夫婦別姓

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夫婦別姓(ふうふべっせい)とは婚姻時に両者の)を統一せず、夫婦それぞれが婚姻前の氏(姓)を名乗り続けることである。またはその制度。夫婦別氏とも呼ばれる。

目次

[編集] 概要

2009年10月現在、現行民法は婚姻時に夫または妻のいずれかの氏を選択する「夫婦同氏原則」(民法750条)を規定している。これにより夫婦同氏は届出の際には必須の形式的要件となり(民法750条、戸籍法74条1項)、また婚姻期間中は公文書において夫婦が異なる氏となることはない(効果となる)。なお、これらの規定は夫婦ともに日本国籍を有する場合に適用される。

夫婦がともに婚姻前の氏を継続使用しようとする場合、婚姻届を提出せず改氏を回避する「事実婚」や婚姻届を提出した上で片方が旧姓を使う「通称使用」などで便宜を図ることがある。ただし前者は民法739条による婚姻関係と扱いが同一というわけではなく、後者は通称の氏(旧姓)と公文書が異なる。現状では法律的な(内縁、事実婚ではない)夫婦と別氏は同時には成立しない。

婚姻時の改氏に不都合を訴える人が実在するため、夫婦同氏の原則の緩和を求める声がある。そこで、選択的夫婦別氏制度の導入など民法750条の改正が提案されている。一方で、現状制度の維持を望む人も実在するために民法750条改正の是非を争点として以下に示すような論争が続いている(論争を参照)。

[編集] 歴史

制度としての夫婦別姓に関する議論は昭和50年代からすでに存在しており、1976年には内閣府世論調査にはじめて夫婦別姓についての設問が見られる。この当時は女性労働者の便宜の問題として捉えられており、必ずしも民法の改正を主眼としておらず旧姓の通称使用の普及にも軸足があった。

その後、民法を改正し婚姻時に夫婦が同姓か別姓かを選択する「選択的夫婦別姓制度」とする案が主流となり1990年代より国会に議員立法による民法改正案が提出されるようになった。1996年には法制審議会が選択的夫婦別氏制度を含む「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申した。また男女共同参画社会基本法の成立および男女共同参画局の設立によりその政策の中心的課題と位置づけられ、政策的にさまざまな推進策が展開されてきた。しかしこの民法改正案に関してはいまだに賛否両論があって論争が続いており、決着をみていない。

1996年の法制審答申いらい政府与党および推進派は法案の国会提出を模索しているが、与党自民党内の事前審査で合意に達することができず国会提出が見送られ続けている。当初政府案は法制審答申の民法改正案を提案していたが抵抗が根強く、政府案は例外的夫婦別氏制度と呼称や内容を変更するも合意には達していない。さらに反対派に譲歩し、(西川京子が自民党法務部会にて発言した)家裁の許可を要件とすることを盛り込んだ例外的夫婦別氏制度を議員立法で自民党法務部会に提出するがまだ合意には達していない。自民党内では民法改正案のほかにも旧姓続称制度や通称使用案といった独自の試案も議題に上ることはあったが、いずれも自然消滅している。

