札幌市営地下鉄
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札幌市営地下鉄(さっぽろしえいちかてつ)は北海道札幌市が経営する地下鉄である。全線がゴムタイヤを用いた案内軌条式鉄道(ゴムタイヤ式地下鉄)で、札幌市交通局が運行に当たる。
南北線、東西線、東豊線の3路線が、手稲区と清田区を除く札幌市内8区に展開されている。
目次 |
[編集] 事業所
- 高速電車部
- 札幌市厚別区大谷地東2丁目4-1(交通局本局内)
[編集] 概要
ファイル:Tentetsuki.JPG 走行路面上を新交通システムのように主輪のゴムタイヤで駆動して、走行路面中央にある1本のレールを案内軌条とする、世界でも珍しい方式である。
同じ札幌市営地下鉄でも、南北線と東西線・東豊線では下記のような違いがある。
- 集電方法(南北線は第三軌条方式、東西線・東豊線は架空電車線方式)
- 案内軌条の形状(南北線はT字型、東西線・東豊線はI字型)
- 走行路面の材質(南北線は樹脂製、東西線・東豊線は鉄板)
- ゴムタイヤ(南北線はダブルタイヤ、東西線・東豊線はシングルタイヤ)
ゴムタイヤ式地下鉄はパリ地下鉄等でも見られるが、札幌市営地下鉄は独特の形式であり、国内外で「札幌方式」と呼ばれることがある。
[編集] 札幌方式のメリット・デメリット
通常の鉄車輪式と比較すると、ゴムタイヤ方式の採用には以下のような長所がある。
一方、札幌方式には以下のような短所もある。
- ゴムタイヤ方式のため、タイヤの磨耗が激しく保守費用がかかる。
- 札幌市営地下鉄車両の車体幅が約3.1mとJR車両に比べ大型であり、また電化方式も交流電化の北海道旅客鉄道(JR北海道)に対し札幌市営地下鉄は直流電化と異なることから、JR北海道との相互直通運転が難しい。
- 車両が完全に独自規格のため、基本設計の共通化によるコスト削減が困難。また、中古車両の地方私鉄への譲渡もほぼ不可能に近い。製造メーカーが川崎重工業一社のみのため、メーカー間の競争も起こらない。
- トンネル断面積が大きいことで、キロメートル当たりの建設費用が割高。これは累積赤字の一因にもなっている。
[編集] 路線とラインカラー
路線とラインカラーの関係を次の表に示す。
| 色 | 記号 | 路線名 | 区間 | 営業キロ |
|---|---|---|---|---|
| 緑 | N | 南北線 | 麻生駅 - 真駒内駅 | 14.3 |
| 橙 | T | 東西線 | 宮の沢駅 - 新さっぽろ駅 | 20.1 |
| スカイブルー | H | 東豊線 | 栄町駅 - 福住駅 | 13.6 |
計画路線・未成線などについては整備計画を参照。
各路線間の相互乗り換えは大通駅とさっぽろ駅にて、ともにホーム同士を結ぶ連絡通路を利用する。改札を出ると途中下車として取り扱われるため切符は回収され、共通ウィズユーカードは精算される。そのため、改札口には切符が回収される旨の大きな掲示が見られる。
[編集] 駅ナンバリング
2006年1月26日から、各路線を表すために記号(アルファベット)と駅番号が導入された。路線記号とその由来は次の通り。
- 南北線 (N):南北 (Namboku) 線の頭文字から
- 東西線 (T):東西 (Tozai) 線の頭文字から
- 東豊線 (H):東豊 (Toho) 東西線のTとの重複を避けるため、豊のHを採用した
[編集] 車両
開業以来、すべての車両がアルミ合金製車体である。車体幅は3,080mmで、新幹線を除く2007年現在営業中の日本の鉄道車両では最大。過去の例を合わせても、名古屋東山モノレールの3,100mmに次ぐ大きさである。
冷房装置を搭載していないため、夏は送風装置や窓からの風と、取り付けられる風鈴で暑さをしのぐ。
