幽霊

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『月百姿』 『源氏夕顔巻』に描かれた 幽霊
1886年 月岡芳年

幽霊(ゆうれい)は、日本民間信仰の中で、人が死亡して、肉体から(たましい)が離れた後も、未練(みれん)や遺恨(いこん)を解くために、現世(うつしよ)に残り、生前の姿で幽か(かすか)に可視化したもの。

目次

[編集] 概要

日本の古神道(こしんとう)に由来する観念であり、本来の仏教にはあの世は無く来世という、いわゆる輪廻転生(りんねてんせい)をするので、特定される個人としての死はない。または、霊魂(れいこん)やの存在も認めていない。それらに類する概念は、インドから派生した仏教に、様々な時代や地域で後から付加されたもので、密教がその一例である。日本の場合は神仏習合(しんんぶつしゅうごう)の結果、日本独自に発展した仏教が多く見られることが、日本の民間信仰(みんかんしんこう)の説明に用いられる時に、誤解が発生する原因である。

また、現在の神社神道(じんじゃしんとう)も、格式や儀式や「人格神(・みこと)」に重きをおいて、様々なものをそぎ落としたので、日本の民間信仰(古神道)と乖離(かいり)している部分が多くある。

前提となる霊の信仰と世界観

古神道や神道(しんとう)において、祖霊信仰(それいしんこう・先祖崇拝)は根幹となる価値観の一つであり、死者の霊魂の存在の観念と共に縄文時代にはすでに発生していたといわれている。(たましい)や御霊(みたま)は重要な概念であり、御霊は分霊(ぶんれい)することも可能であるとしている。また荒御魂和御魂という魂の様相があり、それぞれ「荒ぶり、禍をもたらす魂」と、「和ぎり、福をもたらす魂」とされる。

世界観においては、現世(うつしよ)という現実世界と、神域や死後の世界としての天国理想郷や昼の世界とされる常世(とこよ)と、地獄黄泉の国や夜の世界とされる常夜(とこよ)という世界があるという考え方や、または現実世界の現世と、たんに神の世界であり死後の世界である幽世(かくりよ)または常世といわれる神域や「あの世」に別れるという考えがある。

[編集] 類例・幽霊とその関わり

上記、概要の前提により「日本で伝承されてきた」幽霊とその他の類例を表記する。なお悪霊に分類される霊以外は、禍(わざわい)を齎(もたら)さない。

鳥山石燕今昔画図続百鬼』より「人魂」

現世

本来は、幽世(常世)に旅立って精霊や祖霊になるべきものが現世に残ったり、見えないもののはずの霊魂が、見えるという変化(へんげ)したので、お化けとも呼ばれる霊。

  • 人魂 - 御魂とは玉・珠でもあり、球体をしているとされる。本来は見えないものが、幽かに可視化したもの。正月(精霊・祖霊は年神の起源でもある)やの時期に帰ってきた祖霊(精霊・しょうろう)や、肉体を離れた直後の御魂などといわれる。
  • 死霊 - 現世に残る、死者の霊魂の全てをさす。また生霊の相対語としても使われる。

和御魂 - 辞書の大辞林などでは、悪霊に分類されていないため和御魂とした。

  • 亡霊 - 死後、肉体を離れた魂が、現世に残り、生前の姿で幽かに可視化したもの。何故そうなったのか客観からは解らない。(幽霊と亡霊の違いについては、世界観や霊魂の分類や意味から幾つかの説明があるので、詳しくは亡霊を参照。)
  • 幽霊 - 死後、肉体を離れた魂が、遺恨を解くため現世に残り、生前の姿で幽かに可視化したもの。何故そうなったのか理由がある。遺恨を解くことは、悪いことではないと解釈できる。

荒御魂

  • 悪霊 - 禍をもたらす霊魂のこと。
    • 怨霊 - 死後、肉体を離れた魂が、怨念から現世に残り、生前の姿で幽かに可視化し、禍をもたらすもの。
    • 生霊 - 生きている人の強い怨念から、魂の一部が分霊し、その人の姿で幽かに可視化し、禍をもたらすもの。

幽世(常世)

本来のあるべき姿の霊魂なので、お化けとは呼称されない霊。

  • 精霊(しょうりょう・しょうろう) - 常世・常夜(とこよ)へ旅立った霊魂で、お盆に帰ってきても、見ることはできない。(注意:「せいれい」と読んだときは日本以外の神霊の類のこと。若しくは文化人類学のアニミズム論で用いられる魂や霊魂や命や神の総称や一部を表す言葉)
  • 祖霊(それい)精霊のことでもあるが、精霊の内、あくまで子孫がいる者の霊を祖霊とする考えや、死後の時間経過や子孫の弔い(とむらい)のしかたにより、位付けされ、精霊から祖霊に果ては神に変わるとする考えがあり、以上においてはどちらも常世へ旅立った精霊のうち、子孫を持つ者だけが祖霊ということになる。
柳田國男によれば、神域や死後の国(古神道や神道の常世や幽世のことを指している)は遠い隔絶された別の世界ではなく、現世の様々な場所に重なるように存在し、現世に神々も霊魂も住まうという前提を提唱した上で、「縁故のない霊は精霊にならず、現世を彷徨う死霊になる」としながらも、直系の子孫がいなくとも、傍系や縁故者が弔えば、精霊ではないが祖霊になれるとして、「現世に彷徨う死霊のうち弔いを受ける霊」と「精霊」の総称を祖霊という考えがある。

