターを持ち、12気筒別々に1バレルづつ燃料を供給する。当然ながら、調整も12気筒個別に行わなければならず、整備には大変高度な技量が必要とされる。

キャブレターの呼ばれ方は多種多様である。

有するボアの数による分類

吸気する穴(ボア)の数を数えて、~バレルと呼ぶ。 2バレル、4バレルなど偶数が多い。例えば、直列4気筒エンジンにサイドドラフトキャブレターを選択する場合には2バレルキャブレターを2個搭載する。V型8気筒エンジンにダウンドラフトキャブレターを選択する場合には4バレルキャブレターを2個搭載する。

有する機能による分類
  • シングルステージキャブ
ひとつのボアで全域をまかなうシンプルなキャブレター。ステージドキャブと区別するため、このように呼ばれる。機能が同じボアがボディにふたつ並んだ2バレルもある。
  • ステージドキャブ
バレル内部に作動回転域の異なる複数のボアを有するキャブレター。基本はアイドルから軽負荷域を受け持つプライマリーボアと、高負荷域を受け持つセカンダリーボアで構成される2ステージであるが、ボアの直径の相違やチョークバルブの有無などで、外観からシングルステージの2バレルと判別可能である。これを並列に収める2ステージ4バレルもある。珍しい機構としてヤマハ・V-MAXのVブーストシステムがある。
吸気方向による分類

実装条件によって吸気を下に落とす、上に送る、水平に流すなど臨機応変に設計されるため、ダウン/アッパードラフト、ホリゾンタル(サイドドラフト)などがある。何度傾けるとそう呼ぶかの定義は明らかでない。

1990年式日産・マイクラのMA10Sエンジン。FF横置きエンジンの典型的なレイアウトである後方吸気・前方排気形式の為、ダウンドラフトキャブレターを採用している。廉価な車両に多いP字型エアクリーナーボックスで、最低限の部品点数でエンジン前方からの走行風の吸気を実現している。
  • アッパードラフト
戦前以前の古いエンジンでよくみられた形式。吸入空気はキャブレターの下部より入り込んで、上方のインテークマニホールドへ混合気が抜けていく。この形式には、キャブレターがオーバーフローなどの不具合を起こしてもシリンダー内に燃料が流入する事が無いという利点があった。また、キャブレターの下にオイルバス式のエアクリーナーボックスを置く事で、燃料が漏れてもエアクリーナーの油槽が燃料を受け止める為、車両外部に燃料が漏れ出す事を防ぐ事が出来た。紙製のエアクリーナーが存在しなかった時代には、理に適ったシステムであった。
現在でも、幾つかの航空機用エンジンでこの形式が使われている。
  • ダウンドラフト
吸入空気がキャブレター上部より入り込み、下方のインテークマニホールドへ混合気が抜けていく形式。
アメリカでは実用的な紙製エアクリーナーが登場した1930年代後半から、この形式が主流となった。エンジン直上にキャブレターを置く形となる為、アメリカで第二次世界大戦後に主流となったV型8気筒エンジンとの相性が良かった為である。日本では富士重工業製の水平対向エンジンや、東洋工業製のロータリーエンジンが初期の頃からこの形式を積極的に採用していた。これもエンジンルーム内のエンジンとキャブレターの位置関係によるものである。
1979年式 Evinrude Type I 船舶用サイドドラフトキャブレター
なお、縦置きエンジン時代に主にサイドドラフトを採用していたメーカーでも1980年代後半以降、前輪駆動形式による横置きエンジンが主流となってくると、次第にダウンドラフトの採用が増えていった。これは横置きレイアウトの特性上吸気を後ろ、排気を前とする事が多く、サイドドラフトではエンジン後方に配置した場合、エアインテークパイプの取り回しに難があった為である。前輪駆動が本格的に普及し始めると同時に燃料噴射装置が一般化した為、極めて短期間の内に姿を消していったが、軽自動車の廉価グレードでは1990年代の中盤までエンジン直上に設けられた「P字」形状のエアクリーナーボックスを持つキャブレター仕様車を散見する事が出来た。
  • ホリゾンタル(サイドドラフト)
KPGC10型スカイラインGT-RのS20型エンジン。縦置きエンジンにミクニソレックスサイドドラフト2バレルキャブレターを3連装している。エアクリーナーボックスは純正でエンジン左前方のグリル付近から走行風の吸気を行っている。
吸入空気がキャブレター側面より入り込み、反対側のインテークマニホールドへ混合気が抜けていく形式。ヨーロッパでは第二次世界大戦後に、エンジンルームの空きスペースが減少するのに応じて、この形式が主流となった。日本においても、V型エンジンがあまり登場せず直列エンジンが主流であった為に、後輪駆動形式による縦置きエンジンが主流だった時代には特にスポーティエンジンにおいてこの形式の採用が多かった。
オートバイや船舶用船外機でもスペースの制約上この形式の採用が多く、現在では最も広く見られる形式となっている。
実装個数による定義