一方、野党は法制審答申いらい超党派で会期ごとに民法改正案を国会に提出し続けているが審議されないまま廃案と再提出を繰り返している。

[編集] 年表

  • 1996年2月26日 法制審議会、民法の一部を改正する法律案要綱を決定
    • これより政府案としてこの民法改正案を軸に国会提出を与党内で模索する。
    • 6月 長尾立子法務大臣、法案の提出を正式に断念
  • 1997年
    • 民主党と社・さ有志、それぞれ参議院に民法改正案を提出
    • 自民党法務部会、旧姓続称制度を議論
      • 自民党内で戸籍上の別氏に対する抵抗が根強く、旧姓を利用可能とする制度を模索するが立ち消えになる。
  • 1998年6月8日 超党派野党、衆議院に民法改正案を提出
  • 1999年12月10日 超党派野党、衆参両議院に民法改正案を提出
  • 2000年
    • 1月24日 超党派野党、参議院に民法改正案を提出
    • 10月31日 超党派野党、参議院に民法改正案を提出
  • 2001年
    • 5月10日 超党派野党、参議院に民法改正案を提出
    • 10月 国家公務員の旧姓使用が可能に。以後、地方公務員、民間にもひろがる
    • 11月15日] 自民党法務部会、戸籍法の一部を改正する法律案(通称使用案)を議論
      • 高市早苗議員が戸籍に旧姓を併記する代案を推進するが法案は部会に提出されず、後に高市の落選もあり事実上は立ち消えになる。
  • 2002年
    • 1月 法務省、同姓が原則で別姓は例外とする修正案を作成
    • 3月14日 自民党法務部会、例外的夫婦別氏制度の法務省試案を議論
      • このころから政府案は「選択的」から「例外的」となる。反対派に譲歩して理解を求める。
    • 6月6日 森山法務大臣、例外的夫婦別氏制度の法務省試案の国会提出を断念
      • 「例外的」とした政府案でも与党内の合意は得られなかった。
    • 7月24日 自民党有志、家裁の許可を要件とする例外的夫婦別氏制度の民法改正案を自民党法務部会に提出
      • 自民党有志が政府案の例外的夫婦別氏制度に家裁の許可を要件に加えた案を議員立法で提出する。
  • 2004年
    • 3月 自民党、職業上の理由などで必要な場合に家庭裁判所の許可を得て別姓を認める改正案の国会提出を見送る
    • 5月14日 超党派野党、衆参両議院に民法改正案を提出
  • 2005年3月30日 超党派野党、参議院に民法改正案を提出
  • 2006年
    • 3月 日常生活で使う旧姓は、本人の希望でパスポートに併記し得るように基準が緩和される
    • 5月31日 超党派野党、参議院に民法改正案を提出
    • 6月8日 超党派野党、衆議院に民法改正案を提出
  • 2008年4月22日 超党派野党、参議院に民法改正案を提出
  • 2009年4月24日 超党派野党、参議院に民法改正案を提出

[編集] 現在提案されている試案

これまで提案されてきた夫婦別姓案導入のための民法改正の試案は概ね以下の5種に分類できる。なお、ここでの呼称は各党が正式に決めたものではない。

選択的夫婦別姓A案(子供の姓を統一しないもの)
婚姻時に夫婦同姓か夫婦別姓か自由に選択できるとし子供の姓は出生時に決め、兄弟姉妹の姓を別々にすることを認める案。夫婦同姓と夫婦別姓とを同列に扱うが同姓の場合、兄弟姉妹の姓を別々にすることを認めない。
選択的夫婦別姓B案(子供の姓を統一するもの)
婚姻時に夫婦同姓か夫婦別姓か自由に選択できるとするが子供の姓は婚姻時に決め、兄弟姉妹の姓を別々にすることを認めない案。夫婦同姓と夫婦別姓とを同列に扱い、両者の間に形式的にも実質的にも差別はない。
例外的夫婦別姓
夫婦別姓を望む場合には例外的に認めるとする案。夫婦同姓を原則とするがそれはほぼ形式的な差別であり、実質的には自由に夫婦別姓を選択できる。2002年に法務省が提案。
家裁許可制夫婦別姓
夫婦同姓を原則とし、夫婦別姓は家庭裁判所による許可を得た上で認めるとする案。祭祀の継承や職業上の理由など、許可理由を限定する。2002年に自民党の一部の議員が提案(提案者は本案を例外的夫婦別姓と称するが先に提案された上記の例外的夫婦別姓と明らかに内容が異なるため、「家裁許可制」として区別した)。
通称使用公認制
夫婦同姓の原則を堅持する代わりに、通称使用を法律で認めるとする案。夫婦別姓制度に反対する自民党の一部などの勢力による対案。

ただしこれらの案は並列して存在しているのではなく、ほとんどが1996年の法制審議会答申で出された民法改正案[1]から派生したものである。源流にあたる法制審答申の民法改正案は上記の分類でいえば選択的夫婦別姓B案に近い。派生の系統としては主に2通りあり、自民党内の事前審査で反対派に譲歩して変更を加えたものと民主党・共産党・社民党の共同提出法案がある。

