パトリオットミサイル

パトリオットミサイルの最新ニュースをまとめて検索!

パトリオットミサイル発射の瞬間
ドイツ空軍のパトリオット発射機
擬装したドイツ空軍の発射機

MIM-104 パトリオット(MIM-104 Patriot、Phased-Array TRacking and Intercept Of Target)は、米レイセオン社がMIM-14 ナイキ・ハーキュリーズの後継としてアメリカ陸軍向けに開発した広域防空用の地対空ミサイルシステム。ミサイル防衛では終末航程に対応し20~35kmの範囲を防御する。

湾岸戦争時にイラク軍が発射したスカッドミサイルを撃墜したことにより有名になった。米国のほか日本を含む同盟国など世界10カ国以上で運用されている。

パトリオット(patriot)とは愛国者の意味。パトリオット・ミサイルは厳密にはミサイルそのものを指すが、パトリオット・ミサイル発射システムを含めてパトリオット・ミサイルと呼ぶ場合があるため、本項では発射システムを含めて説明する。形式名称「MIM-104」はミサイルに対するものである。マスコミなど一般的には「パトリオット」、自衛隊など政府公式資料では「ペトリオット」と書かれる。

目次

[編集] 発射システム概要

パトリオット・ミサイル発射システムはトレーラー移動式のシステムであり、1つの射撃単位はパトリオット発射中隊によって運用される射撃管制車輌、レーダー車輌、アンテナ車輌、情報調整車輌、無線中継車輌、複数のミサイル発射機トレーラー、電源車輌、再装填装置付運搬車輌、整備車輌という10台以上の車両により構成される。これらの車両が自走して野外サイトに設定後、射撃体勢が整う。

ナイキの発射システムよりも省力化が図られている。交戦中に人員が配置されるのは射撃管制車だけでレーダーや発射機は無人となり、射撃管制車からの遠隔操作によって制御される。

[編集] 発射システム詳細

システムは複数の機材から構成されており、有線・無線によるインターフェイスにより連動している。

[編集] レーダー装置

航空自衛隊のAN/MPQ-53フェーズドアレイレーダー
AN/MSQ-104

レーダー装置(Radar Set、RS)の形式名称はAN/MPQ-53(Config.2形態以前)又はAN/MPQ-65(Config.3形態以降)。RSはC-Band帯の電波を用いる、フェーズドアレイ・多機能レーダーである。目標の捜索・追尾の他、IFF、ミサイル誘導なども行う。1高射隊(FU:Fire Unit)当たり1台のRSが配備される。運用中は無人となる。

[編集] 射撃管制装置

射撃管制装置(Engagement Control Station、ECS)の形式名称はAN/MSQ-104(Config.2形態以前)又はAN/MSQ-132(Config.3形態以降)。1射撃中隊に1台が配備され、RSからの情報を処理し要撃命令を下す。米軍のECSシェルターはM927 5tカーゴトラックまたは軽中量戦術車両(Light Medium Tactical Vehicle 、LMTV)カーゴトラックの荷台に搭載された状態で運用され、2名のオペレーターが操作する。航空自衛隊では73式大型トラックを改修したものを使用する。

主要な機器は新型兵器管制コンピュータ(Enhanced Weapons Control Computer、EWCC)、発射機間通信リンク・ターミナル(Data Link Terminal Upgrade 、DLU)、UHF通信機(UHF Digital Data Link、DDL)、UHF通信ルーティング・インターフェース装置(Routing Logic Radio Interface Unit Upgrade、RLRIUーU)、2人分の操作コンソール(Man Station、MS)である。

最大16台の発射機を接続でき、同時に8台の発射機を制御する。発射機との通信はVHF無線または光ファイバーによって行われる。RSとは有線でインターフェイスする。

[編集] 情報調整装置

情報調整装置(Information Coordination Central、ICC)の形式名称はAN/MSQ-116(Config.2形態以前)又はAN/MSQ-133(Config.3形態以降)。1高射群(BN:Battalion)に1台のICCが配備され、隷下に6台のECSを置く。ECSと外観はほぼ同様であり、2名のオペレーター(指揮官)が搭乗する。上位組織及びAWACSとの連接が可能(日本ではさらに自動警戒管制システムBADGEとの連接が可能なように改修され、現在で後継システムの新自動警戒管制システムであるJADGEと連接が可能とされている)。ECSとはUHF無線によってインターフェイスする。