ツインキャブ、6連キャブなど。これは同じキャブレターが何個連装されているかを表す。直列に多気筒が並ぶ内燃機の燃焼室に等分な混合気を送る場合、気筒数分連結されることが多い。自動車では一般的に高性能を謳うものとして扱われるがオートバイでは一般的である。そのため、オートバイではキャブレターの数は宣伝として使われない。

[編集] マルチバレルキャブレター

ホーリー製Model#2280 2バレルキャブレター
ホーリー製の高性能2ステージ4バレル・ダウンドラフトキャブレター

ごく基本的なキャブレターには1個のベンチュリーしかないが、大排気量のエンジンやキャブレター内の流速を向上させてより高出力の発揮を狙ったのエンジンに用いられるキャブレターでは1個以上のベンチュリやバレルを持つものがある。大きな内径の2本のバレルを持つ2バレルや4本の4バレルなどは高性能多気筒エンジンにおいては1気筒辺り1バレルを割り当てられる事が多い。かつては日本製の直列6気筒エンジンには2バレルキャブレター3連装、アメリカ製のV型8気筒エンジンには2バレルキャブレター4連装などの構成がよくみられた。

比較的気筒数の少ないエンジンにおいては、吸入負圧に応じてメインバレル(プライマリーバレル)と同径か或いはより小径の二次バレル(セカンダリーバレル)を機械的なリンケージや負圧ダイヤフラムで作動させるものが存在する。低回転で吸入負圧が高い際にはプライマリーバレルのみを作動させて吸入空気の流速を増加させ、トルクを確保。高回転域ではセカンダリーバレルを作動させて大量の燃料を供給し、出力向上を図る目的でこのようなシステムが導入される。このようなキャブレターはステージドキャブレターと呼ばれ、2ステージ2バレル等と表記される。

しかし、1バレル当たり1気筒を担当させるセッティングを施している高性能エンジンでは、このような機構は無意味となってしまう。アメリカで広く用いられているV型8気筒エンジン向けの最新型4バレルスポーツキャブレターの場合は、左右バンクに1つずつのキャブレターを配置するが、1気筒1バレルという割り当てを行うのではなく、2本ずつのプライマリー/セカンダリーバレルがエンジン負荷に応じて作動する2ステージ4バレル仕様を採用している。

Rochester社が1965年から自社の"Quadrajet"4バレルキャブレターに採用しているスプレッドボアシステムでは、通常の2ステージキャブとは逆にプライマリーバレルが小さく、セカンダリーバレルが大きい構成を持っている。小さなプライマリーバレルは低速回転時のトルクとドライバビリティの向上を促し、大きなセカンダリーバレルは全開走行時の出力向上をより促進させる働きを持つ。大径セカンダリーバレルの燃料供給量を最適に調整する為に、セカンダリーバレルの先端には吸入負圧により開閉する補助空気弁が装備され、メインジェットにも通常の2ステージキャブのセカンダリーには省略される事が多いメータリングロッドが設けられ、高回転域でもスムーズなフィーリングが実現されるようになっている。