自民党内では政府提出法案であろうとも法案提出の前には党内の事前審査を通過しなくてはならないという慣例がある。法制審答申の民法改正案[1]ではあまりに抵抗が強く反対派に譲歩して例外的夫婦別姓となり、政府提出法案をあきらめて議員立法で家裁許可制夫婦別姓へと形を変えた。その間に反対派が議員立法で通称使用公認制の構想のみ提案した。

民主党・共産党・社民党が提出しつづけた法案はほとんど法制審答申の民法改正案[1]そのままではあるが違いは子どもの氏の決定時を婚姻時ではなく出生時と定め、経過措置を1年ではなく2年と定めているところにある(上記の分類なら選択的夫婦別姓A案)。

[編集] 世論の動向

民法や女性問題に関する世論調査は1976年の「婦人に関する世論調査」など数年おきに実施されているが、1996年に選択的夫婦別氏制度を含めた法制審議会答申が出た後の3回は選択的夫婦別氏制度についての設問は同じ文言になっている。

[編集] 2006年「家族の法制に関する世論調査」

内閣府が2006年11月に実施した「家族の法制に関する世論調査」(2007年1月27日発表)によると、選択的夫婦別氏制度に関する設問については以下の結果となった。なお本調査は2006年11月23日から12月10日にかけ、全国5,000人以上の成人男女を対象に実施。有効回答率は55.3%であった。

Q11〔回答票17〕 現在は、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗らなければならないことになっていますが「現行制度と同じように夫婦が同じ名字(姓)を名乗ることのほか、夫婦が希望する場合には、同じ名字(姓)ではなく、それぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めた方がよい。」という意見があります。このような意見について、あなたはどのように思いますか。次の中から1つだけお答えください。

  • (ア)「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」=「法改正には反対」が35.0%
  • (イ)「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」=「選択的別姓制度への改正を容認」が36.6%
  • (ウ)「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」=「通称使用を認める法改正には賛成」が25.1%

結果については日本経済新聞や東京新聞はじめ新聞報道では「賛否拮抗」という評価が目立った。これに加えて2通りの意見分類ができる。すなわちまず1つは「選択的夫婦別姓制度(=戸籍上の別氏)に反対の人は(ア)と(ウ)を合計した60.1%であり、容認する人(イ)の36.6%を大きく上回った」という意見である。一方「婚姻前の氏を利用可能にするための法改正に容認する人は(イ:選択的夫婦別氏制度)と(ウ:通称を利用可能に)を合計した61.7%であり、いずれの法改正も必要ない(ア)とする35%を大きく上回った」という意見である。

他の設問を見ると、婚姻前からの仕事を継続する場合など改氏で何らかの不便があると考える人の割合は全体で46.3%であった。過去の調査結果から推移を見ると回を追うごとに増えている。

  1. 41.1%(1996年6月実施)
  2. 41.9%(2001年5月実施)
  3. 46.3%(2006年11月実施)

また夫婦の名字(姓)が違うと夫婦の間の子供に何か影響が出てくると思うかという設問に関して「子供にとって好ましくない影響があると思う」という回答が66.2%であり、過去の調査からほとんど上下していない。逆に「子供に影響はないと思う」という回答は30.3%ではあるが、過去の調査結果から推移を見ると回を追うごとに増えている。

  1. 25.8%(1996年6月実施)
  2. 26.8%(2001年5月実施)
  3. 30.3%(2006年11月実施)

類似の設問には家族の一体感がある。「家族の名字(姓)が違うと、家族の一体感(きずな)が弱まると思う」との回答は39.8%、「家族の名字(姓)が違っても、家族の一体感(きずな)には影響がないと思う」との回答は56.0%となっている。