貫通扉のない、六角断面の広い連結部が特徴(最初の営業車両であった2000形(1000形)のみ、2両を1ユニットとして楕円形の広い貫通路と長方形の狭い貫通路が交互に連なっていた)。ただし、大邱地下鉄放火事件を教訓とした2005年12月の法令改正により、2006年度に落成した新車(東西線用8000形)からはガラス製の貫通扉が設置されている。
開業以来、すべての車両で座席上の荷棚(網棚)が設置されていない。これは乗客の忘れ物防止や、乗車時間が比較的短いことなどが理由とされている[5]。しかし、通常は荷棚がある位置に立客用の掴み棒が設置されている(5000形、8000形には設置されていない)ため、一見荷棚があるかのように錯覚しやすい。このため、旅行者など不慣れな客が網棚があることを前提に載せようとした荷物が着席している乗客の頭上に落としてしまうことがある。また、大きな荷物も床に置かざるを得ないため、限られた車内スペースの有効活用や利用者へのサービスの観点からも問題視されることがある。
いわゆる「シルバーシート」については、一般的な優先席とはせず「専用席」としている。そのため、混雑時に周囲に高齢者など席を必要とする乗客がいない場合でも常に空いている場合が多い。
かつては、2000形やローレル賞を受賞した6000形のように外装内装ともに個性的で斬新なデザインの車両が多かったが、1993年のイメージアップ計画で市民からのアンケート結果を基に交通局とデザイン専門家の検討の結果に決定したカラーリングが採用されるようになった。従来の札幌市章に代わってSTマークが前面と側面にあしらわれ、客室ドアと前面非常口をラインカラーにする塗り分けであり、俗にSTカラーとも呼ばれている(採用されたカラーリングは、前述のアンケートでは最下位であった)。1994年に投入された東豊線7000形3次車を皮切りに、3路線ともにイメージの近い車両(5000形・8000形)が投入された。
2007年7月から、すべての車両の乗降ドアの内側に、号車とドア位置を示す点字プレートが設置された。ただし、この当時まだ営業運転を行っていた東西線6000形第1編成はドア窓の大きさの関係で設置されなかった。
[編集] 営業車両
[編集] 女性とこどもの安心車両
札幌市交通局のホームページで2005年10月から2006年3月まで女性専用車両導入に関するアンケートが行われた結果、反対意見が多く、「近々の導入はない」とされた。
しかし、2007年9月に地下鉄車内で傷害事件が発生した後、女性専用車両の導入を求める要望書が提出され[6]、2008年8月18日から9月12日までの間、南北線で女性専用車両の導入実験が行われた[7]。
実験後、「女性専用車」という名称では「乗車可能な男性(小学生以下の男児、障害者と介護者)が利用しにくい」との理由で、「女性とこどもの安心車両」に改称の上、2008年12月15日より南北線で正式に導入された。対象になったのは平日始発 - 9時までの1号車(真駒内行:先頭車両/麻生行:最後尾車両)[8]である。なお、介護者を除く中学生以上の健常者の男性が全員乗車禁止となっている点は実験時と変わっていない。東西線においては2009年7月13日から導入された(平日始発-9時までの4号車)。東豊線は他の路線に比べて短い4両編成であることから、当面の導入予定はないとされている。
[編集] 過去の営業車両・試験車両
- 南北線
- 東西線
- 6000形(初のボギー車。ローレル賞受賞車両)
- 試作車である6001編成のみ、前面形状などが異なる。
- 6000形(初のボギー車。ローレル賞受賞車両)
- 試験車両
- 試験除雪車
[編集] 運賃
大人普通旅客運賃(小児半額・10円未満切り上げ)。2004年12月1日改定(“電車”とは札幌市電を指す)。
| 区数 | 運賃(円) | 乗り継ぎ運賃 電車 |
乗り継ぎ運賃 バス1区 |
乗り継ぎ運賃 バス2区 |
|---|---|---|---|---|
| 1区 (1-3km) | 200 | 290 | 320 | 350 |
| (2) 区 (4-5km) | 240 | 330 | 340 | 370 |
