技術士
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技術士(ぎじゅつし、Professional Engineer)は、技術士法(昭和58年4月27日法律第25号)に基づく日本の国家資格である。有資格者は技術士の称号を使用して、登録した技術部門の技術業務を行える。
技術士補(ぎじゅつしほ、Associate Professional Engineer)は、将来技術士となる人材の育成を目的とする、技術士法に基づく日本の国家資格である。有資格者は技術士の指導の下で、技術士補の称号を使用して、技術士を補佐する技術業務を行える。
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[編集] 技術士の定義
技術士法第2条は、技術士を以下のように定義している。
- 「技術士」とは、第32条第1項の登録を受け、技術士の名称を用いて、科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価またはこれらに関する指導の業務を行う者をいう。
- ただし「他の法律においてその業務を行うことが制限されている業務を除く」と規定されているため、建設部門及びその関連部門の例では建築基準法・建築士法による建築・建築設備における設計業務などは建築士の独占業務なので、行うことができない。
- 「技術士補」とは、技術士となるのに必要な技能を修習するため、第32条第2項の登録を受け、技術士補の名称を用いて、前項に規定する業務について技術士を補助する者を言う。
[編集] 技術士登録
技術士とは登録技術者(レジスタード・エンジニア)制度であって、試験に合格しただけでは技術士ではない。技術士法32条は、所轄官庁である文部科学省へ以下の事項を登録することを求めている。
- 氏名
- 生年月日
- 事務所の名称及び所在地
- 試験に合格した技術部門
- 技術士補の場合は指導技術士の氏名、事務所の名称および所在地など
技術士の業務に違反すると、技術士登録を取り消されることがある。
[編集] 名称独占資格
技術士法第57条は、技術士(補)またはそれに類似する名称を、技術士(補)でない者が使用することを禁じている。 以下の行為はすべて技術士法違反であり処罰される。
- 技術士(補)登録をしていない者や登録を取り消された者が技術士(補)を名乗る
- 技術士(補)登録をした者が、登録したものとは異なる技術部門について技術士(補)を名乗る
なお、技術士の英文名称はProfessional Engineer、技術士補の英文名称はAssociate Professional Engineerとされているが、コンサルティングエンジニアを職業とする者が広告、名刺などにおいて、コンサルティングエンジニア(Consulting Engineer, CE)を名乗ることに問題はないものとされる。
[編集] 技術士の業務
法律上は技術士の業務が「計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務」と広く定義されており、技術士登録すれば、登録した専門分野に関する技術的な業務をすべて技術士として行うことができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている業務(建設部門及び関連部門の例では、建築士の独占業務である建築物に関する設計、工事監理その他の業務)は行えない。実際に技術士に期待されている役割は「指導の業務」すなわち技術コンサルタント(コンサルティング・エンジニア)としての活躍とで、技術士試験も実務者レベルの試験ではなく、指導者に必要な高度な技術力とコンサルタントに必要な業務実績とコミュニケーション能力を評価する内容となっている。合格者は技術士事務所を開業して独立する者と、企業内技術士としてサラリーマンを続ける者とに分かれるが、両者共に技術コンサルタントや指導技術者としての職務を果たすことを目指すとされる。
[編集] 技術士の権利と義務
技術士登録をすると、技術士の名称を使用する権利を得る反面、以下の義務を負う。このような権利・義務があるという点で、技術力を測定する資格とは性質が異なる。
- (技術士法 第四十四条 信用失墜行為の禁止)
- 技術士又は技術士補は、技術士若しくは技術士補の信用を傷つけ、又は技術士及び技術士補全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
- (技術士法 第四十五条 技術士等の秘密保持義務)