[編集] 各政党の姿勢

おもに「選択的夫婦別氏制度」についての、国会議員を擁する各政治団体の賛否の状況は以下のとおり。

党として賛成を表明している政党
党としての賛否が明確でない政党

[編集] 論点

賛成論・反対論双方の主張とその反論を以下に記す。

[編集] 賛成論から

  • 職業上、氏の変更が業績の連続性にとって損害となる場合がある
    • 「各業界や組織・団体、あるいは個別法規の改正で足り民法改正の必要性とするには足りない」とする反論がある。
  • 配偶者の父母と同じ氏となることにより、配偶者の実家に組み入れられたように感じると同時にそのように扱われることが苦痛である
    • 「すでに廃止された家父長制との混同によるもので一方的な思い込みによるのだから、民法改正の必要性とするには足りない」とする反論がある。
  • 妻の側が改氏する割合が全体の97%といわれており、男女平等に反する
    • 「法律の規定は夫婦いずれかの氏を名乗るとなっており平等である」という反論や「選択的夫婦別氏制度となった場合でも婚氏統一するかどうかは相変わらず夫婦の協議による選択であるから、結果が均等になるとは考えにくい」という反論がある。
  • 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約により夫婦別氏の推進が要求されている
    • 「条約では妻の氏を選択できることが要件の一つとなっており、日本の現行民法はすでに満たしている」とする反論や「文化や歴史に依存する問題であり文化によって氏の持つ意味や指す対象が異なっているので、そういった差異を無視して一概に形式面のみを統一すべきというのは暴論である」とする反論がある。
  • 国民の意識が変化しつつあり別氏が選択できないため事実婚で我慢している人たちがおり、彼らにも平等に婚姻の権利を与える必要がある
    • 「別氏のため事実婚している人の実数統計がなく、どの程度存在するのか未確認」とする反論や「法律の規定を嫌って独自の方法を採用する人に合わせて法律の規定のほうを変更すべきという考え方は適切ではない」とする反論がある。また「氏の指す対象やその意味などを考慮せずに形式面での好みや志向だけで『意識の変化』と断ずるのは適切でない」とする意見もある。
  • 中国朝鮮半島など東アジアでは夫婦別姓の国が多く、同じ文化圏として日本も考慮すべき
    • 「父系氏族文化のもとで女性が結婚後も出身一族の姓を担っているだけの習慣を、配偶者の自由意思による『別姓』と混同している」との反論あり。これら各国ではむしろ、夫婦別姓論とは逆に「家族の中で妻のみ他姓の『よそ者』」「夫や子と同じ姓を名乗りたくても名乗れない」との問題を抱えていたが近年は法的に「夫婦同姓」が認められる例も出てきている(世界の氏名制度比較を参照)。なお、そもそも日本とこれらの国は別の文化圏であるという学説も多く、これを論拠に反論する意見もある。また、夫婦同姓支持者、反対者双方に言えることであるが、姓と氏を混同しているという主張がある。厳密な言い方をすれば、日本人の苗字は「氏」であり、「姓」では無い。逆に、中国人、韓国人などのファミリーネームは「姓」であり、「氏」では無い。両者は社会通念上は、ほぼ同義として用いられているが、その性質は異なる。姓は男系の先祖をあらわすものであり、当然、結婚したからと言って、自分の先祖が変わるわけでは無いので結婚後も自分の先祖の名前を名乗り続ける。むしろ姓をファミリーネームとして用いている民族の間では夫婦別姓が自然である。一方、日本人の苗字である氏はその家の名前である。よって先祖が誰であるかは問題ではなく、どの家の一員になったかが問題であるので、結婚や養子縁組などで苗字が変更されるのはむしろ自然である。ちなみに日本が朝鮮半島や台湾を領有していた時代、朝鮮人や台湾人を創氏改名と称し、日本人風の名前を名乗らせていた事は広く知られているが、彼らは創氏改名後も正式な文書上で創氏改名以前の「姓」を持ち続けていた。つまりここで言った「創氏」とは氏の無い民族に氏を創るの意味であった。戦前は、姓と氏は明確に区別され、姓と氏、双方を持つことも普通であった。その場合も姓は生涯変わらぬもの、氏は結婚などによって変わりうるものであった。中国人や韓国人が別姓が普通であるから、日本人もという論理は容易に当てはまらないという根拠がそこにある。
  • 夫婦同姓は古くからの日本の伝統ではない。日本でも中世までは、夫婦別姓(正確には夫婦別氏)が一般的であった。足利義政の妻(正室)は日野富子である。他に、A家出身の妻が「A氏」「A夫人」「Aの方」と名乗ることもあった(三条家から嫁いだ武田信玄の正室が三条の方など)。夫婦同氏の習慣が定着したのは近世以降であり、夫婦別姓こそが真の日本の伝統である
    • 中世の別氏は中国や韓国の別姓と同様、古い氏族制度の伝統に基づいた家父長的なものであり日本に導入するわけにはいかない(ただし前述したとおり中国や韓国の姓は血縁関係を表すものである一方、日本の中世の苗字は家を表すものであるため、単純にかつての日本における別氏の習慣と、中国・韓国における別姓の伝統を同一視するべきではない)。現行の制度は近代的な理念に基づき夫婦一体性を強調したもので、別氏を復活させると女性の実家との結びつきを優先する傾向に拍車をかけることになるという反論がある。
  • 夫婦別姓が法的に認められたからといって、誰かが困るというわけではない。別に従来の夫婦同姓の家庭に行って、これより夫婦別姓にしなさいと言って回るわけではない。基本はあくまで従来どおり夫婦同姓であり、その中で別姓としたい者の権利を認めるということに過ぎない。夫婦別姓に反対する者は自分の家庭で取り入れなければ良いだけの話であり、他人の家庭の選択に反対するのは間違いではないかという意見。
    • 結婚を希望する両者で、夫婦同姓に対する意見が異なる場合もある。姓が変更する事で結婚に踏み切れない人たちがいる反面、この問題について意見が割れることによって結婚に踏み切れない人たちも出てくるのではないか。単純に法律で夫婦は同姓に限ると規定しておけば、このような問題は発生しないのではないかという反論もある。

