指紋

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手指の表皮にある指紋 蹄状紋が読み取れる

指紋(しもん)は先の皮膚にある汗腺の開口部が隆起した線(隆線)により出来る紋様。またはこの隆線の形作る模様が物体の表面に付着した跡。

目次

[編集] 概要

人や指ごとに「紋様」はすべて異なり、終生不変という特徴を持つ。[要出典]たとえ一卵性双生児であろうと合致する指紋はないため、近年のDNA型鑑定に比べてもより確度の高い鑑定方法といえる。

そのような特徴から指紋は犯罪捜査や個人認証として利用されている。日本では1908年(明治41年)の司法省 平沼騏一郎の報告書に基づいて、1911年(明治44年)に警視庁が指紋制度を採用した。

日本においては、江戸時代より「証文における署名捺印」と同じ意味を持つ物として拇印が採用されていた。即ち、日本は昔から「指紋による個人特定」を認識していたと言える。

ただし、『指紋は遺伝しない』という認識は誤りであり、実際には人種、居住地域毎に差がある。日本人に最も多いのは蹄状紋である。また歌舞伎症候群を発症している患者は蹄状紋増加等特徴的な指紋を有する[1]

[編集] 研究の歴史

イギリスの医者、植物学者、顕微鏡学者ネヘミヤ・グルーは1684年に指と手のひらの溝構造に関する最初の論文を発表した。1685年にはオランダの解剖学者ゴバルト・ビドローとイタリアの医者マルチェロ・マルピーギは溝構造の解剖学的特徴に関する本を出版した。1788年にドイツの解剖学者ヨハン・マイヤーは指紋が個人の識別に有用だと指摘した。1823年にプリスロー大学の解剖学者ヤン・プルキニェは9種の指紋のパターンについて議論したが、個人の識別には言及しなかった。1853年にドイツのゲオルグ・フォン・マイスナーは指紋と摩擦の関係について研究した。1880年に天文学者ジョン・ハーシェルの息子ウィリアム・ハーシェルはインド総督府に在籍中に世界で初めて指紋の採取を行った。

イギリス人のヘンリー・フォールズ (Henry Faulds) は、1880年イギリスの科学雑誌ネイチャーに、指紋に関する研究論文を発表した。フォールズは宣教師として1874年に来日し、現在の東京都中央区築地に居を構え、キリスト教の布教を行うと共に健康社(現在の聖路加国際病院)という医院を開設し医療活動に従事した医師でもあった。

彼は日本人が拇印を利用して個人の同一性確認を行っている事に興味を持った。また1877年にモース博士により発見された大森貝塚から出土した数千年前の土器に付着した古代人の指紋が現代人のものと変わらない事に感銘を受け、指紋の研究を始めたといわれている。フォールズの研究は日本滞在中に行われ、発表も日本からイギリスへ論文を発送して行われている。このためフォールズの居住地跡には彼の業績を記念して「指紋研究発祥之地」の記念碑が建てられている。

1892年にフランシス・ゴルトンは指紋の分析と識別に関する詳細な統計モデルを公表し、著書『フィンガープリント』で法科学に使用するよう提唱した。ゴルトンの指紋研究を学んだアルゼンチンの警官ファン・ブセティッチは初めて犯罪捜査に指紋を利用した。彼はフランシス・ロハスが犯行現場の血痕の中に残した指紋が彼女の物以外ではあり得ないと示し、ロハスは殺人で有罪となった。1897年にインドで初めて指紋を扱う部局が設置され、指紋が犯罪記録の管理に用いられた。1901年にはこの制度がスコットランドヤードにも持ち込まれ、イングランドとウェールズで指紋を用いた犯罪捜査が始まった。

[編集] 照合(鑑定)方法

比較する資料それぞれの内、まず遺留指紋等の対象となる指紋中の線が時計回りに見て始まっている点「開始点」と止まっている点「終止点」、線が分かれる点「分岐点」と線が交わる点「接合点」(これらを特徴点という)が鮮明に確認出来る部位を8点以上(8点で特定出来る確率は 10-8、即ち1億分の1[要出典])抽出する。 次に対象者の指掌紋から同じ部位の特徴点を抽出する。その後双方の特徴点の位置と方向を比較して合致点を確認する(尚、特徴点と特徴点の間を横切る隆線の数「リレーション」を加味する事で、より精度の高い鑑定が可能となる)。

刑事事件における、警察庁の判定基準は原則として12点以上の特徴点の合致である(但し、車輌や対象者の容姿等のビデオ記録や目撃情報がある場合には、これらの証拠との組み合わせにより、12点以下であっても立件するための証拠能力を持つ場合もある)。

近年のバイオメトリクスの発達により、指紋についてより多くのことが知られるようになったが、別人の指紋なのに同一指紋と認識してしまう率(誤受入率)は実測で10万分の1程度あり、「指紋が同じだから同一人物」とは言えなくなって来ている。

