投資銀行
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投資銀行(とうしぎんこう;investment bank)とは、顧客企業の有価証券発行による資本市場からの資金調達をサポートし、合併や買収などの財務戦略でのアドバイスを行う金融機関である。個人向け業務は行わない。
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[編集] 概要
「投資銀行」という用語は「investment bank」または「investment banker」を訳したものである[1]。
「銀行」という言葉が入っているため、いわゆる「銀行」の一種とのイメージを持たれがちであるが、預貸業務を行うという意味での「銀行」ではない。米国の投資銀行は、グラス・スティーガル法(1933年銀行法)によって、預金の受け入れや、商業貸付を行う預貸業務を行うことを禁止されている[2]。「銀行」という言葉が入ってしまったのは、かつて、証券の引き受け、受託資産の運用、企業の設立・合併等の仲介に加えて、企業財務に関するほとんど全ての業務を取り仕切っていたことがあり、そこに商業貸付も含まれていたためだろう[3]、とも言われる。
この名称は、個人などから預かった預金を元手に企業に融資を行う商業銀行と区別するための用語である。
商業銀行はその収益の大部分を主に企業に融資することにより発生する利息に依るのに対し、投資銀行の収益は株式や債券の資本市場における発行時に発行額に応じて徴収する手数料に依ることが特徴である。
法人向け証券会社にイメージが近い。すなわち、主要業務から考えれば、日本の証券会社に相当しており、実際に「証券会社」と呼ばれることもある[4]。ただし、日本の証券会社の業務が株式の委託売買に偏っているのに対し、米国投資銀行の業務は、引受業務、M&A、仲介業務、トレーディング業務を中核とし、資産管理業務、年金ビジネス等まで多角化が進んでいる。元来は純粋な商業銀行であった、大手銀行シティー・グループやJPモルガン・チェースも度重なる投資銀行の買収を通じて、現在では投資銀行業務の各種リーグテーブルで上位の位置を占める。
業務の性格上、業界における存在感は大きいが、バランスシート的にはほとんど資産を有さないので、上場している外国の投資銀行は、巨大なバランスシートを有する商業銀行の買収の対象になってきた(例:UBSによるディロン・リードとペインウェバーの買収、クレディ・スイスによるファースト・ボストンの買収など)。
投資銀行が行う業務は「投資銀行業務(investment banking)」と呼ばれる。「投資銀行業務」という用語は、状況に応じて、伝統的な引き受け業務やM&A仲介業務に限定するものから、広範囲の金融サービスまで、様々な用いられ方をしている[5]。
[編集] 投資銀行業務を行う人物
投資銀行業務は、業務の性格上、成果がそれを行う個人の能力に左右される側面も強く、スター・プレーヤーが生まれる傾向がある。(いわゆる「銀行」が組織によるストック管理に重点が置かれ、個人が目立たないのと対照的である)。仕事の報酬体系は、利益の一定割合とされることが多く、結果として報酬が高くなることが多く、それが話題となることも少なくない[6]。投資銀行業務はひとつの仕事・職として認知されており[1]、法人向け融資やM&A業務の経験者からの採用も行われている[2]。
[編集] 風土・報酬水準
日本企業においては、出身大学によって人物評価をしたり出世が早かったりということがあるが、一般に外資系投資銀行の場合、評価は入社後の成績のみによって決まるため、どこの大学出身(但し、書類選考の段階で東大・京大、ケンブリッジ、オックスフォードやハーバード大学等海外名門大学の比重が多くなり、結果的に所謂一流大学出身者が多い)であっても、簡単に解雇されることが多い。
そこそこの有名大学出身の従業員で固まっているのは、あくまで「利益をもたらすことの出来ると会社が判断した社員」が結果としてそれらの大学出身だったということに過ぎないとされる。
また新卒採用もあるが、日本の場合、基本的に外資系金融機関は中途採用が主流で、MBA採用を除くと、大手邦銀・大手証券、若しくは他の外資系金融機関等で秀でた業績を有した者のみを取る、中途採用がメインストリームとなっている。