[編集] 反対論から

  • 選択的夫婦別氏制度にしなければならない切実な理由がない
    • 「理由の切実さは要求する側が主張するものであり、必ずしも万人に共感理解される必要はない」あるいは「職業上の不便や精神的苦痛はじゅうぶん切実な理由である」とする反論がある。
  • 職業上の不便などはおおむね旧姓の通称使用で解決が可能である
    • 「公的証明書(運転免許証など)は戸籍上の氏名である必要があり通称は使用できない」との反論がある。
  • 2001年の世論調査によると夫婦別氏の実践を希望する人の割合は7.7%しかない
    • 「たとえ少数であっても、その少数が希望する選択が可能な制度のほうがよい」あるいは「希望者は少数でも他者の夫婦別氏を容認する割合は40パーセントを超えている」という反論がある。
  • 氏が指し示す対象を変更する必要性がない
    • 「氏が指し示す対象はそれぞれの個人の考え方でよい」とする反論や「もともと氏は個人を指す名称でしかなく家族、家、親族などの団体の名称ではない」とする反論がある。
  • 主張の理由が家族・家庭より個人を過度に優先する思想であり、現今問題となっている家庭崩壊を促進する惧れがある
    • 「家庭経営は各個人の責任であり、法制度がこれに介入すべきではない」とする反論や「すでに現今でも家庭崩壊が見られるのであれば、夫婦同氏制度であっても家庭崩壊の要因は別にあると考えられる」とする反論がある。
  • 夫婦別姓が認められれば婚姻時に夫婦間で同姓にするか別姓にするか意見が対立する可能性があり、対立した場合は結婚を諦めるケースも出てくると思われ夫婦別姓で結婚をする夫婦以上に夫婦別姓で結婚を諦める夫婦の方が多くなり、かえって婚姻数が減少する可能性が指摘されている
    • 「夫婦の双方が自分の姓を捨てたくないという理由から結婚をあきらめたり(入籍を伴わない)事実婚しているカップルが夫婦別姓を選択できるようにすることで婚姻に至り、婚姻数が増加する可能性がある」という反論がある。
  • 子供の姓も選択制であることから子供・孫の姓の取り合いになり、場合によっては深刻な対立に発展する可能性がある。特に一人っ子同士の結婚の場合、両家の両親が「孫をうちの姓にしてくれないと家が途絶える」と主張するケース、由緒・名誉・財産など両家の比較によって子供の姓を決めるケース、対立を解決する為に金銭の授受が起きるケースなどの弊害が発生する可能性が指摘されている。また金銭の授受が発生するケースでは「お金のある方の家が子供・孫の姓を手にすることができる」ようになることで、「子供・孫の姓の選択にまで格差社会にするつもりか」といった批判がある。
    • 「『姓が途絶える』問題が、結婚する時点から子どもが生まれる時点まで持ち越されるにすぎない」といった反論がある
  • 結婚時に同姓か別姓かの選択、子供の出生時に子供の姓の選択、などの精神的な負担を万人に負わせる可能性がある。一見、同姓を選択した夫婦には無縁の問題に思えても自分の子供や孫がこのような問題に巻き込まれる可能性があり他人事と片づけられる問題ではない。少数の人たちの要求で万人に精神的な負担を負わせる可能性があり、大変な迷惑。決して「選択制なのだから誰の迷惑にもならない」という話しではない
    • 「女性側の姓を結婚後の姓として選択できるようになってから60年が経つが現代でも女性改姓するのが一般的であり、その選択における精神的な負担が問題になっていない。夫婦別姓も制度上可能となったからといって直ちに多くの夫婦が検討するものではなく、その精神的負担が問題になるとはいえない」といった反論がある。