[編集] 種類

渦状紋
円形または渦巻状の線で構成されている指紋。日本人の約5割が渦状紋といわれる[2]
蹄状紋
右、もしくは左どちらかの方向にの形をして流れている指紋。日本人の約4割が蹄状紋といわれる[2]
右蹄状紋
左蹄状紋
弓状紋
弓やりになった線のみで構成されている指紋。一側より他方に向かい、逆流することがない。日本人には少ない。弓状紋はさらに次のように分類される。
単純弓状紋
突起弓状紋
変体紋
前記のいずれの分類にも属さない指紋。上下に流れる線で形作られているものや、点または短い線だけで形作られているもの等、極めて珍しい。いわゆる"指紋がない"指紋もこの種類に分類される。

[編集] 利用に伴う問題点

[編集] 人権問題

日本ではかつて外国人登録の際に指紋の押捺・提出が義務付けられており、これを人権侵害として反対する動きがあった。その一方で、人権侵害は表向きの理由で、実際には日本における北朝鮮の諜報活動を容易にするためではないかと疑われていた[3]。その後、1980年代から1990年代にかけて指紋押捺の義務は緩和されて行き、1999年には永住外国人だけでなく全ての外国人に対して撤廃された。

韓国では1968年北朝鮮の武装工作員らによる韓国大統領暗殺未遂事件の後、北朝鮮の諜報部員対策として、外国人は一律十指の指紋を登録する事を義務付けていたが、2003年康錦實(カングムシル)当時法務長官により、人権侵害の恐れがあるとして外国人登録法案の改定が進まれ、2004年に撤廃された。

一方アメリカ同時多発テロ事件以降、米国におけるUS-VISITを初めとして世界各国で、テロ対策として入国する外国人に対しての指紋採取、顔写真撮影などの義務化が進められている。これに対する反発は多く、最初この政策を取り入れたアメリカにブラジル政府が反発し、アメリカ人観光客に対して仕返し指紋採取を進めるなどの外交問題に発展するものまであった[4]。日本でも2007年11月20日から入国審査で指紋採取・顔写真撮影が義務化[5]し、初日には過去に不法滞在などで強制送還となった人物など5名が入国を認められなかった。一方、アムネスティなど人権団体からは反対の声も上がっている。

[編集] その他

  • 手相は指紋の研究以前より個人識別の指標とされ、専ら占いに用いられた。
  • 指紋で運勢を占う指紋占いという占いがある[6]
  • 台湾にて、5世代にわたって両手足の指紋が全く無い一族が発見された。

[編集] 創作物に登場する指紋

  • こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両津勘吉の指紋は四角形で、この世でただ一人の指紋という事になっている(四角い指紋は実在する)。
  • 三重渦状紋(さんじゅうかじょうもん):一つの指紋の中に三つの渦が巻かれているという想像上の指紋。江戸川乱歩推理小説『悪魔の紋章』において創作した。北園龍子という女性の指だけに存在する事になっている。乱歩の影響を受けた次の作品にも登場する。
  • 推理小説においても指紋は探偵が犯人を突き止める有力な手がかりとして登場することが多い。最初に指紋を利用した推理小説はマーク・トウェインの『まぬけのウィルソン』といわれる。1907年にはオースティン・フリーマンが指紋偽造を扱った作品『赤い拇指紋』を発表し警察関係者からも注目された。
  • セブン (映画)』ではビクターの手を切り落としてその指紋で警察にメッセージを残す。さらに犯人は自身の両手の指の皮を全て剥いでいる。

[編集] 脚注

  1. ^ Kabuki Syndrome Network in Japan. "Characteristic". 2008年2月3日 閲覧。
  2. ^ 広報けいしちょう第26号web版:警視庁
  3. ^ 佐藤 勝巳 (1985 7). “在日韓国・朝鮮人20年の軌跡と直面する問題--指紋押なつ問題に寄せて”. 現代コリア (253): 60~73.
  4. ^ The Associated Press. "Americans fingerprinted at Brazil airport". USA TODAY. 2008年1月23日 閲覧。
  5. ^ 法務省入国管理局. "新しい出入国審査について". 2008年1月23日 閲覧。
  6. ^ 成澤恒彦. "占い資料館". 2008年2月3日 閲覧。

[編集] 参考文献

  • チャンダック・セングープタ・平石律子 『指紋は知っていた』 文藝春秋ISBN 978-4167651442 - 個人識別に指紋が採用されたのはイギリス領インド半島が最初であったとする。
  • E.J.ワグナー・日暮雅通訳 『シャーロック・ホームズの科学捜査を読む~ヴィクトリア時代の法医学百科~』 河出書房新社ISBN 978-4309205175 pp124-136、犯罪捜査における指紋利用の歴史についての概説

[編集] 関連項目

ウィクショナリー
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ウィキメディア・コモンズ

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年11月11日 (水) 23:28 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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