| 2区 (5-7km) | 360 | 390 | ||
| 3区 (8-11km) | 280 | 370 | 400 | 430 |
| 4区 (12-15km) | 310 | 400 | 430 | 460 |
| 5区 (16-19km) | 340 | - | 460 | 490 |
| 6区 (20-21km) | 360 | - | 480 | 510 |
[編集] 乗継割引
- 乗継運賃は基本的に通常運賃の合算額から80円引き。(2) 区のみ100円引きなのは、かつて「バスから地下鉄への乗り継ぎに限り、(2) 区は1区と同じ運賃とする(逆の場合は2区と同じ運賃)」という制度が存在していたためで、1997年の運賃制度改正で1区と2区の中間額となった。この制度は電車との乗り継ぎには適用されなかったため、電車との乗り継ぎ運賃は (2) 区・2区とも同じである。
- 地下鉄から電車・バス(1区)へ乗り継ぐ場合は、地下鉄駅で購入した乗継券のみでそのまま乗り継ぎが可能。
- 電車・バスから地下鉄へ乗り継ぐ場合は、電車・バスの降車時に通常運賃+地下鉄1区分相当の乗り継ぎ運賃(120円)を払って乗継券を受け取る。地下鉄の乗車区間が1区を超えた場合は下車駅で精算する。
- ただし、バス2区や対キロ区間(札幌市内のみ)のようにバス運賃がバス1区相当の運賃(200円)を超えた場合はその差額分だけ乗継運賃も加算される。このため、バスと地下鉄を乗り継ぐ場合は以下のとおりとなる。
- 地下鉄からバスへ乗り継ぐ場合は、バス降車時に乗継券に加えてバス車内運賃表の表示金額から200円を差し引いた差額を支払う。
- バスから地下鉄へ乗り継ぐ場合は、バス降車時にバスの通常運賃+地下鉄1区分相当の乗継運賃(120円)を支払って乗継券を受け取る。
- なお、1997年の運賃制度改正以前は北海道中央バスの主要路線のみ他社に比べて乗継運賃が20円高く設定されていた。
[編集] 乗継可能なバス会社
- 共通ウィズユーカード対応
- 共通ウィズユーカード非対応
[編集] 乗継割引の適用条件
- 札幌市内の区間で乗り継ぐ場合に限り乗継割引が適用される(一部例外あり)。
- 乗継割引は現金か共通ウィズユーカードを利用する場合に限られる。昼間割引カード(後述)や各バス会社のバスカード、また回数券での乗り継ぎはできない。
- 乗継は、当日中に完結しなければならない(深夜バスなど乗り継げることができる場合もある)。なお、乗り継ぎにおける制限時間はない。
- カード対応会社線と乗り継ぐ場合は、共通ウィズユーカードをカードリーダーに通すだけで自動的に乗継運賃が適用される。
- カード非対応の会社線との乗り継ぎではバスに共通ウィズユーカードを利用することができないため、地下鉄乗車前に駅の券売機で共通ウィズユーカードを利用(または現金)して乗継券を購入する。
- 旧札幌市営バス路線やそれと運行エリアの近い路線を除き、札幌都心部(さっぽろ駅・大通駅・バスセンター前駅・すすきの駅・豊水すすきの駅)での乗継は原則として乗継割引の対象外。
- 「バスセンター」を乗継指定停留所としているバス路線の場合、地下鉄側では大通駅とバスセンター前駅のどちらで乗り継いでもよい。逆に大通駅のみを乗継指定している停留所(「南1西1」「大通西4」など)とバスセンター前駅での乗継は乗継割引対象外である。
- 郊外部の駅で都心部方面に向かうバスに乗り継ぐ場合は、乗継割引が適用されなかったり、乗継割引が適用される区間に制限が設けられている場合がある。
- 1つのバス路線が複数の地下鉄駅と接続している場合は、そのうち最も郊外側にある駅で乗り継ぐ場合しか乗継割引が適用されない場合がある。この規定は従来厳格に適用されていたが、1990年代後半以降に当時札幌市営バスとして運行されていた路線に対しては大幅に緩和された。
- 真駒内駅と発寒南駅でばんけい観光バスと乗り継いだ場合は、乗継割引の対象外。