[編集] 世界の氏名制度

[編集] 各文化における氏名制度の違い

世界のさまざまな文化においては人の名をどのようにあらわすか、人は何を指す名前を持ちどのように名乗るかということがそれぞれに異なっている。

各国の名字のありようについては[3]を参照。大雑把に分類すれば、何らかの所属または関係性を示す名前と本人個人を示す名前の2種類以上を持つ場合が大半である。

所属や関係性を示す名前の中では、家系や家族を表す名前が最も多いと考えられている。これらを便宜的に「氏、姓、名字」の仲間として考えて比較するわけだが、比較のうえではこのような文化ごとの差異も関わる。たとえばスラブ語圏に見られる父称(父親の名前を用いて「~の子」という意味を表す名前)や一部の文化に見られる出身地名、氏族名、部族名といったものもある。これらは「姓」とは違うものとみなされるが、それは「何を指す名前であるか」によって区分されるからである。また父称は父親の名を示すものなので、父を同じくする兄弟姉妹間では同一になる。

したがってこのような名称の文化的な差異を論じる場合、他者との異動性のみを抽出して論じることにはあまり意味がないばかりか誤導を招く危険性もあり、注意が必要である[4]

世界のさまざまな文化における家系や家族を示す名前に関しては、大きく2つに分けると以下のように分類できる。

  • 父系、家系を示す名前(日本の「氏」、中国や韓国の姓にあたるもの)
  • 同族集団、生活集団、世帯などを示す名前(日本の「名字」にあたるもの。ファミリーネーム)

なお、日本の名字は中世において居住地の地名を使用する場合が最も多かった。

[編集] 各国の氏名制度

諸外国の氏名制度を比較したものを以下に記す。言い換えれば法律上の夫婦がともに婚前の氏・姓(日本でのそれに該当する、またはそれに近い)等の名称を維持できる選択肢があり得るかどうかである。これについて立命館大学教授の二宮周平は「氏と名の組み合わせで個人を特定する制度ないし習慣を持つ国々では、周知のように、夫婦別氏あるいは旧姓の併用を認める国がほとんどである」と指摘している[5]

また近年では一部の国で家族および氏名に関する法改正が行われた。かつて法律上に婚氏統一が明記されている国として日本に並びトルコやタイなどが挙げられていたが、ともに法改正があり法律上に婚氏統一の規定はなくなった。夫婦別姓推進派の小宮山洋子(民主党)は「(夫婦別姓の)選択の自由が全くないのは、世界広しといえども日本だけ」と国会で発言している[6]