[編集] 無線中継装置

無線中継装置(Communication Relay Group、CRG)の形式名称はAN/MRC-137(Config.2形態以前)又はAN/MRC-147(Config.3形態以降)。ECS-ICC間の通信でUHF無線の見通しが取れない場合、CRGを間に挟んで通信を中継する。ECS-ICC間の通信はPADIL(PATRIOT AIR DIFENCE INFORMATION LANGUAGE)というフォーマットで行われており、音声・データ(航跡情報等)が多重化されている。なお日本では山岳地であることを考慮して、有線接続にてECS-ICC間の通信ができるよう独自改修が行われている(後述)。

[編集] アンテナ・マスト

アンテナ・マスト・グループ(Antenna Mast Group、AMG)の形式名称はOE-349/MRC。ECS、ICC及びCRGはそれ単体ではUHF無線通信が行えない。AMGはいわば外付けのUHFアンテナであり、それぞれに接続されて運用される。

[編集] 発射機

航空自衛隊のM901発射機

発射機(Launching Station、LS)の形式名称はM901。M901発射機では最大4発のミサイル(STD弾、PAC-2弾、SOJC弾、GEM弾)、M902発射機では最大16発のPAC-3弾を搭載する(M902発射機にSTD弾、PAC-2弾、SOJC弾、GEM弾は搭載できるが、PAC-3弾との混載は不可)。ECSとは(SINCGARS)VHF無線または光ファイバーによってDLTを通してインターフェイスする。15KW-400Hz発電機を1基持つ。

1パトリオット中隊は5~8基の発射機を運用する。LSは専用の発電機(ディーゼルエンジン式発動発電機)を搭載している。

[編集] 発電機

EPP-III発電プラント。M977 HEMTTに搭載。 150KW 208V-400HzACを供給するディーゼルエンジンが2基。283.9リッターの燃料タンク2個。太い給電ケーブル。 ECSとRSには、EPP-III(Electric Power Plant-III)により電力を供給する。

ICCとCRGには、EPU(Electric Power Unit)により電力を供給する。またAMGには、接続されているECS、ICC又はCRGから電力供給を受ける。

航空自衛隊仕様は、国産開発のガスタービン発電装置に改良されている。

[編集] 通信系統

  • ECS-ECS、ECS-ICC間(音声及び航跡情報等)
    • UHF通信用無線機を用いたデジタルデータリンク(PADIL)により、航跡情報等の通信を行う。また音声通信の回線も有する。通信の中継を行う場合は無線中継装置によって行う。PADILは1回線あたり32 kbpsの通信容量を持ち、RLRIU-Uは4系統のPADIL回線を同時に通信処理できる。また通信はTCP/IPのようにルーティングされて伝達されるよう設計されており、一部経路で通信障害が発生していてもデータリンクを確実に確立できるよう配慮されている。なおUHF無線機はECS及びICCには3台、CRGには4台搭載されている。
  • ECS-LS間(発射指令)
    • VHF無線又は光ファイバを用いたDLUにより、デジタル通信で発射司令・ステータス等を送受信する。
  • ICC-上位部隊間(音声及び航跡情報等)
    • TADIL-A(音声)、TADIL-B(航跡情報)、TADIL-J(航跡情報)により上位部隊との連接が可能である。なお日本のペトリオットでは、自動警戒管制システム(BADGE)との連接を有線で行うためのデータモデムが搭載されている。ただしBAGDEとの連接はPAC-3/Config.2形態までの機能であり、新自動警戒管制システム(JADGE)の運用開始に伴ってデータモデムの使用を止め、専用の有線光インターフェース(100BASE-FXをベースとしたイーサネット)が随時追加改修されている。これは後述のPAC-3/Config.3形態及びConfig.2形態に対して行われている。なおこの有線通信にあたっては、日本中に張り巡らされた既設回線網を使用する。

[編集] 地上装置の形態推移

開発当初は1990年代の航空脅威に対処する性能とされていたが、経年による脅威変化などに対応するため、各種改良が施され、現在の運用に至る。

[編集] BASIC形態

配備当初の形態。

[編集] PAC-1形態

PAC-1形態は初期型のECCM(敵の電子妨害に対抗する装置)やソフトウェア等を改修したものである。

[編集] PAC-2形態

PAC-2形態は弾道ミサイルの迎撃任務に対応して弾頭の破壊力等を向上したものである。湾岸戦争で使用され、イスラエルサウジアラビアへ発射されたスカッドミサイルを迎撃した。それぞれの迎撃率は、アメリカ軍の発表によればサウジアラビアで70%、イスラエルで40%であるが、実際にはこれよりも低い確率だったのではないかと見られている[1][2]。これはPAC-2ミサイル(MIM-104C)が爆発で飛散する破片によって目標を破壊する方式であったため、弾道ミサイルに命中しても弾頭の機能を無力化できずに被害が出る場合があったことによる。