[編集] キャブレターと過給器(キャブターボ)

ターボチャージャースーパーチャージャーは古くは第二次世界大戦当時から既に実用化されていたが、自動車には1970年代後半に燃料噴射装置の普及が進むまでは、モータースポーツに用いられる車両を除いてはなかなか量産車両への採用が行われなかった。世界初の量産ターボ車である1973年のBMW・2002ターボですら機械式インジェクションであり、キャブターボ仕様の市販車は電子制御式キャブレターと併用したものを除いては純然たるスポーツキャブレターと併用したものはロータス・エスプリなどのごく一部のスーパーカーを除いて殆ど存在しない。それには以下のような理由が関係している。

キャブレターに過給器を取り付ける場合には、スロットルバタフライがキャブレター本体に内蔵されている関係上、通常は過給器とインテークマニホールドの間にキャブレターが置かれる。キャブレターのバレルにブーストが掛かっても圧力が大気圧以上である為、フロートの動作には問題はない。しかしブースト状態から急激にアクセルを緩めると、スロットルバルブにより圧縮圧がタービン側にはじき返されるバックタービン(サージング)が発生する。燃料噴射装置の場合にはこの際に燃料を完全にカットするように制御されているが、キャブレターの場合はバックタービンの負圧で大量の燃料が吸い出されて混合気となってエアクリーナー吸入口まで逆流してしまい、これに引火する事でエアクリーナーインテークパイプを吹き飛ばす凄まじいバックファイアが発生する場合がある。[5]このバックファイアが頻発するとエアクリーナーは勿論の事、キャブレター本体やタービンのインペラーにも大きなダメージを与えかねない為に、反射圧を外部へ放出するブローオフバルブが考案されるようになった。

1968年式AMC・AMXのドラッグレース仕様。大排気量V8エンジンにボンネットからはみ出す程の巨大なスーパーチャージャーとエアスクープ付きの吸い込みレイアウトのダウンドラフトキャブレターを単純に積み重ねる構成は、ある意味典型的なアメリカ車を示すカリカチュアともなった

V型8気筒エンジンにスーパーチャージャーを搭載する場合には、スーパーチャージャーの吸入口にキャブレターを取り付ける場合がある。ターボの場合でも、キャブレターをターボチャージャーの前に配置する場合がある。このような吸い込み式レイアウトは過給器の後ろにキャブレターを取り付ける押し込み式に比べてキャブセッティングや過給システムの構築が容易であり、構成上バックタービンが発生しないメリットがあるとされるが、インジェクション仕様ではまず起こり得ない過給器内部に混合気が吹き込まれ圧縮される状況が発生する。仮にこの状況でバックファイアが発生すると、インタークーラースーパーチャージャー、キャブレター本体が吹き飛ばされる[6]といった危険なトラブルが発生する。過給器と吸気バルブの間に燃焼室からの逆火を遮るスロットルバルブが存在しない為、フルスロットルの全開過給の最中にバックファイアが混合気に引火して吸気システム全体を破壊する事も珍しくはない。

市販車両のターボやスーパーチャージャーエンジンは、車両の安全確保の為に極めて早期の内にインジェクションに改装され、日本国内では現在ではキャブレターでの過給器仕様は手がける者も少なくなっているが、アメリカでは高度な電子制御システムを構築する余力のないプライベーターの手によりドラッグレースを中心に未だに広く行われている。競技の性質上ブローオフバルブを敢えて装備しないドラッグレース仕様のキャブターボやスーパーチャージャーエンジンでは、更に極端にオーバーラップの大きいハイカムナイトラス・オキサイド・システムなどを併用することも珍しくないため、現在では安全規則としてナイロン製の頑丈な布で過給器やインテークマニホールドを覆い、ボルトで布を固定して部品の飛散防止対策を施す事が義務付けられているが、参加車両が吸気系統を破壊する程の凄まじいバックファイア[7]を起こして走行不能に陥る光景は競技会場の日常的な風景でもある。