イスラム圏
文化として家名にあたる名を持たないが、「~の子」を示す名や「~の出身」を示す名が家名のように使われる例もある。
中国
父系祖先を示す姓を用いる習慣があり、夫婦間で統一されることはない。子供の姓は両親のいずれかから選択することになっているが、漢民族の伝統によりほとんどの場合父の姓が使われる。近年、複合姓の導入が検討されており制度化はされていないが使用は一部で始まっていると言われる。香港では20世紀まで複合姓も多かった。例えば、政治家の陳方安生は本名が「方安生」で結婚時夫の姓「陳」を追加している。
台湾
原則夫婦別姓。子供の姓は両親のいずれかから選択するが、届けなしの場合は自動的に父系の姓が適用されていた。これも男女平等原則の違反とされ、2007年の民法改正で両親が子供の姓を合意し両方の署名を入れ役所に提出しなければならない。届けなしの場合は役所が抽選で決める。
韓国
夫婦がそれぞれの父系名を名乗る。子供は原則的に父親の姓を名乗る。
モンゴル
家名にあたる名は存在しないが、氏族名が姓に近い役割を持つ。しかし名前の表記としては個人名と父親名を併記する(父親名は当然、夫婦間で異なる)。
ベトナム
父系名を名乗り、夫婦で異なる。
フィリピン
家族名(ファミリー・ネーム)を用い、婚姻時に夫婦で統一する。女性は旧姓をミドルネームとする場合が多い。
スラブ圏
個人の名は、名+父称+姓となる。父称は父親の名を用いて~の息子、~の娘という意味を表す。家族名である姓は夫婦で統一するが男性形と女性形で語尾が異なるため、結果的に表記や発音のうえでは異なる(例:姓がПавловであれば夫や男性家族はパブロフ Павловとなり、妻や女性家族はパブロワ Павлова
スペイン語圏
「名、父方の祖父の姓、母方の祖父の姓」や「名、父方の祖父の姓、父方の祖母の姓、母方の祖父の姓」、「名、父方の祖父の姓、父方の祖母の姓、母方の祖父の姓、母方の祖母の姓」という名乗り方をする。女性は結婚すると「名、父方の祖父の姓、de+夫の父方の祖父の姓」で名乗るのが一般的。
ポルトガル語圏
スペイン語圏とほぼ同じだが、順序が異なり「名、母方の祖父の姓、父方の祖父の姓」となる。
ドイツ
家族名としての姓を用い、夫婦で統一される。法律上では1994年に婚氏統一原則の例外が規定され、別姓での婚姻も可能になった[7]。さらに2005年には婚氏を出生時の氏だけではなく前婚の氏へも拡大した。
英語圏
家族名としての姓を用い、夫婦で統一される。アメリカでは法律に特に規定がなく、女性が婚姻前の姓をそのまま名乗り続けるケースは珍しくない[要出典]。イギリスにおいても夫婦別姓は選択可能。
オランダ
vanが前につく姓は出身地を表す名前が由来であったが、現在ではその意味はほとんど失われている。家族名としての姓を用い、夫婦で統一される。
アイスランド
姓にあたる名前がなく、父称を用いる。
トルコ
かつては姓にあたる名前がなかったが、1934年に導入された創姓法によって国民全員が姓を持つことが義務付けられた。 2001年の法改正により女性が婚姻前の名前を残せるようになった。
インド
地域・文化によってさまざまな種類の名称が存在し統一性がないが、姓にあたるような名前としては家族名や氏族名がある。家族名は夫婦で統一される。法律上の規定はない。
タイ
1913年の個人姓名法により国民全員が名字(姓)を持つことが義務化された。同12条では妻は夫の姓を用いると定められていたが2003年にタイの憲法裁判所は「夫の姓を名乗るとする条項は違憲である」との判決[8]を出し、2005年に同12条が改正された。現行の同12条では夫婦の姓は合意によりいずれの姓を選ぶことができ、またそれぞれの旧姓を選ぶことも可能となった[9]