[編集] QRP形態

湾岸戦争で実戦投入されたPAC-2に発見された不具合に対し、物理的・ソフトウェア的に応急的な対処を施した形態。主な変更点は、レーダ装置の不要放射を抑制するレーダシュラウドの装着、GPSを利用した自動自己位置評定装置の搭載(RS,LS)による布置展開作業の自動化などである。

[編集] PAC-3形態

PAC-3弾を搭載するM902発射機(右)

弾道ミサイルへの対処能力を本格化するため、さらなる能力向上を図った形態。変更の内容は、PAC-3弾の採用、RSの目標識別・捜索能力の向上、通信能力の向上などである。PAC-3形態は最初から完成された状態で配備された訳ではなく、PAC-3/Config.1とよばれる形態から始まり、現在米国で配備されている最新のPAC-3/Config.3形態へと至っている。

ハードウェア的な改修項目としては、レーダ装置の目標識別計算装置の更新や広帯域波形送受信・処理装置(Radar Enhancement Phase 3, REP-3、Classification Discrimination Improvement 3, CDI-3)の搭載、また、ECSやICC、CRGでは新型のRLRIU-U(旧型もRLRLI-Uと呼ばれるが、偶然であり、中身は別物である)、新型通信多重化装置(Integrated Digital Opperator Control Station、IDOCS)、これに伴う通信能力の向上(Remote Launch, Communication Enhanced Upgrade、RL/CEU)などがある。特にRL/ECUによって発射機をより遠くへ設置できるようになり、弾道弾に対する防護範囲が向上している。

日本が現在導入をすすめているのはこの最新の形態である。なおミサイル自体の名称であるPAC-3と混同している文献があるが、地上装置(ECS等)とミサイルは別の形態名称で呼ばれており、注意が必要である(単にPAC-3形態と言っても通用するが、正しくはPAC-3/Config.3形態である)。なおConfig.3へと形態が進化した際、RS、ECS、ICC、CRG、LSの形式名称が変更されているが、これはそれぞれが搭載する機材が能力向上に伴って大幅に変更されたためである。

[編集] ミサイル概要

初期型であるMIM-104Aがアメリカ軍に引き渡されたのは1984年からであるが、逐次近代化改修がされている。それらはPAC-1、PAC-2、PAC-3という3つの世代に大きく分けられることが多い。「PAC」は "Patriot Advanced Capability" の略である。

ナイキミサイルに比べて射程の延伸、対ECM性(ECCM)やジャミング機構の向上、低高度目標撃墜能力の付与といった機能向上がなされている。

[編集] ミサイル詳細

[編集] ミサイルの種類

パトリオットで使用されるミサイルは以下の通り。

  • STD(MIM-104A)弾:初期形態から採用されているミサイル。主に航空機対処用。
  • SOJC(MIM-104B)弾:ジャミングを行う目標に対して対処するミサイル。
  • PAC-2(MIM-104C)弾:弾頭のフラグメントを大型化するなど、弾道弾対処能力を強化したミサイル。
  • GEM(MIM-104D)弾:シーカーの低雑音化など、目標への誘導性能を向上させたミサイル。
  • GEM+(MIM-104E)弾:GEM弾のさらなる改良型。
  • PAC-3弾:新たに設計されたミサイルで、サイドスラスタやリサリティ・エンハンサを搭載。主に弾道弾対処を行う直撃型ミサイルである(後述)。MIM-104シリーズとは異なる。

[編集] ミサイルの誘導

パトリオットでは(PAC-3弾以外は)TVMTrack Via Missile)と呼ばれる誘導方式が採られている。これは、ミサイル発射後、RSからTVMレーダ波を目標へ照射し、その反射波をミサイルが捉えながら誘導を行う方式である。以下に概略を示す。

  1. ミサイル発射後、RSから目標へTVM波を照射する。
  2. ミサイルシーカーでTVM反射波を受信し、RSへダウンリンクする。
  3. RSからの情報をECSで処理し、誘導計算を行って、RSからミサイルへアップリンクとして誘導情報を送信する。
  4. 終末誘導では、目標からのTVM反射波を追ってミサイルは目標と会敵する。

