洞穴学

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スイスの洞窟(Grotte des Faux-Monnayeurs)

洞穴学(どうけつがく、: speleology)とは、洞窟カルスト地形の成り立ち、構造、物理的特性、歴史、生命形態、経時変化などを科学的に研究するものである。洞窟学(どうくつがく)ともいう。Speleology という用語は趣味的な洞窟探検を指すこともあるが、その場合にはより適切な用語としてケイビングがある。

洞穴学は、化学生物学地質学気象学地図学といった知識を統合して、洞窟などを複雑な系として特性を明らかにする学際領域である。

目次

[編集] 歴史

19世紀中盤以前、洞窟の科学的価値は単に他の科学分野に何らかの貢献をするだけのものと考えられており、洞窟の研究は、地理学、地質学、考古学といった大きな分野の一部とされていた。「洞穴学の父」と呼ばれる Édouard-Alfred Martel(1859年 - 1938年)以前には、洞窟に注目した研究は非常に稀だった。Martel は洞窟の調査研究を幅広く行い、洞穴学の概念を確立させた。1895年、Martel は世界初の洞穴学の組織として Société de Spéléologie(洞穴学会)を設立した。

洞穴学の発展は、スポーツとしてのケイビングの発展と密接に関連している。実際、ケイビングと洞穴学の実地調査の手法は基本的には同じである。

[編集] 洞穴の地質学と水文学

カルスト地形」を参照

[編集] 地球化学的二次生成物

二次生成物」を参照

[編集] 洞窟地図

洞窟の詳細かつ正確な地図の作成は、典型的な技術的活動の1つである。洞窟地図は survey と呼ばれ、個々の洞窟の長さや深さや容量の比較に使われたり、洞窟の成り立ちを推理する手掛かりとなったり、その後の研究やケイビングでのルート探索に利用されたりする。

洞窟地図作成にあたっては、洞窟入り口などの固定点を出発点とし、station との間で一連の連続的な照準線測定を行う。方向の測定には方位磁針、高低差の測定にはクリノメーター、距離の測定には光波測距儀などが使われる。直線的データと共に、形状の詳細、登りか降りか、水溜りや流水の有無、地面の物質は何か、などが記録される。これを元に地図製作者が line-plot と呼ばれるものを作成し、更なる調査で詳細な地図へと更新していく。洞窟地図を2次元的に紙上で表現する際には、planprofile と呼ばれる図にされるが、コンピュータでは3次元で表現することもある。ケイビングを楽しむ人の中には、技法として洞窟地図作成も行う者もいる。

洞窟地図の正確度(grade)は、測定の技量や方法に依存する。英国洞窟調査学会は1960年代に洞窟地図の正確度を6段階にわけ、Grade One(記憶に基づく簡単なスケッチ)から Grade Six(三脚を使った各種機器と温度較正可能な鉄製の巻尺を使った測定)とし、最も一般的な正確度を Grade Five とした。この Grade Five は、手持ちの測定機器を使い、精度が10センチ以下の巻尺を使ったものを指す。

洞窟地図作成に使われる機器は進化を続けている。コンピュータや慣性システム、電子測距儀などが使われたりしているが、地下での利用を考慮したものは今のところ登場していない。

[編集] 測量ソフトウェアの問題

洞窟の中心線に沿って連鎖的に測量していくと誤差が蓄積されていき、第二の入り口やループが発見されたときなどに不一致が見つかる。そのような場合に一貫性を向上させるために測量ソフトウェアが広く利用されている。

洞窟は調査が進むにつれて新たな発見(ループ、入り口など)があり、年月をかけて徐々に認識が深まっていく。そのような状況で洞窟地図を書き上げるのはなかなか困難である。紙上の地図は数年ごとに一から書き直されたり、一部だけは完全だが他は修正される可能性ありとして描かれたりする。

[編集] 洞穴生物学

洞窟には様々な独自の生物相が存在する。洞窟における生態系は様々で、地表の生態系と明確に分離していないことも多い。しかし一般に、洞窟が深くなればなるほど、その生態系の独自性が強まる。

洞窟環境は以下の3つに分類される。

  • 地中性 (Endogean): ひびや岩と岩の隙間、地下水の地表への漏出、木の根の突出などにより、地表との連絡がある部分。
  • 半地下性 (Parahypogean): 入り口からの光がやっと届く程度の境界部分。
  • 地下性 (Hypogean): 真の洞窟環境。地表とは風や地下河川で接触があり、動物が入り込むこともあるが、基本的に孤立している。深い地下性環境は日光をエネルギー源としない独自の生態系を育む。石灰岩などの鉱物から得られる化学エネルギーを化学合成独立栄養生物(細菌)が利用するのが基本的なエネルギー源となる。

洞穴生物は以下の3つに分類される。

  • 真洞窟性動物 (Troglobites): 洞窟にしか棲めない動物。短時間なら洞窟から出られるものもあるし、ライフサイクルの一部を地表で過ごすものもあるが、生涯を洞窟外で過ごすことはできない。例として化学合成独立栄養生物(細菌)、一部の扁形動物トビムシ、キタドウクツギョなどがある。
  • 好洞窟性動物 (Troglophiles): 生涯の一部あるいは全部を洞窟で過ごすが、地表であっても適切な環境があれば棲める。例えば、カマドウマヤスデカニムシクモなどがある。
  • 周期性洞窟動物 (Trogloxenes): 洞窟によくいて、ライフサイクルの一部を洞窟で過ごす必要があるものもいるが、地表または半地下性環境に基本的に棲息する。冬眠性の爬虫類や哺乳類がこれに属する。

また、通常地表に棲むものが洞窟を好むわけでもないのに何らかの偶然によって洞窟に棲む場合もある。中には長期間洞窟にいては生きられないもの(Troglophobes) もいる。例えば、穴に落ちた鹿、洪水で流されて洞窟に落ち込んだカエルなどがある。

洞窟の生態系を特徴付けるのは、エネルギーと栄養素である。カルスト地形の洞窟では水分はある程度常に確保される。日光が届かず、枯葉などが積もることもないため、地表の水分の豊富な領域に比べると洞窟の環境はきびしい。洞窟環境でのエネルギーの大部分は、外界の生態系の剰余部分が起源となっている。また、周期性洞窟動物の糞がエネルギーや栄養素の元となっている。例えば、コウモリの糞である。その他の栄養源は上述の通りである[1]

洞窟の生態系は非常に繊細である。人間の活動によって脅かされることが多い。ダム建設、石灰の採掘、地下水のくみ上げ、あるいはちょっとした災害によって地下の生態系は壊滅的な打撃を受けることがある[2]

[編集] その他の領域

洞穴学者は考古学者と共同で、地下の遺跡、トンネル、下水道、水道などの調査にあたることがある。例えば、古代ローマの下水道システム Cloaca Maxima などである[3]

洞穴から化石がでる場合があり、古生物学との関わりもある。これは、特に縦穴が大型動物にとって落とし穴のような役割を果たすためである。

[編集] 脚注

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  1. ^ Dr. Paul Richter, Classifications of Cave Biota & Cave Environments (1996)
  2. ^ National Speleological Society, The Fragile Underground
  3. ^ Ruins Under Rome

[編集] 関連項目

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[編集] 参考文献

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[編集] 外部リンク

最終更新 2009年11月10日 (火) 15:22 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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