[編集] キャブレターの調整

キャブレター仕様のエンジンは空燃比が濃すぎても(リッチ)薄すぎても(リーン)本来の性能が発揮出来ない。通常、キャブレターには1個以上のニードルバルブ[8]が設けられており、これを開閉する事である程度の燃調調整が可能となっている。特にレシプロ航空機の場合は高度によって空気密度が変化する為、操縦室内に空燃比計と共にキャブレターの燃調を調整する操作盤が設けられている事も多い。ガソリンの空燃比には理論空燃比と呼ばれる数値があり、14.7の理論空燃比に近づくようにキャブレターを調整するのが望ましいとされている。

ニードルバルブの調整でもなお不足する場合にはメインジェットやアイドリングジェット、エアージェットなどを交換して更に調整を行う。場合によってはブースターベンチュリを交換する必要もあり、極端に濃い燃調を示す場合にはオーバーフローを疑ってフロート油面の調整を行う必要もある。更に、連装キャブレターの場合には各キャブレターのスロットルバルブがきちんと同調しているかを負圧計を用いて調整しなければならない。バックファイアが頻発する場合にはタペットや点火時期を調整してみて、仮にハイカムを組んでいる場合には安全性を考慮してローカムに変更する事も検討してみる。始動性が極端に悪くアフターファイアが出る場合にはスロー系統の調整の前に、点火プラグの熱価を焼け型に変更してみる必要もある。

自動車やオートバイの場合でも空燃比計を使用する事でより正確なセッティングが可能となるとされているが、最終的には実際に走行してみてボコつきや息継ぎなどが無い状態になるまでじっくり調整していく事が望ましい。この為、キャブレターを調整する際にはある程度以上ジェット類を始めとするインナーパーツを揃えている事が必須となるのだが、古いキャブレターの場合は新品のジェットが手に入らない場合も多くなってきている。

キャブレターの混合気の質を直接チェックする方法は、ガス分析装置を使用して排気ガスに含まれる一酸化炭素炭化水素および酸素含有量を測定するか、特別な碍子を持つ点火プラグを通して直接燃焼室の炎を見る方法が挙げられる。この点火プラグはガラス状の透明な碍子を持っており、海外では「Colortune」[9]の商品名で販売されている。Colortuneの解説書では、理想的な燃焼の炎色は「ブンゼンブルー」とされており、燃調がリッチであれば炎色は黄色に。リーンであれば白っぽい青色を示すとされている。

また、点火プラグの碍子や電極の焼け色を見る事である程度まで空燃比を推測する事が可能である。もしもプラグの碍子が乾燥して黒く煤けている場合には燃調が濃い事を示し、白か薄いグレーを示している場合には燃調が薄い事を示している。キャブレター仕様の場合には狐色か茶色に近いグレーである事が望ましいとされる。

[編集] 電子制御式キャブレター

アメリカや日本では1980年代前半から、O2センサーの信号に合わせて、ECUの制御で燃調を変更出来る電子制御式キャブレター[10]が広まった。既存のキャブレター仕様の部品構成を大きく変えることなく、80年代の排ガス規制に十分対応できたことや、キャブレターでの過給器仕様を燃料噴射装置よりも安価で、かつ通常キャブでのキャブターボ仕様より遙かに安全に実現できることから、廉価な車両を中心に幅広く採用された。 しかし、1990年代中盤以降になると燃料噴射装置の価格が量産効果により大幅に低下し、排ガス規制も更に強化される傾向となった事から、こうした電子制御式キャブレターは現在では完全に廃れてしまっている。