近年よく話題となるフロント部門(バック・ミドルオフィスを除く)の報酬水準は、年による変動があるものの他の外資系金融機関同様基本的に米国水準、若しくは世界水準である。一般にアナリスト(新卒~3年目)で1000~2000万、アソシエイト(4年~7、8年目)で1000万後半~4000万、VC(8年目以降~)で3000万~1億円程度、MDで5000万~数億円程度とされる(括弧内の年数は実務経験年数。)通常、職位が上がるにつれ高度な対人折衝能力が要求(e.g. 大手企業社長や取締役への助言業務)される投資銀行サイドでは、海外名門大学でのMBA取得者や弁護士・会計士資格取得後数年間の実務経験を積んでからアソシエイトになるバンカーが多いため、マーケットサイドのバンカーよりは平均年齢は数年高い。逆に、短期売買が主体で瞬時の的確な判断能力が要求されるトレーダー・ディーラー等マーケットサイドでは若くしてVC、MDクラスになるバンカーがいる一方、30歳前半でリタイアするバンカーも多く、退職年齢も早くなる傾向がある。
また、ゴールドマン・サックス等トップクラスの外資系投資銀行バンカーが次のキャリアステップ先としてとして好む、外資系PEファンドの給与水準はこの水準にキャリードインタレストを加えた金額となる。一般に投資ファンドは弁護士事務所同様、投資銀行ほど職位が細かく分かれていないケースが多く、アソシエイト(投資銀行のVCクラス~12、3年目)とディレクター(10数年目以降)、パートナー(シニア層)で構成されるところが多い。アソシエイトとパートナーのみの投資ファンドもある。
[編集] 投資銀行業務
「投資銀行業務(investment banking)」は、概ね以下のような使われ方をしている。[7]
- 1. 証券発行市場における引き受け業務およびM&A仲介業務
- 2. 上記の1に、証券流通市場におけるトレーディング業務を加えたもの
- 3. 上記の2にベンチャーキャピタル業務やファンド運用等を加えた、広く資本市場活動を指すもの
- 4. 上記の3に加えて、リテール顧客に多雨する証券や保険商品の販売、不動産仲介等を含むもの。
投資銀行の具体的業務は、顧客企業に対して上述の通り有価証券の発行による資本市場からの資金調達、M&Aについての助言を行なう他、財務に関る部分では各種保有資産の流動化による資金調達(不動産やローン債権の証券化など)、金利や為替等の金融派生商品を用いた財務リスクヘッジがあり、極めて多岐に渡る。「投資銀行業務」とは呼べないものの投資銀行が手がけるビジネスとしては、顧客あるいは自己勘定のための有価証券や金融派生商品のトレーディング業務が挙げられる。
その中でも財務アドバイザリー業務、企業再生ビジネス等は金融機関以外からの進出も目立ち始めている。
[編集] 引受業務
この業務は元々は投資銀行にとって事業の核となってきた業務である。 引受業務は証券市場における業務。証券の分売のために、証券発行者から証券を購入することや、発行者のために証券の分売を引き受けること。
[編集] M&A仲介業務
M&A仲介業務も投資銀行の中核業務の一つである。投資銀行は、企業におけるM&Aの必要性を探り出し、買収対象または売却先の選定、価格設定、交渉、契約書類作成のための助言、資金のアレンジ等を行っている。企業買収からの防衛に関するアドバイスや、防衛手段としてのリストラクチャリングや資本構成の変更といったことも含まれる。M&A仲介業務ではアドバイスそれ自体に対して手数料が設定され、支払われる。企業買収を行う側の企業と、買収対象とされる企業に双方に別々の投資銀行がアドバイザーとしてつくこともある[8]という。
[編集] トレーディング業務
トレーディング業務は証券流通市場における業務である。トレーディング業務は、ブローカレッジ業務のように証券の売買の取次ぎを行うものではなく、投資銀行自体が当事者となって証券の売買を行うものである。
[編集] 米国
投資銀行発祥の地であるアメリカでは、ホールセール専業の投資銀行として設立されたゴールドマン・サックス、証券業務から投資銀行業務に進出したメリルリンチなどが有名。なお、アメリカでは1933年に成立したグラス・スティーガル法により商業銀行業務と投資銀行業務が明確に分離されていた(銀証分離とも呼ばれる)。
モルガン・スタンレーはグラス・スティーガル法成立時に商業銀行となったJPモルガンと袂を分かって成立している。しかしながら、1980年代以降の規制緩和の中でグラス・スティーガル法の銀証分離規定も緩和されていき、バンク・オブ・アメリカやJPモルガンが証券子会社を設立することにより投資銀行業務に進出するなど死文化している。しかし、銀証分離規定の完全な撤廃も幾度も議論になっているが未だに正式に可決されていない。
前述の通り、投資銀行は基本的に顧客の資金調達を支援し、財務戦略を助言するのが本業であり、通常自らポジションを取って投融資を行うことはなかった。しかし、銀行系証券会社が顧客企業の企業買収時に銀行融資による買収資金の供与することによりM&Aでのシェアを高めるにつれ、旧来の投資銀行も競争戦略上自らポジションを取って買収資金を供与する事例が増えており、投資銀行と商業銀行の境界が薄れてきている。