人名」、「インド人の名前」、「タイの人名」も参照のこと。


[編集] 日本の近代以降の氏名制度

  • 江戸時代:庶民の氏の使用は不許可
    • 士分以外の者は氏(苗字)を公式に使用することが認められなかった。
  • 1870年10月13日明治3年9月19日 太政官布告:氏の使用が許可
    • 平民でも氏を使用してもよいとされる。
  • 1872年3月9日(明治5年2月1日 戸籍法施行:壬申戸籍
    • 全国統一の中央集権政治を実現しようとするなかで、国内総人口を把握するものとして戸籍法を制定し、世帯を単位とする住所や身分登録が行われた。明治5年の干支が壬申だったので明治の戸籍を壬申戸籍と呼ぶ。
  • 1875年(明治8年)2月13日 太政官布告:氏の使用が義務化
    • 氏の使用を許可したものの、平民は「余計に税金を徴収されるのでは」などと警戒し氏の使用が広まらなかった。そのため、氏の使用が義務づけられる(兵籍取調べの必要上、軍から要求されたものといわれている。出典:法務省HP 我が国における氏の制度の変遷より)。
  • 1876年(明治9年)3月17日 太政官指令:夫婦別氏の制定
    • 婚姻後の妻の氏は「所生ノ氏」(=実家の氏)と、国民全員に夫婦別氏を定めた。これは氏(氏族・家系名)を採用し、名字(家族、親族名)を採用しなかったため。しかし名字は持つが氏は持たなかった庶民は、妻が夫の名字を称していた。
  • 1898年(明治31年) (旧)民法成立:夫婦同氏の制定
    • 明治民法では家制度(または戸主制度または家父長制など)を導入し、戸籍は家を示すものとされた。婚姻その他身分行為は戸籍上の届出を形式的成立要件とした。明治民法788条では「妻は婚姻によりて夫の家に入る」と定められ、夫婦が家を同じくすれば氏を同じくすることとされた。明治の家制度では婚姻には戸主の同意を必要とするなど、戸主の権限が強かった。
  • 1947年昭和22年) 改正民法成立:夫婦同氏制の残留
    • 戦後、明治の家制度は廃止された。婚姻は(かつて戸主の同意を必要としていたものが)当事者の同意があれば可能となった(憲法24条)。夫婦の氏は夫または妻のもの、いずれかを選べるようになったが夫婦同氏の原則は残った(民法750条)。
  • 1948年(昭和23年) 改正戸籍法施行:現行戸籍の開始
    • 全面的に改正された戸籍法が施行となる。戸籍は戸主と家族を記載する家の登録から、個人の登録へと変わった。ただし編成基準を一組の夫婦と氏を同じくする子(戸籍法6条)とした。

[編集] 別姓か別氏か

法律用語としては夫婦別とするべきである。

家制度廃止後の氏姓を表す法律用語を如何にすべきか戦後民法成立過程では家制度を髣髴させる「」の使用を忌避し家という語感の薄い「」の使用を勧奨する動きもあったが、結局従来からの氏を法律用語とすることに落ち着いた。しかし一般には用語としての氏と姓の使い分けは曖昧なままになり、同様に夫婦別姓と夫婦別氏も並存が見られた。

その後、1980年代後半から現在まで続いている夫婦別姓制度導入を推進する市民運動の中で積極的に夫婦別と呼ぶようになりやがて慣用化した。現在は国会やマスコミでも広く夫婦別姓と言われており、その反面夫婦別氏と言われることは司法や法学など専門的な分野に限られている。

[編集] 脚注

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  1. ^ 1996年2月26日 法制審議会総会決定 民法の一部を改正する法律案要綱
  2. ^ 政策INDEX2009選択的夫婦別姓制度の導入へ 民法の一部改正案を参議院に提出 2008/04/22選択的夫婦別姓制度の導入へ 民法の一部改正案を参議院に提出 2009/04/24。一方民主公約、夫婦別姓明記見送り asahi.com
  3. ^ 夫婦別姓 家族の絆を壊しかねない
  4. ^ 「第4回 家族とライフスタイルに関する研究会 議事概要」(内閣府 平成13年(2001年))
    「夫婦・子の姓に関する各国比較」
  5. ^ ジュリスト No.1336 2007.6.15 15頁
  6. ^ 2007年2月21日 衆議院内閣委員会
  7. ^ 床谷文雄「ドイツ家族法立法の現状と展望(1)」阪大法学44巻2・3号(1994年)399頁、富田哲「夫婦別姓の法的変遷--ドイツにおける立法化」(八朔社、1998年
  8. ^ Summary of the Constitutional Court Ruling No. 21/2546[1]
  9. ^ 第49回国連婦人の地位委員会 タイ代表の報告より[2]

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

[編集] 推進論、肯定論

[編集] 反対論、慎重論

[編集] 中立的資料

最終更新 2009年11月15日 (日) 03:14 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
【夫婦別姓】変更履歴

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