TVM方式はECMへの対処を重点的に考えられた誘導方式であり、その内容は複雑である。コリレート・トラック、セミアクティブ・トラックとも呼ばれる。 なおPAC-3弾は自らのシーカーでレーダ波を出しつつ目標と会敵するため、TVM誘導は行われていない。

[編集] GEM弾

PAC-2ミサイルの誘導性能等を向上し、航空機及び巡航ミサイル等への対応能力が高められた。

[編集] PAC-3弾

PAC-3の弾道弾ミサイルへの直撃。煙を引いているのはACMの噴煙。この図では右上の物体がPAC-3となっているが、誤りであり、左下から上昇してくる物体がPAC-3である
PAC-3弾のシーカー・誘導部

対弾道ミサイルとして開発がほぼ終わっていたERINTミサイル(Extended Range Interceptor Missile)を既に発射機として実績があったパトリオットの発射システムに載せたのがパトリオットPAC-3である。PAC-3はそれまでに比べて細身で、今までは1発が入っていたミサイル・キャニスタに4発が格納できるようになった。これにより1発射機あたりミサイルを16発搭載できる。小型化されたことにより対航空機の射程距離は半減した。破壊力を高めるため、弾頭は近接信管だけではなくヒット・トゥ・キル(Hit-to-kill)、つまりPAC-3ミサイルの飛翔体全体を目標弾道ミサイルに直接衝突させ、その運動エネルギーによって目標を粉砕破壊する方式のものに変えられた。翼による姿勢制御だけではなく、ACM(Attitude Control Motors)と呼ばれるサイドスラスタを前部に装備し機動性を高めている。Kaバンドのアクティブ・レーダー・シーカーにより誘導される。

弾道ミサイルへの対処のため、従来までの破砕飛散弾頭を、リサリティ・エンハンサと呼ばれる弾頭に置き換えている。これは航空機や空対地ミサイル、巡航ミサイルなどに対処する場合、直撃寸前時にみずからの胴径方向に低速で225グラムの金属ペレット24個を放出し、見かけ上のミサイル胴径を増加させ、脅威対処能力を向上させるものであり、従来の破砕飛散型弾頭とは根本的に設計思想が異なるものでる。なおこのリサリティ・エンハンサは弾道弾対処任務の際には使用されない。

PAC-3ミサイルの航空機や空対地ミサイルに対する対処能力は、射程距離のみ従来のPAC-2やGEM弾に譲るものの(目標撃破能力は同等とされている)、その代わりとしてパトリオットシステムを、高速で飛来する弾道ミサイルへの対処能力を持つ複合型防空システムに生まれ変わらせた。

パトリオット・ミサイルPAC-3はMSE(Missile Segment Enhancement)と呼ばれる向上計画が進行しており、フィンとロケットモーターの変更により最大で50%の性能向上が2008年に予定されている。

派生型として中距離拡大防空システムがある。これはPAC-3弾を射程延伸した改造型ミサイルを用いた、弾道弾以外の対空目標も対処可能な自走式の野戦防空システムである。詳細は該当ページを参照。

[編集] 要目

開発レイセオン、ローキードマーチン共同

  • PAC-2:翼幅84 cm・弾体径41 cm・重量900 kg・上昇限度24,000 m・対航空機射程70 km対弾道弾射程20 km(PAC2GEM+・開発レイセオン)
  • PAC-3:翼幅51 cm・弾体径25 cm・重量320 kg・上昇限度15,000 m・対弾道弾射程20 km(旧エリント・開発ロッキードマーチン)

[編集] PAC-3対応のアップグレード

パトリオット・ミサイルPAC-3に対応するために兵器操作コンピュータ(WCC)とソフトウェアを交換アップグレードする。通信機器はすべて調整されなおす。このアップグレードによって、PAC-3オペレーターは統合戦術情報伝達システム(Joint Tactical Information Distribution System, JTIDS)に対応し、LバンドのTDMA戦術データ・リンク・ネットワークであるリンク 16に接続して弾道弾の迎撃に必要な情報が入手でき、またネットワークに対して情報を提供できるようになる。また、新しいソフトウェアによって「テーラード弾道ミサイル・サーチ機能」を実現でき、対応する必要がある特定の必要な方向・角度にのみ集中して捜索が行なえる。また弾道弾が化学兵器弾頭か子爆弾運搬型弾頭かによってそれぞれの禁止高度を設定して正しい高度で撃墜する機能を備える。レーダーも進行波管を加えることで捜索・探知・追跡の性能が向上した。