- 第四十五条 技術士又は技術士補は、正当の理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなつた後においても、同様とする。
- (技術士法 第四十五条の二 技術士等の公益確保の責務)
- 技術士又は技術士補は、その業務を行うに当たつては、公共の安全、環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなければならない。
- (技術士法 第四十六条 技術士の名称表示の場合の義務)
- 技術士は、その業務に関して技術士の名称を表示するときは、その登録を受けた技術部門を明示してするものとし、登録を受けていない技術部門を表示してはならない。
- (技術士法 第四十七条の二 技術士の資質向上の責務)
- 技術士は、常に、その業務に関して有する知識及び技能の水準を向上させ、その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。
秘密保持義務に違反すると、技術士登録を取り消されるだけでなく、刑事罰に処せられるという点は大きい。弁護士・建築士のように独占業務があれば資格取得へのモチベーションが高まるので、自然と認知度が上がるのではないか、という意見である。実際、事実上の業務独占資格となっている土木建築業界では、技術士の認知度は割合高いと言われている。技術士でなくても技術コンサルタントにはなれるし、非技術士の技術コンサルタントにも優秀な人は多いが、非技術士の技術コンサルタントが秘密を漏洩しても民事責任を問われるのみで刑事罰を課されることはない。 他の国家資格でも守秘義務に対する刑事責任を定めたものはあるが、それらの中でも技術士の守秘義務は特に厳しい罰則が規定されている。
- (技術士法 第五十九条)
- 第四十五条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 (第四十五条は守秘義務)
- (弁理士法 第八十条)
- 第三十条又は第七十七条の規定に違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。(第三十条、第七十七条は守秘義務)
- (刑法 第百三十四条)
- 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
[編集] 技術士の技術部門
他の技術系資格が専門分野ごとに制度を設けているのに対して、技術士は科学技術の全領域に渡る分野をカバーしている。現在、以下の21の技術部門が定義されている。
- 技術士機械部門
- 技術士船舶・海洋部門
- 技術士航空・宇宙部門
- 技術士電気電子部門
- 技術士化学部門
- 技術士繊維部門
- 技術士金属部門
- 技術士資源工学部門
- 技術士建設部門
- 技術士上下水道部門
- 技術士衛生工学部門
- 技術士農業部門
- 技術士森林部門
- 技術士水産部門
- 技術士経営工学部門
- 技術士情報工学部門
- 技術士応用理学部門
- 技術士生物工学部門
- 技術士環境部門
- 技術士原子力・放射線部門
- 技術士総合技術監理部門
[編集] 技術士試験の内容
技術士試験は、技術士法の指定試験機関である日本技術士会が実施している。試験の内容はおおむね毎年同じだが、年度ごとに発表されるので、文部科学省や日本技術士会のウェブサイトで常に最新の情報を入手すること。
[編集] 第一次試験
第一次試験に合格すると、技術士補登録をする資格が得られる。つまり第一次試験は技術士補試験を兼ねている。技術士会では第一次試験合格者を「修習技術者」と呼んでいる。
第一次試験には受験資格はなく、誰もが受験できる。
第一次試験の試験科目は以下の通り。
- 共通科目
- 大学理科系教養課程程度の理科系科目の知識(大学理科系学部の卒業者および指定国家資格保有者は免除)
- 適性科目
- 技術士法と技術倫理に関する出題
- 基礎科目
- 科学技術全般にわたる基礎知識
- 専門科目
- 受験者が選択する技術部門の専門知識(同学部の専門教育程度)
[編集] JABEE認定
大学や高専などの教育機関の、日本技術者教育認定機構 (JABEE) が認定した教育課程を終了した者は、第一次試験の合格者と同等(つまり修習技術者)であるとみなされる。
[編集] 第二次試験
第二次試験に合格すると、技術士登録をする資格が得られる。
第二次試験を受験するには、修習技術者(技術士一次試験合格もしくはJABEE認定課程の修了)であることに加えて、次のいずれかの条件を満たすことが必要である。
