健康診断
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健康診断(けんこうしんだん)とは、診察および各種の検査で健康状態を評価することで健康の維持や疾患の予防・早期発見に役立てるものである。健診・健康診査とも呼ばれる。特定の疾患の発見を目的としたものは検診とよばれる。
学校や職場、地方公共団体で行われる法令により実施が義務付けられているものと、受診者の意思で任意に行われる場合がある。任意に行われる健康診断は診断書の発行を目的とした一般的評価のことが多いが、全身的に詳細な検査を行い多種の疾患の早期発見を目的としたサービスも広く普及しており、船舶のオーバーホール施設になぞらえて人間ドックと呼ばれる。
危険物・特定の化学物質などを扱う職業の従事者はそれに応じた健康診断を定期的に受けることが義務づけられており、この健康診断は重大な職業病の発生を未然に防ぐことが目的という点で一般的なものとはやや性格を異にする。
目次 |
[編集] 種類
[編集] 病院
病院・診療所において、各種の健康診断が行われている。一般的な健康状態評価および人間ドックサービスの他、労働安全衛生法で義務付けられている健康診断の振り替えとして行われる場合がある。
[編集] 自治体
保健所では、健康診断の簡略なものとして老人保健法による基本健康診査(住民検診)を行っている。自治体によっては、健康診断受診奨励金や、交通手当を支給しているところもある。
また、乳幼児を対象とする乳幼児健康診査があり、受診の年齢(4か月、1歳6か月、3歳)や診察項目が決められている。
[編集] 学校
学校保健法により、毎学年定期に健康診断を行うことが定められている。項目は次の通りである。
大学生の場合には、●で示した項目を省略することもできる
- 保健検査(発育、健康状態等に関する調査)
- 身長、体重
- 座高●
- 栄養状態
- 胸郭の異常の有無●
- 視力●
- 聴力(学年による)
- 目の疾病および異常の有無
- 耳鼻咽喉頭疾患の有無
- 皮膚疾患の有無
- 歯および口腔の疾病及び異常●
- 結核の有無
- 心臓の疾病及び異常の有無(学年による)
- 尿●
- 寄生虫卵の有無(学年による)
- 脊椎側彎(モアレ検査ならびにX線撮影)●
- 貧血
- 小児生活習慣病
就職活動などに健康診断証明書が必要とされるため、大きな大学ではその発行を迅速・正確に行うための自動発行機が普及しつつある。
[編集] 労働者
労働者の健康診断は、労働安全衛生法および労働安全衛生規則によって定められている。費用は事業主の負担が原則である。ただし、事業主が実施する健康診断を受けず、本人の都合により各自で受ける場合には、自己負担としてもよい[要出典]。それを行わない場合には、健康診断義務違反(労働安全衛生法66条)となり、50万円以下の罰金となる。過去には、健康診断受診を拒否したことが従業員の解雇理由として認められた判例も存在する。なお、健康診断の結果は、本人に通知するとともに、所定様式の個人票に記録して5年間保存することが必要である。
- 雇入時健康診断
- 配置替えにおいても同様
- 定期健康診断
- 常時使用する労働者を対象に、年1回行われるもの
- 特定業務従事者の健康診断
- 海外派遣者の健康診断
- 労働者を6か月以上海外に派遣しようとする場合の派遣前検診、6か月以上海外派遣した労働者が帰国して業務に就く場合の帰国後検診がある。また、ビザの申請の際にも、健康診断(またはその証明書)が必要とされる場合がある。
- 結核健康診断
- 深夜業従事者の自発的健康診断
- 労災保険による二次健康診断
- 特殊健康診断
- 特定の有害業務従事者に対する健康診断
これらの健康診断は、対象者により項目が異なる。また、年齢や受診歴によっては、省略できる項目がある。雇入時健康診断、定期健康診断の項目を次に示す。
その他、受診者の条件により追加される項目を次に示す。
- 海外派遣労働者
- 結核健康診断
- エックス線直接撮影、喀痰検査
- 聴診、打診その他
- 年齢(35歳以上の場合が多い)
- 胃部エックス線検査
- 女性
- 乳房検査
- 子宮検査
受診時の賃金に際しては、一般定期健康診断では規定はなく、支払うことが望ましいとする厚生労働省の通達がある。規模の大きい事業者では、通常の勤務時間内に事業者指定の病院(事業者自身が経営する病院のこともある)や健診センターで一般定期健康診断を受診させることが多く、その間の時間は有給であるのが一般的である。
規模が小さい事業者では、勤務時間外に各労働者が選択した病院等で一般定期健康診断を受けさせ、後日、その費用を会社が支給していることもある。この場合は受診時間は無給である。
なお、特殊健康診断は有給とされる。
50人未満の労働者を使用する事業場の事業者は、特定の要件を満たせば、健康診断の費用として小規模事業場産業保健活動支援促進助成金を受けることができる。(新規の申込みの受付は停止中)
[編集] 家庭用