パトリオット・ミサイルPAC-3のソフトウェア向上は続いており、対レーダーミサイル、UAV、巡航ミサイルを識別できるようになっている。

[編集] 世界での運用

[編集] 湾岸戦争

1991年の湾岸戦争ではパトリオットが実戦使用された。成果については諸説ある。問題として迎撃率が低かったこと[1]、誘導システムの計算不備による味方の誤爆例[2]、破片による味方への被害[3]は広く報道されている。

[編集] 在日米軍

在日米軍では沖縄県嘉手納空軍基地と嘉手納弾薬庫地区に、テキサス州フォート・ブリスからPAC-2弾及びPAC-3弾を装備する米陸軍第1防空砲兵連隊第1大隊(第1-1防空砲兵大隊)が移駐した。指揮・統制はハワイ州フォート・シャフターに所在する第94米陸軍防空ミサイル防衛コマンドが行う。人員約600人の同大隊は4個砲兵中隊を有しており、発射機(M901とM902)は1個中隊6機編成で計24機が配備されている。

[編集] 台湾軍

2008年現在、台湾軍では陸軍がPAC-2弾を装備したものを200発配備している。中国人民解放軍東風-11台湾に向けており、そのための対抗手段とされている。今後PAC-3弾と運用するためのシステムをアメリカから輸入する予定である[3]が、立法院(議会)はPAC-3の新規購入でなく、PAC-2からPAC-3への改造についてのみしか予算承認していない。なお、パトリオットミサイルの中国語訳は英語名からの逐語訳で「愛國者飛彈」とされている。

[編集] 日本での運用

[編集] 航空自衛隊

航空自衛隊のM902発射機

日本では1989年(平成元年)度から航空自衛隊の高射部隊に地対空誘導弾ペトリオットとして配備が開始され、1996年(平成8年)度に全国への配備が完了した。実働部隊の6個高射群24個高射隊(各高射隊は5機の発射機を有す)と教育支援部隊の高射教導隊が、北は長沼町北海道)から南は南城市沖縄県)にかけて配置されている。

弾道ミサイル迎撃用のPAC-3については米国において弾道ミサイル防衛(BMD)対応のPAC-3弾が開発を完了した後、日本では日本版BMDの一つとして、2007年3月30日埼玉県航空自衛隊入間基地に所在する第1高射群第4高射隊に最初に配備された。当初は3個高射群(第1(入間)・第2(春日)・第4(岐阜))に限定して配備する計画であったが、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対応すべく他の3個高射群にも配備する方針を固めた[4]。配備される各高射隊の発射機のうち2機がPAC-3弾の搭載・運用に対応する。なお、現在配備されているのはPAC-3/Config.2形態である。

[編集] 北朝鮮ミサイル発射対応

2009年4月5日北朝鮮によるミサイル発射実験に際しては3月7日に弾道ミサイル破壊措置命令が発令されていたが追尾・解析の結果、日本へ落下しないことから迎撃は行われなかった[4][5]。PAC-3はミサイルの発表予定軌道に近い岩手県の2ヶ所{岩手駐屯地滝沢村)、岩手山中演習場(八幡平市滝沢村)}と秋田県の3ヶ所{秋田駐屯地(秋田市)、新屋演習場(同)、航空自衛隊加茂分屯基地男鹿市)}に、浜松基地から清水港などを経由する経路で配備された。また市ヶ谷駐屯地朝霞駐屯地習志野駐屯地へも移動配備された。入間基地から朝霞駐屯地市ヶ谷駐屯地習志野駐屯地から市ヶ谷駐屯地霞ヶ浦分屯基地から朝霞駐屯地への移動した[5]

[編集] 北朝鮮ミサイル発射対応に見る現状の配備状況

2009年に行われた北朝鮮のミサイル発射実験に対して、政府は落下物があった場合の備えとして政府下命により自衛隊では対応を行った。 その間個々のソースでは判別しない状況が露になった事例となった。

現在2007年度に第1高射群配備・2008年度に高射教導隊と第2術科学校配備とされていた部隊は、必要とされた時期にフルスペックでの展開を行えなかった。 LSは各一台単位。今回は撃破目的でなく(完全)破壊目的であったためPAC-3のみの展開したが、訓練弾まで搭載する若しくは少数のみ搭載するほどのミサイル弾体の装備状況と見られている。これらは予算措置上システム導入費と別立ての弾薬等購入がいまだゆっくりとしたペースでしかなされていない姿を露呈した事になる(一度に導入した迎撃弾は一度に用途廃棄処分となってしまい部隊維持上好ましくない又性能向上も織り込めない)。