- 技術士補として4年間(総合技術監理部門は7年間)以上、技術士を補助する業務に就いた
- 第一次試験に合格してから4年間(総合技術監理部門は7年間)以上、監督者の下で「科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、評価又はこれらに関する指導の業務」に就いた
- 7年間(総合技術監理部門は10年間)以上「科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、評価又はこれらに関する指導の業務」に就いた
なお理工系の大学院を修了している場合、その期間のうち最大2年を、上記の業務期間から減じられる。つまり技術士補登録する道を選択すれば、最速2年の実務経験で受験が可能になる。
平成19年度以降、技術士二次試験は、論文式の筆記試験と、あらかじめ提出される技術的体験論文を元にした面接形式の口答試験の2段階で構成される。試験科目は以下の通り。
- 筆記試験(総合技術監理部門以外)
- 必須科目
- 当該技術部門の一般的専門的知識
- 選択科目
- 専門とする事項についての専門知識の深さ、技術的体験及び応用能力
- 当該選択科目についての一般的専門知識
- 口頭試験
- 筆記試験合格者のみ実施。技術士としての適性と専門的応用能力などについて面接。
二次試験の合格率は年度や部門、部門内の選択科目によって異なり、建設部門では平均して15%程度となっている。平成16年度の建設部門(総合技術監理部門を除く)の場合、実際に受験した7000人強のうち、1200人強が筆記試験に合格し、そのうち1100人強が口答試験に合格している。
ただし平成19年度の制度改革によりこの状況に変化が現れている。具体的には筆記試験の合格率が多少高まり、口頭試験での合格率が大幅に落ちているのである。
総合技術監理部門はその他の部門よりも合格率が高い傾向にあり、30%程度の合格率となっている。ただし他の部門で技術士登録を行ったものが多いからこのような合格率になるとも言われる。
平成18年度までの技術士二次試験の出題形式は、総合技術監理部門を除くと、概ね以下のようになっている。
- 選択科目1-1(経験論文)
- 技術士としてふさわしいと思われる自己の業績について3600字の論文にまとめる
- 選択科目1-2(選択記述問題)
- 出題される課題の中から選択し、3600字の論文にまとめる
- 必須科目2-1(択一問題)
- 5択式の問題20問から15問を選択して回答する
- 必須科目2-2(記述問題)
- 出題される課題の中から選択し、1800字の論文にまとめる
以上を、午前3時間、午後4時間の試験時間で回答する。平成13年度から択一式問題が導入されて論文の記述量は多少削減されたが、論文のトライアスロンと呼ばれるハードな論述式試験であることには変わりがなく、合格率も15%前後で推移している。
平成19年度から二次試験の方式は大幅に変更され択一問題はなくなった。
- 選択科目に関する専門知識と応用能力(記述問題)3600字 3時間30分
- 技術部門全般にわたる論理的考察力と課題解決能力(記述問題)1800字 2時間30分
なお経験論文は筆記試験合格後の面接試験前に提出するように変更され、ハードな記述式試験では無くなった。
このように筆記試験では、一般論文・専門論文・経験論文の三種類の論文を書く必要があるが、このうち経験論文については、他人の業績論文の丸暗記でも回答できるではないかという批判があり、改正されるにいたる。
改正について文部科学省・日本技術士会は技術士資格の性格をCEからPEへと大きく転換させた。そのために二次試験(筆記)において、択一をやめて論文の記述量削減を行い従来の経験論文の内容を二次試験(口頭)に行う事で、業績より知識や応用能力を問うものへと移行させている。この制度変更に対しては、試験は試験の本質とは関係なく経験を問うものであるべき、資格の権威を失墜させる行為、独占業務がない技術士は試験の難しさに価値があり価値が低下する、年配の技術士は技術キャッチアップや技術力の担保にならないという意見や、逆に二次試験(筆記)においてより応用能力を問う問題になっていることや、二次試験(口頭)が重視された事で資質の向上が期待できるといった様々な意見がある。ほか制度改革に伴う技術士のレベルダウンを補償するため、総合技術監理部門が創設されたというごく少数の見方もある。日本の技術士制度は、米国のPEやイギリスのChartered Engineer (CE) の制度を参考に創設された。欧米諸国の制度は技術者を中立的な立場に置き、技術者として最低限クリアしなければならない試験という位置付けである。現実には技術士は企業に属して業務独占資格にしてはいないので、キャリアの到達点の一つと見なされてしまったようである。 アメリカの登録技術者制度であるProfessional Engineer (PE) の認知度は本国ではずっと高いのは、日本の測量士のような専門分野ごとの技術系国家資格の形式を米国では採用せずそれらの役割をPEが果たし、他方日本では土木建築業界の建築士・測量士や、IT業界の情報処理技術者などがあり、挑戦するメリットは乏しい、という意見がある。