- なお、地下鉄とバスとの連絡定期券は地下鉄の定期券販売所でしか販売しておらず、バス会社の定期券販売所では購入できない。
- 都市間バス路線は乗継割引の対象外であるが、共通ウィズユーカードの利用自体は可能な路線もある(高速おたる号など)。
[編集] 各種乗車券
[編集] ICカード
[編集] 磁気カード
[編集] 乗車カード
- 共通ウィズユーカード
- 昼間割引カード(地下鉄専用、発売額2,000円で2,500円分乗車可能。午前10時 - 午後4時の間に乗車する場合に使用可能)
[編集] 一日乗車券
- 地下鉄のみ利用可能
- 地下鉄専用1DAYカード(800円)
- ドニチカキップ(500円) - 地下鉄専用1DAYカードと効力は同じ。土・日曜・祝日・振替休日のみ利用可能。
- 他の交通機関も利用可能
- 共通1DAYカード(地下鉄・市電・バス、1,000円)
- エコキップ(地下鉄・市電・バス、700円)- 毎月5・20日のみ発売
[編集] 経営状況
2007年度の乗車料収入は、360.4億円。
- 営業損益は、73.9億円の黒字。
- 経常損益は、13.6億円の黒字。
- 償却前営業損益は212億円の黒字。
- 償却前経常損益は152億円の黒字。
1980年代初頭から赤字が続き、2004年度には単年度赤字約71億1,000万円、累積赤字も同年度末で4,400億円という(当時の札幌市全体の歳入は年間8,000億円弱)危機的な状況となっていた。赤字の主な要因は建設費とその利息で、特にバブル景気の最中に建設された東豊線北部の分が大きいとされる。
2004年から2013年度にかけて、収支の改善を掲げた「札幌市営地下鉄事業10か年経営計画」を実施中である。沿線人口の高齢化に伴う利用客の減少が見込まれ、苦しい経営が予想されていたが、計画より5年も早く2006年度には25年ぶりに経常収支ベースでの単年度黒字を達成した。累積赤字も2006年度末時点で3,412億円と減少傾向にある。ただし、これは補助金の増額(2001年度以降増額され続け、2006年度は2001年度と比べ約60億円の増額)と人件費の大幅なカットによるところが大きい。
2007年度の1日平均乗車人員は、3路線合計で57万2041人と、前年度より0.5%減少したが、乗客数は一定幅内での増減が繰り返されており、ほぼ横ばいの状態と言える。
[編集] 人身事故対策
開業以来、ホームから人が転落する事故が多く問題となっている。交通局では運行障害の元にもなる投身事故を何とか減らそうと、ホームに投身防止を呼び掛けるプレートや、飛び込もうとする自分の姿を見て思いとどまってもらうべく「鏡」を設置したり、相談を受け付ける「いのちの電話」へ協賛するなどの対策を講じてきた。
2006年には全駅への非常列車停止装置の設置を完了したほか、2008年度から東西線を皮切りに10年間をかけて「ホームドア」(交通局では「可動式ホーム柵」と呼んでいる)を各駅に順次設置していく予定。投身や思わぬ転落事故の防止のほか、ワンマン運転化による人件費の削減が見込まれている。東西線では2008年度中に全駅へのホームドア設置を完了[12]し、4月1日よりワンマン運転を開始した[13]。
運行障害が発生した場合「代行バス」が運行されることもあるが、人身事故の場合発生から約30分で折り返し運転が始まり、1時間程度で全線復旧することが多く、事故を知っても駅などで復旧を待つ乗客も多い。そのほか、携帯電話向けに障害発生情報や復旧見込み時間をメールで配信するサービスもある。
なお、車両には排障機が設置され、ホーム脇の軌道にはプレートを敷いてフラットにしてあるため、転落しても車両に巻き込まれることは少ないといわれ、投身しても死亡に至らないケースが多い。
[編集] 開業前のエピソード
1960年代、急速なモータリゼーションの進行によって、特に積雪期の交通渋滞に悩まされていた札幌市では、市内交通の中心だった市電とバスによる輸送が限界に近づいていた。さらに札幌オリンピックの開催が決定し、選手や観客を輸送するためには市電やバスの輸送力では到底対応しきれないことから、高速・大量輸送が可能な新しい軌道系交通機関建設への機運が高まっていった。