オートバイでは高地補正スロットル開度と連動した点火時期調整などを自動的に行う電子制御機器が搭載されたキャブレターを採用する車種が多くなっているが、これは厳密には自動車の電子制御式キャブレターとは異なるものである。

[編集] 主なキャブレター製造メーカー

[編集] 日本

  • ニッキ (旧 日本気化器製作所) http://www.nikkinet.co.jp
    • リンカート式カーブレーター(陸王OEM向けのライセンス生産品)
  • ケーヒン製キャブレター http://www.keihin-corp.co.jp/
    • 競技用
    • 一般用
      • NCV 小型二輪車用CVキャブレター(VM/ホンダ車OEM。26Φ,24φ,20φ)
      • CV 大型二輪車用CVキャブレター(CVK/カワサキ車OEM、CVHD/ハーレー・ダビッドソンOEM。32Φ,30Φ)
    • 固定ベンチュリ
      • KEIHIN H-D(1989年までのハーレー・ダビッドソンOEM)
  • ミクニ製キャブレター
    • TM 二輪・スノーモービル用 (26φ,24φ,22φ,20φ,18φ)
    • TMR 高性能二輪用 フラットバルブ (40φ,35φ,28φ,24φ,20φ)
    • VM (26φ,20φ,18φ)
    • BW / BV 産業用・汎用
    • BS / BS R 二輪・ATV用
    • BN フロートレス 水上バイク
    • ミクニ・ソレックス(自動車向け固定ベンチュリキャブレター)
  • ヨシムラ製キャブレター
    • TM-MJN(28φ,26φ,24φ)
    • TMR-MJN
    • FCR-MJN(39φ,28φ)
  • 日立(主に日本車向けSUキャブレターを製造していた)
  • テイケイ気化器(TKキャブレターの商品名でオートバイや自動車の純正キャブレターを製造している)
  • オーイーアール(OER) http://www.oer.co.jp(現在でも自動車向け固定ベンチュリキャブを製造販売する数少ない国産メーカー)

[編集] ヨーロッパ

[編集] アメリカ

[編集] その他

  • Argelite(ホーリーとマニエッティ・マレリのアンダーライセンスの元で、アルゼンチン市場にキャブレターを出荷するメーカー)

[編集] 参考資料

基本情報
特許関係

アメリカ

その他

[編集] 脚注

  1. ^ Ford Motercraft 2バレルキャブレターのパーツリスト
  2. ^ HRCによる RS125R/RS250Rのパワージェット設定法の説明
  3. ^ YSP藤沢代表取締役 山本俊彦氏の研究、特許
  4. ^ 日産・ダットサントラックNA20Sエンジン搭載車など。
  5. ^ 自然吸気キャブレターのバックファイアでもエアクリーナーが吹き飛ぶ事があるが、過給器仕様の場合は加圧された多量の混合気がバックタービンで逆流して一気に着火する為、その危険度は自然吸気の比ではない。
  6. ^ バックファイアでスーパーチャージャーがキャブレターごと吹き飛んだ事例
  7. ^ このような状況である。動画の車両はRX-7・SA22Cに20Bペリフェラルポートエンジン、スーパーチャージャーに吸い込みレイアウトのダウンドラフトキャブを装備という仕様だが、バックファイアでボンネットが吹き飛ぶ程の爆発を起こしている。
  8. ^ オートバイの場合はスロー系統のパイロットスクリュー(エアスクリュー)のみの場合が多い
  9. ^ "Colortune". Autoexpertproducts.com. 2009-09-05 閲覧。
  10. ^ 電子制御キャブの一例であるホンダ・PGM-CARB
  11. ^ "Expolded view". Lectronfuelsystems.com. 2009-09-05 閲覧。

[編集] 外部リンク

ウィキメディア・コモンズ

最終更新 2009年11月26日 (木) 12:26 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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