[編集] 試験の特徴
他の国家試験制度と比較して、以下の特徴を有している。
- 実務経験を要する
- 弁護士・公認会計士一次試験(二次試験は実務経験が必要)が実務経験を有さずに受験可能な点と異なり、二次試験の受験に数年の実務経験を必要とする。
- 口頭試験に不合格の場合
- 司法試験や建築士試験とは異なり、口頭試験に不合格した場合の翌年の筆記試験免除などの救済措置は無く、筆記試験から再スタートとなる。
[編集] 技術士制度の問題点
[編集] 認知度が低い
これには以下のような理由が挙げられているようである。
- 有資格者数が少なすぎる
- 日本技術士会もこの説を支持しており、有資格者を増やすための制度改革を進めている。これに対しては、例えば弁護士は技術士よりも数が少ないが認知度は高い、という反論がある。
- 一級建築士との関連(建設部門及び関連部門)
- 科学技術分野で最高峰の資格であるとされながら、建築関連の業務は建築士の独占業務である。建築士事務所勤務ではない技術士等が建築・建築設備等の設計・監理行った場合、開設者は懲役1年以下 罰金100万円以下の重罪とされており、元請設計事務所も平成20年12月より業務停止処分となる。本当に高度技術者なのかという意味では、国土交通省は「建築設備設計に関し、技術士は一級建築士より高度な技術者とは認められない」とし、建築・建築設備の科学技術の研究者としては認められるが、実務技術者として一級建築士より高度な技術者としては認められていないとされた。
- 博士号と並ぶ資格
- 文部科学省(旧科学技術庁の)所管資格であることで、建築士の様な実務者としての業務独占資格ではない。あくまでも称号資格である。学術的な資格との関連性では、例えば高等教育機関の教官や研究者の求人においては、技術士と工学博士が同程度の資格と位置づけられている事例が見受けられる(独立行政法人科学技術振興機構の研究者人材データベースにて実例を検索可能)。
[編集] 制度改革による問題
技術士制度の改革により、平成12年度以前の合格者と平成13年度以降の合格者、またほか部門と総合管理部門との取り扱いが試験制度において異なる。しかし、資格上はみな「技術士」である。平成12年度以前は合格すること自体が試験における記述量において非常に困難な資格であったが、平成13年度以降はこれが緩和されているという意見がある。
[編集] 特定技術分野への偏り
技術士制度は科学技術の全分野を網羅する制度であるが、実際の有資格者数は建設部門が5割を占めており、これに関連の深い上下水道部門や応用理学部門(地質)を含めると6割に達する。この分野では建設コンサルタント登録の際に条件とされるなど事実上の業務独占資格となっている、さらに官公庁の土木建設系の技官、都道府県庁に所属する技師らが比較的多く資格取得する(建設部門では毎年の資格取得者割合は官と民が半々)。
[編集] 社会的地位が低い
技術士は収入面ではほとんどが企業又は国あるいは地方公務員として勤務してサラリーを受けるものが大半である。中には高い収入を得ている独立技術士もいるが、そのような人は資格で仕事を得ているのではなく、実力を持つからであるという意見がある。
[編集] 高齢化
より若い技術士を育成することを狙ったのが技術士補の制度で、技術士の下に付けて徒弟制度により密度の高い業務経験を積ませることを狙ったが、技術士の少ない部門では指導技術士を見つけるのは難しく、指導技術士と所属機関が異なる場合、
- 技術士の仕事を手伝う「副業」をする
- 営利企業であればの仕事を社外の技術士に出す
ことも考えられ、技術士補制度を活用することは現実には難しいと考えられた。今日では2次試験の受験に必要な業務経験年数を短縮できるようにさまざまな制度改革が行われている。
[編集] 外部リンク
- 技術士分科会 文部科学省 科学技術・学術審議会の技術士分科会のページ
- 社団法人日本技術士会 技術士法に規定された、技術士の全国団体