市は1964年に『札幌市における将来の都市交通計画』に関する調査書を民間に委託して作成させ、翌1965年から札苗実験場(現東区)でゴムタイヤ方式の試験車両による各種試験を開始した。なお、モノレール、鉄車輪とゴムタイヤを併用するパリ方式、あるいはブリュッセルのプレメトロを参考にした路面電車を都心部のみ地下に潜らせる「路下電車」なども検討された。
札幌市がゴムタイヤ方式に固執した理由は、高速電車と入れ替わりに廃止が予想される市電と同等の利便性を確保するため、高速電車の駅間隔を当初、電停並みの300メートル程度と想定していたことによる。走行実験の開始直後、除雪についての具体策もはっきりしない時期、札幌市の広報誌には、「短い駅間隔での高加減速運転には鉄輪は不向きで、ゴムタイヤこそが最適」との趣旨の記述がある。
当時人口が80万人規模だった札幌[14]での地下鉄建設には、運輸省が難色を示していたという。「札幌に地下鉄を作って赤字になったらどうするんだ、熊でも乗せるのか」という運輸省担当者の冗談に、当時の交通局長で後に「札幌地下鉄の生みの親」と呼ばれた大刀豊(だいとう ゆたか)が「料金を払えば熊でも乗せる」と言ったという逸話が残っている。
1967年12月の定例市議会で南北線真駒内 - 北24条間の建設が可決され、直ちに免許が申請された。当時の地方鉄道法には、鉄軌条でも、モノレールでもない「札幌方式」に関する規定がなく、関係省令を一部改正して「案内軌条式鉄道」の項目を設けた上で認可された。日本モノレール協会では、「札幌方式」がモノレールに関する特許に抵触していないかどうか公開質問状を送付し、また調査員を派遣した。
1971年2月のプレオリンピック開催時には、南北線の試運転車両に皇太子夫妻が試乗した。
[編集] 整備計画
札幌市が1965年に発表した『札幌市都市交通機関計画資料』では、昭和60年(1985年)までに地下鉄を南北線・東西線の計45km、また、都心および沿線各地区にバスターミナルを建設するとしており、このうち第一次計画として昭和50年(1975年)までに地下鉄20kmと都心バスターミナルを建設することになっていた。
最初期の計画では、地下区間は都心部の約6km(南北線:北11条付近 - 南8条付近、東西線:西18丁目付近 - 東5丁目付近)のみで、残りはすべて高架とする予定だった。また、東西線については千歳線の経路変更に伴う廃線区間(現:北海道道1148号札幌恵庭自転車道線)に高架を建設する案もあった。
1973年、自治省が札幌市の要請に基いて編成した調査団によって、札幌市の将来あるべき交通体系に関する調査が行われた。翌1974年3月に提出されたその報告書『最適交通体系の選択と投資順位の研究』では、地下鉄について
- (1) 昭和49年(1974年)既設及工事中の路線
- (2) 昭和55年(1980年)以前建設提案路線
- (3) 昭和55年 - 60年(1985年)建設提案路線
- (4) 昭和60年 - 65年(1990年)建設提案路線
- (5) 昭和65年以降建設提案路線
の5段階で、4路線計81.3kmの建設が提案されている。内約は次の通り。
- 南北線
- 北24条 - 真駒内:12.1km (1)
- 北24条 - 麻生町:2km (2)
- 麻生町 - 新札幌団地:9.0km (5)
- 「新札幌団地」は現在の石狩市花川南付近
- 麻生町 - 茨戸:6.2km (5)
- 真駒内 - 藤の沢:7.0km (5)
- 東西線
- 琴似 - 白石:10.0km (1)
- 白石 - 厚別副都心:8.1km (3)
- 琴似 - 木工団地:2.8km (4)
- 木工団地 - 手稲:4.2km (5)
- 三号線
- 新川通 - 南34条西11丁目:9.0km (5)
- 四号線(現:東豊線)