射程1000~1300キロ・弾頭重量1トンの準中距離弾道弾ノドンサイロ以外にも機動発射台トラック又は特殊偽装船から発射可能であり、近年その保有について議論に上がってきている自衛隊の敵基地攻撃能力では捕捉・制圧することが困難であると推定されている。性能的にもある程度の命中精度(半数必中界が2~3キロ程度)・信頼性を持ち、かつ2~300機規模と言われる配備状況に対して、MDの終末迎撃能力は現性能では質・量共に構築途上であり十分とは断定出来ない事が各所報道によって報じられている。

現実的対応を迫られる自衛隊としては、より以上の質の向上と練成の追求もさておき、第一段階として実働16コ射撃隊×発射機辺り16発の即応弾・1.5~2交戦分×各高射隊辺り発射機LS2基でPAC-3・768~1024基導入の完成が現在追及されている訳であるが、パトリオットシステム自体が1高射隊当り4-8個射撃装置の管制が可能である事から、現状5基+1基の発射機増勢が政治的に決断されれば1個高射隊単体で3箇所から有線での連接で首都圏枢要部程度の面積に対して36~48目標(1目標2弾迎撃)対応可能な編成を取れるシステム冗長性を保持している。 更に延長してMEADSタイプの能力向上型の増備までの対応においては新たな部隊編成を必要としないが、THAADミサイル等の新しいシステムの場合は高い能力と引き換えに更に高額な導入費に加えて部隊編制まで必要になってくる(現在大気圏上層、大気圏外邀撃能力に欠けており、THAADミサイルと違って必要な時に展開する必要が残っている)。

現状と、発展の可能性・必要性、問題点の洗い出しが出来たと評価する声も見られる。


[編集] その他

[編集] 米軍の構想

  • ABL (YAL-1) 空中発射レーザーによる遠中距離防衛、THAADミサイルとイージス艦発射のSM-3による中近距離防衛、味方陣地上空でのパトリオット・ミサイルPAC-3による短距離防衛、という多重防衛構想がある。現在開発中のTHAADミサイル(終末高高度防衛ミサイル、Terminal High Altitude Area Defense missile、サードミサイル)の性能が計画通りであればパトリオット・ミサイルPAC-3の位置をTHAADミサイルが取って代わるかもしれない。米軍はこの防衛構想の一部として、現在、Xバンド・レーダーを世界中に展開設置しており、イージス艦のフェーズド・アレイ・レーダーDSP衛星、Navstar GPS衛星と共に地球規模での弾道弾ミサイル発射探知システムを完成させつつある。
  • パトリオット・ミサイルPAC-3の射程延長を中心とする改良版計画、中距離拡大防空システム(Medium Extended Air Defense System、MEADS)計画の実現によって現在のPAC-3が置き換えられる可能性がある。
  • 米軍では戦術高エネルギーレーザー(THEL)を開発している。

[編集] 登場作品

  • ガメラ3 邪神覚醒』:ガメラがイリスとの空中戦の最中に、航空自衛隊がガメラに向けてペトリオットを放ち、ガメラを撃墜するという部分があるが、これは海外での訓練で特別に撮影許可されたものである。
  • ゴジラvsビオランテ』:改良型の「ペトリオット改」が登場。
  • 『超空の大和』:北朝鮮のノドンやスカッドC、中華人民共和国の東風15を撃墜している。ただし、ロシアのSLBMはふせげなかった。
  • ヱヴァンゲリヲン新劇場版』:第3新東京市の対使徒迎撃システムの一つとして登場。

[編集] 出典

  1. ^ Gussied Up Patriots Debut in Iraq, www.wired.com(英語) - 翻訳記事
  2. ^ U.S. Missile Defense Programs at a Glance, www.armscontrol.org(英語) - 翻訳記事
  3. ^ http://www.mnd.gov.tw/Publish.aspx?cnid=65&p=28582
  4. ^ PAC3全国配備へ 北ミサイルの脅威、対応強化 防衛省拡大方針
  5. ^ 北朝鮮のミサイル関連動向について 防衛省 2009年3月31日
  • U.S.ARMY, FM(Field Manuals) 3-01.85 Patriot Battalion and Battery Operations, 13 May 2002, All Page.
  • 軍事研究2007年7月号「空自ペトリオットPAC-3実戦配備」
  • 「ミサイル防衛の基礎知識」小都元

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年11月23日 (月) 08:19 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
【パトリオットミサイル】変更履歴

ご利用上の注意