近年の決算を見ると投資銀行部門の収益は、投資銀行全体の収益に占める割合は低い。ゴールドマン・サックスの2006年11月決算では純利益の15%、モルガン・スタンレーの2006年11月決算では同14%を占めるにすぎない。いずれの会社もトレーディング部門の収益貢献度が非常に高い。このため、トレーディング部門の社員は収益貢献度の低い投資銀行部門を卑下する傾向があり、近年の経営陣もトレーディング部門の出身者が昇進する傾向が見られる。
また、日本ではバンカーと言えばいわゆる銀行員を指す言葉という認識が多いが、米国でバンカーと言えば投資銀行の投資銀行部門で働く人間を指す言葉という認識が多い。
[編集] 欧州
欧州ではスイス系のUBSやクレディ・スイス、フランス系のBNPパリバ、イギリス系のHSBC(香港上海銀行)、ドイツ系のドイツ銀行などが有名。しかし、欧州にはアメリカのグラス・スティーガル法のような銀証分離を規定する法律がなかったことから、上記の大手金融機関は1つの法人が商業銀行業務と証券業務の双方の営業活動を展開しており、商業銀行、投資銀行あるいは証券会社ではなくユニバーサルバンクと呼ばれることもある。投資銀行が利益の大部分を占めている金融機関が増えてきている。
[編集] 日本
日本において投資銀行という名称が広く知れ渡るようになったのは、1990年代以降ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーのような米系投資銀行が高度な金融技術を武器に複雑な合併案件や巨額の資金調達の財務アドバイザーに指名されるようになってからである。
前述の通り、日本では野村證券、大和証券、日興證券などの証券会社が主に投資銀行業務を担っていたが、それらの証券会社はメリルリンチのように個人向け有価証券売買の仲買業務の割合が高かった。法人向けの財務アドバイザリー業務などの割合が小さかったことから、証券会社は狭義の投資銀行ではないという意見もあった。
しかし、資本市場の国際化や規制緩和に伴って、大和証券と住友銀行が合弁で大和証券SBCM(現大和証券SMBC)を設立したり、当時の日興證券とトラベラーズグループ(後にシティコープと統合してシティグループとなる)の合弁で同じく日興ソロモンスミスバーニー証券(現・日興シティグループ証券)を設立するなどホールセール専業の本格的投資銀行が出現した。
また銀行系証券会社では、2000年に当時みずほフィナンシャルグループ傘下だった第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行(2002年に3行は分割・合併し、みずほ銀行、みずほコーポレート銀行となった)のそれぞれの証券子会社が合併したみずほ証券が法人に特化した営業を行ったり、2005年に三菱証券とUFJつばさ証券が合併した三菱UFJ証券が投資銀行ビジネスを拡大・注力するなど、日本でも狭義の投資銀行という業態が活躍するようになっている。
日本の法人向け銀行(日本興業銀行や日本長期信用銀行(現・新生銀行)など)は、事業の大部分を法人への融資に頼っており、投資銀行業務を行なっているとは言いがたかった。しかしながら、企業の負債圧縮が進行し銀行融資に対する需要がなくなっていく中、みずほコーポレート銀行、みずほ証券は資産流動化や財務アドバイザリー業務などの投資銀行業務を積極的に手がけるようになり、みずほFGの利益の9割近くをたたきだしている。しかし、欧米の金融機関と比べるとまだまだ収益率が低く、リスクテイク能力・リスク管理能力の弱さを指摘されている。そして、昨今の金融危機において、欧米の金融機関の「見事な」リスクテイク能力・リスク管理能力が明らかになったことは記憶に新しい。
日本でもアメリカのグラス・スティーガル法と同様に証券取引法第65条が銀証分離を規定していた。しかし、アメリカと同様に緩和され、銀行子会社の証券業務参入が認められた。それから、みずほFGやMUFGなどの都市銀行を母体とする金融持株会社が出現し、商業銀行と投資銀行を傘下に置いている。
さらに、2006年度に証券取引法とその他の金融商品に関する法律を合わせて抜本改正された金融商品取引法(投資サービス法も内包)が可決された。これにより、銀証分離規定が廃止され、銀行による証券業務参入と証券会社による銀行業務参入が自由化された。そして、欧州型のユニバーサルバンクへの道が開かれることになり、国内メガバンクもドイツ銀行グループやUBSのような世界的な金融グループへの発展が現実味を増している。
[編集] 日本国内で投資銀行業務を行っている主な会社
Category:投資銀行を参照。
[編集] 出典
[編集] 関連項目
最終更新 2009年11月15日 (日) 08:09 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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