- 元町 - 月寒:11.0km (5)
札幌市では、これを基に3路線、約50kmを建設する構想、いわゆる「地下鉄50キロ計画」を定めた。現在までに、そのうちの48kmが建設され、他にも以下のような区間について延伸が検討、もしくは要望されているが、交通局や札幌市自体の財政面から、これ以上の延伸は難しい情勢にある。
- 東豊線:清田方面へ
- 地下鉄50キロ計画にも含まれているが、福住駅付近の線形の問題で、そこから先のルートが決まっていない。
- 南北線:石山・藤野方面、新琴似・屯田方面へ
- 南側は真駒内までの建設時に将来の延伸に備えて旧・定山渓鉄道の跡地を買収していたが、一部は道路などに転用された。
- 東西線:JR森林公園駅・発寒駅へ
- 宮の沢延伸工事中には、後述するJRとの相互乗り入れに関連して、発寒駅への延伸も検討されたが、「乗り入れ自体は不可能ではないが、きわめて困難」とされたことから見送られている。
なお、これらの区間には、地下鉄ではなくライトレールで、という意見もある。また、札幌から石狩市へ、鉄道ないしはモノレールを建設する計画があるが、その起点を麻生駅か栄町駅とする案がある。
[編集] JR(旧国鉄)との関係
ゴムタイヤ方式を採用した札幌の地下鉄は、JR北海道の路線との直通運転(相互乗り入れ)が困難である。乗り換えを強いられるため、アクセスが悪く不便である一方、雪の影響を全く受けないというメリットもある。
市営地下鉄の建設が始まった昭和40年代前半の頃は、現在の札幌都市圏のように通勤や通学の範囲が広くはなく、当時の日本国有鉄道(国鉄)は、駅間隔も長かったことから、通勤・通学に気軽に利用されるような存在ではなかった。当時の札幌近郊の普通列車の運行本数は地方都市並みであり、札幌市内の駅は函館本線が8駅、札沼線(現:学園都市線)は6駅しかなかった(現在はそれぞれ14駅、10駅)。当時の市民の足は専ら市電、バスであり、同じく通勤・通学輸送を目的とした札幌市営地下鉄にとって、鉄・軌道方式による相互乗り入れの必要性は低かったと考えられる。
しかし国鉄分割民営化に前後して、国鉄・JRは札幌近郊輸送を重視するようになり、列車の大幅な増発や駅の増設、また函館本線の高架化や札沼線(学園都市線)の複線高架化を行った。結果、現在ではJRも通勤・通学路線としての役割を担っている。そのため、路線が市内東西に並行するJR函館本線・千歳線と東西線、南北に並行するJR札沼線と南北線北部・東豊線北部が競合状態にある。
JRとの相互乗り入れの可能性については、1995年から札幌市とJR北海道の部・課長クラスで「JRと地下鉄連携に関する研究会」を設けて検討され、鉄道総合技術研究所に調査委託した。翌1996年の研究所からの報告書では「両軌道に対応できる車両を開発する案が有力で、技術的には可能」とされた。しかし、その開発費は数百億円から1千億円程度に上るとのことで、その後の市総合交通対策調査審議会により、採算を理由に見送られた経緯がある。
JR、地下鉄ともに利用可能な相互連絡乗車券や定期券は期間、数量限定の「YOSAKOIソーランパス」以外発売されていない。また運行障害が発生しても振り替え輸送は従来行われていなかったが、2008年11月からJRで2時間以上の運行障害が発生した場合、地下鉄への振り替え輸送を行う事になった。これは2007年12月に札幌周辺のJRが防護無線の誤発報で長時間に渡って運行が乱れた際、その対応でJR北海道に厳しい批判が寄せられたことから札幌市交通局との間で協議が進められていた。
ICカードの導入時も共通化を図る方向で2005年より協議が進められていたが、JR東日本のSuicaと共通化させることを優先するJRと、バスや市電など市内交通機関との共通化を主張する交通局との間で意見が分かれ、当分の間共通化は見送られる事になった。当面は2008年10月より導入されたKitaca(JR北海道)と、2009年1月より導入されたSAPICA(札幌市交通局)の2枚を使い分けることになる。