健康診断に出かける手間を省くため、または特定の項目について頻度の高い検査を行うため、家庭で簡単に健康診断を行うための検査キットが市販されている。また、検査キットを郵送することにより健康診断を行っている機関がある。次のような検査項目がある。
[編集] 被爆者
原子爆弾による被爆者に対する健康診断として、毎年2回の定期健康診断と、年2回を限度とする希望による健康診断(うち1回はがん検診を受診可)がある。
[編集] 受診時の注意
- 着脱しやすい衣服を着用する。
- X線撮影では、上半身は無地の下着を着用する。
- 食事の摂取などの条件が指定されている場合には、それに従う。例えば、胃内視鏡検査の場合、米食ならば10時間、パン食ならば6時間以上の絶食が求められる。
[編集] 問題点
[編集] 検診の有効性の保証
健康診断の究極の目的は、対象者にできるだけ健康で長生きしてもらうことであり、つまりマクロで見れば対象の平均寿命の延長である。病気を早期発見でき早めに対処できるのは無条件に良いことと簡単に考えられがちであるが、実際には以下に挙げる様々な要因のため、健康診断はマクロ的に無効で資源の無駄であるばかりか、健康に逆効果となる可能性すらある。実施主体が多くの金銭的負担を抱えるものである以上、その有効性がコストに見合うだけのものであることは統計的、疫学的に証明されなければならないが、多くの場合はそれらの証明には非常に長い歳月を要するため、不十分なエビデンスや予想によって検診を行わざるを得ないこともある。このような点で論争を生じている代表例としてメタボリックシンドロームも参照。
- 「健康診断による害」は、「健康診断による利益」よりも先に出現する。無症状の患者に対する採血や内視鏡をはじめとする侵襲や放射線被曝によって、稀ながら合併症が生じる。また無症状の段階で病気を早期発見し、内服や手術による治療を行えば、それによる合併症も一定の割合で生じる。たとえば肺癌のCT検診については、あまりに小さな肺癌をCTで発見できても手術の合併症リスクが高すぎるとして、有効性を疑問視する意見がある。
- 健康診断によって疾病を早く発見しても、5年生存率などの指標は上がるが、それが必ずしも最終目的である寿命を延ばしたことを意味しない。ステージI(早期・無症状)で切除すれば平均余命が5年、ステージIV(末期・症状出現)なら平均余命が1年、という癌がある場合、検診でステージIの患者をたくさん見つければ「この癌を持った患者全体の5年生存率」は確実に上昇する。しかし仮にこの癌が、放置してもステージIからIVまで進行して症状が出るのに平均4年かかるのだとすれば、実際には検診は全く寿命を延長しておらず、総合的には、単に患者に早期から不安と侵襲を与えただけになってしまう。見かけ上は癌の治療成績が良くなるので、これをリード・タイム・バイアス lead time biasと呼ぶ。前立腺癌のPSA検診や乳癌検診などではこのような仕組みにより、寿命の延長に繋がらないのではないかという意見がある。
- 極端な場合、寿命そのものにほとんど影響しない進行の遅い病気や、そもそも健康に悪影響のない疾患を誤って拾い上げて無用な治療を施し、却って害をなしてしまうことすらあり、前者をlength bias、後者をoverdiagnosis biasと呼ぶ。成人の甲状腺癌や新生児の神経芽細胞腫で実際にこのような事態が起こったため、現在これらの疾患において集団検診はなされていない。脳ドックによる動脈瘤の発見についてもこの種のバイアスが存在する可能性が指摘されている。
なお、この節で挙げた例はいずれも専門家でも意見の一致がないものや現在進行形で評価中のものが含まれており、検診が無効であると主張しているわけではないことに注意。
[編集] その他の問題点
- 定期健康診断の検査方法は、簡単、迅速を主旨としているため、健康状態の判定の目的に対して最良のものとは限らない。例えば、糖尿病の検査としては、定期健康診断等の項目である尿糖検査よりも、血糖検査の方が精度等の点で優れているとされる。
- 大量の受診者に対応するため、場合によっては検査の精度が劣ったり、疾病を見落とす危険性が指摘されている。
- 学校などで思春期の女子に対して行う際に、上半身に着衣なしで胸囲などの測定を行ったり、男性の教諭に健康診断を担当されることは苦痛であると、問題になった。
- 一部の企業に於いて、義務付けられている社員への健康診断を実施しないケースが散見される。また、こういったことが元で、神奈川県相模原市の労働者派遣会社が、請負社員に健康診断を受けさせなかった上、健康診断書を偽造して、結核患者をゼネコンの建設現場へ派遣し、その結果、結核の二次感染が発生していたことが発覚している[1]。この会社は、常習的にこうした行為を行っていた事実も明らかになっている。
[編集] 脚注
- ^ 神奈川の業者、請負労働者の診断書偽造…結核2次感染招く 読売新聞 2008年12月29日
[編集] 関連項目
最終更新 2009年6月10日 (水) 02:30 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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