[編集] 伝承のない霊の類とされる造語

その他、自然霊・守護霊・動物霊・背後霊・浮遊霊・地縛霊(地縛という言葉すら存在しない)などは、近年に作られた「造語」で、特定の利益誘導からともとれる、ごく狭い範囲の人々の考え(思想にすらならない)で、漫画などで流布された、流行廃りの風説の類であり、民俗学文化人類学などの、学問の机上にものらない、いい加減な言葉である。


[編集] 幽霊のカタチ

肉体はなく、実体ではないので、朧に見えたと考えられる。何故なら普通に見えれば、霊ではなく人にしか見えない、若しくは蘇生した人と考えられてしまう。

日本では、幽霊の描写として『乱れ髪に天冠(三角頭巾)、死装束の足がない女性』という、芝居やお化け屋敷などでの典型的な姿でイメージされることが多い。この「日本型幽霊」は、江戸期に浮世絵の題材として描かれてから定着したものである。河出書房から出版された『渡る世間は「間違い」だらけ』によると、歌舞伎の舞台「四谷怪談」の演出で幽霊の足を隠して登場したものをルーツとしている。一方、海外の幽霊は足があるものが多い。

「いくさ死には化けて出ない」との言い伝えもあるが、平家の落ち武者や大戦での戦死者のように、死んだときの姿のまま現れると言われる幽霊も多い。

[編集] 足のない幽霊

「足のない幽霊を最初に書いたのは円山応挙」と言われることがあるがこれは俗説で、実際には、応挙誕生以前の1673年に描かれた「花山院きさきあらそひ」という浄瑠璃本の挿絵に、足のない幽霊の絵が描かれている。これが現存する最古の足のない幽霊の絵と言われており、この時代にはすでに「幽霊=足がない」という概念があったようである。ただし、応挙の幽霊画は江戸時代から有名であったらしく、その後多くの画家に影響を与えたといわれている。

[編集] 文化・芸術

江戸時代以前から怪談という形で伝承され、江戸時代にはには幽霊話が大流行し、雨月物語牡丹燈籠四谷怪談などの名作が作られ、また講談落語草双紙浮世絵で描かれ花開き、現在も題材として古典から新作の題材として笑話小説などに用いられ、様々な媒体で登紹介される。

1825年7月26日に江戸の中村座という芝居小屋で「東海道四谷怪談」が初公演された事に因んで、7月26日は「幽霊の日」となっている。

[編集] 幽霊の付く言葉・人

生物

  • ユウレイイカ:イカの一種。発光器があり、かなり強い光を出す。
  • ユウレイグモ:蛛形綱クモ目ユウレイグモ科の節足動物の総称。薄暗いところを好み、カラダが白っぽく、やせて華奢な姿をしていることから。
  • ユウレイタケ:ギンリョウソウの別名。

幽霊に直接係わる若しくは模したもの。

  • 幽霊の日:7月26日鶴屋南北東海道四谷怪談が初演された文政8年(1825)7月26日を記念する日。
  • 幽霊坂 - 坂の地名。由来は諸説あるが、「幽霊が出た、出そうだ」とされ命名された。
  • 幽霊飴』 - 日本で伝承される民話で、『子育て幽霊』ともいわれる。
  • 内弁慶外幽霊 - 内弁慶の外幽霊ともいい、外面と内面の差が激しい性格のたとえ。
  • 幽霊塔』 - 日本で幾つか翻訳された塔を舞台とした外国の推理小説。
  • 幽霊船 - 日本やヨーロッパに伝承される幽霊だけが、乗船している船。
諸国因果物語より男女の船幽霊[1]

実体のないことの例え(幽霊は肉体がないので)

人名

[編集] 脚注

  1. ^ 『西鶴と浮世草子研究 第二号 特集[怪異]』付録(1)怪異物挿絵大全 近藤瑞木・佐伯孝弘編 笠間書院
  2. ^ http://www5.atwiki.jp/tetsu-ita/pages/53.html#id_35812c5c
  3. ^ http://www5.atwiki.jp/tetsu-ita/pages/53.html#id_485f9944

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ
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最終更新 2009年11月20日 (金) 07:25 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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