JR北海道と札幌市営地下鉄は同じ北海道の鉄道事業者でありながら、対応やサービスの異なる面が多い。サービス面での違いは以下の通り。2009年3月31日までは、携帯電話のルールに関しても違いがあった。
- 車内の冷房装置
- JR北海道:あり
- 札幌市営地下鉄:なし
- 駅ナンバリング
- JR北海道:採用は地下鉄より遅れたが、車内LED案内表示器でもナンバリング表示
- 札幌市営地下鉄:先に採用したが、車内掲示の路線図などでは現在もシールのみで対応。車内LED案内表示器は一部非対応
- ホームでの乗車待ち整列
- JR北海道:2列
- 札幌市営地下鉄:4列
- 携帯電話(2009年3月31日まで)
- JR北海道:優先席と周辺部のみ電源OFF、それ以外の場所はマナーモードに設定のうえ通話は禁止
- 札幌市営地下鉄:全面禁止・電源OFF(2009年4月1日からはJRと同様)
[編集] その他
- 正式な呼称は「札幌市高速電車」であり、公式文書などにはこの呼称が記載されている。
- 車掌がドアの閉鎖を確認し、押しボタンで運転士に発車合図を送る場合、札幌市営地下鉄はベル一声の「チン」を使う。音は全車両共通で、非常ベルに似た「ジリジリ」と言う音のするベルを使用している。これはJR(気動車と客車、JR北海道の全列車のみ、電車は使わない)や東日本の私鉄・地下鉄で一般的なブザー一声の「プー」や西日本の私鉄・地下鉄に多いベル二声の「チンチン」とは明らかに異なっている。なお、これらいずれとも異なる私鉄も一部に存在する。
[編集] 路線
- 東西線西11丁目駅と東豊線さっぽろ駅の間には、東豊線車両を西車両基地に回送するための連絡線がある。
- 各路線の終端駅はすべて島式ホームに統一されている。また、東豊線延長部以降に延伸された部分では、建設費を抑えるため途中駅もすべて島式ホームとなった。
- 2000年4月より駅業務の財団法人札幌市交通事業振興公社への委託が進められ、2007年度には全駅の業務委託化が完了、将来的には運転業務も含めた全業務を委託する計画である。
- 東豊線の栄町 - 豊水すすきの間では、当初から8両編成に対応できるようにホームが建設されたが、学園前 - 福住間では、4両編成の現状に合わせてホームを6両分しか完成させなかった。ただし、残り2両分の基礎工事は既にされており、今後追加工事を行うことで8両化にも対応できるようになっている。
[編集] 技術
- ゴムタイヤが走行する走行路面は、南北線が耐磨レジン(樹脂)、東西線と東豊線が鉄板となっている。このため、南北線では各所で走行路面の補修が行われており、走行中の揺れが大きい。
- 通常の鉄道では車輪からレールにアースしているが、ゴムタイヤ方式ではそのための集電靴(シュー)を必要とする。東西線や東豊線では、集電靴をI字型の案内軌条の両側から挟むように擦りつけているため、駅の直前やカーブなどで一瞬離れてまた接触する時に、スズメの鳴き声に例えられる特有の走行音が発生する。南北線はT字型の案内軌条の天面に擦りつける方式のため、この音はほとんど発生しない。
- 駅停車中は、車体裾のコンタクターと、ホーム端面の鉄板を導通させ、静電気の滞留を防止している。
[編集] 乗車制度
- 札幌市交通局の発行する定期券は、地下鉄の定期券である場合「高」(高速電車)という記号が印字される(市電の場合は「電」)。
- 磁気乗車券を使用した自動改札機を本格的に全面採用したのは札幌市営地下鉄が日本で初めてである。なお、現在札幌市営地下鉄で使用されている自動改札機は最新型を含め、切符・カード・定期券の裏からの投入ができず、裏から投入した場合は『「裏入れ」表を上にして入れ直してください』と表示され、扉が閉まる。
[編集] サービス
- 携帯電話の車内での利用に関しては、2009年4月1日より「専用席付近は電源OFF それ以外の場所ではマナーモード」という一般的なルールに移行された。それまでは、車内での携帯電話の使用は全面的に禁止されており、電源を切るように呼びかけていた。
- 案内板などに用いられる各路線のピクトグラムは当初、それぞれのラインカラーを地色に、2000形、6000形、7000形(前期)電車を模したデザインが使われていた。現在は最新の営業車両である5000形、7000形(後期)、8000形電車がほぼ同形状であるためデザインを改めて各線とも共通化し、ラインカラーで区別するものが使われている。
- 駅売店は、他都市のような交通局の外郭団体ではなく、北海道キヨスクが担当している。
- 各駅によって、それぞれ異なるスタンプが設置されている。
- 開業以来、元日の運行開始は遅い時間となっていて市民からの批判が多かったが、2006年以降の元日は通常と同様に6時から運転されている(ただし、列車の運行間隔を伸ばしている)。
[編集] フィクションへの登場
[編集] 映画
- その他、鈴井貴之監督の映画作品でも登場している。
[編集] テレビドラマ
- 雅楽戦隊ホワイトストーンズ(北海道テレビ)
- 四国R-14水曜どうでしょうProject 2000(北海道テレビ)
- ドラバラ鈴井の巣(同上) - 東西線がよく登場する。
[編集] 漫画
- 動物のお医者さん - 静電気体質の菱沼聖子が自動改札を通過できないシーンがある。
[編集] 脚注
- ^ 南北線5000形の起動加速度4.0km/h/sは阪神電気鉄道の各駅停車専用車両、同じく東西線8000形の3.5km/h/sは京浜急行電鉄や日本各地の地下鉄など、同様の性能を上げている多くの例がある。しかし、札幌市営地下鉄の車両はこれらの車両と比べ比較的小さいMT比で高い起動加速度を実現しており、ゴムタイヤの採用が加速・減速性能の向上につながっている部分はあると考えられる。
- ^ ただし、札幌市営地下鉄の最急勾配は43‰であり、鉄車輪式でも大きな問題はない
- ^ しかし、21世紀初頭では走行路面の老朽化による凹凸が南北線を中心に目立つようになり、以前よりも乗り心地は悪化している。札幌市交通局では走行路面の補修工事を随時実施している。
- ^ ただし、札幌市営地下鉄の車両は全車非冷房車で、夏場は窓を開けるため、車内はトンネル内の走行音で非常にうるさくなる
- ^ 網棚について
- ^ 「札幌市交通局、地下鉄巡回の警備員を増強 女性切りつけ事件受け」北海道新聞 2007年9月15日 13:34
- ^ 女性専用車両の導入実験について(札幌市交通局)
- ^ 女性とこどもの安心車両導入についてのお知らせ(札幌市交通局)
- ^ ICカード乗車券:名前は「SAPICA」 2009年1月、サービス開始 /北海道 毎日新聞 2008年3月29日
- ^ バスの共通1DAYカード利用区間
- ^ バスのエコキップ利用区間
- ^ 東西線での設置状況と今後の設置予定
- ^ ワンマン運転開始のお知らせ
- ^ 札幌市は、1970年国勢調査で初めて法定人口が100万人を突破した。政令指定都市移行は1972年4月1日。
[編集] 参考書籍
- 『さっぽろ文庫11 札幌の駅』(編:札幌市教育委員会、発行:北海道新聞社)
- 第5章第1節「地下鉄誕生」(筆者:大刀豊)
[編集] 関連項目
- 札幌市の交通
- 地下鉄
- 日本の地下鉄
- SUPER BELL"Z - 走行音やアナウンスをモチーフにした楽曲がCDアルバムに収録されている
[編集] 外部リンク
- 札幌市交通局 公式サイト
- 札幌市公共交通情報提供システム - 札幌市内一部バス路線を除くすべての交通機関の情報を提供している。
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最終更新 2009年11月25日 (水) 10:18 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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