白血病
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白血病(はっけつびょう、leukemia)
医学的には、腫瘍化した造血細胞が無制限に増殖して血液中に出現する疾患の総称である。白血球系の細胞の腫瘍であることが多いため白血病と呼ばれるが、実際には赤血球系や血小板系の細胞が腫瘍化したものもあり、これらも白血病と呼ばれる。
目次 |
[編集] 概要
血液中の白血球の一群が、異常に増殖し血液内で増加する疾患。白血球の数が増えるだけでなく、増加した白血球は通常とは形態が異なったものとなる。ただし例外的に形態に異常が見られるのみで数が減少することもある。一般的には「白血球の悪性腫瘍」、もしくは「血液の悪性腫瘍」という広い意味合いで使われている。多くの悪性腫瘍が中高年に多発するのに対し、白血病は乳児から高齢者まで広く発生する。 一般的に用いられる表現で、白血病を「血液の癌」と呼ぶが、これは誤りである。癌というのは「上皮組織の悪性腫瘍」をさし、上皮組織でなく結合組織である血液や血球には使えない。ただし、「血液のがん」という表記は正解である。平仮名の「がん」は、「癌」も含めた広義的な意味でつかわれているからである。
血液が生成される骨髄に病変の主座があり、固形の腫瘍を形成しないため外科手術の適応ではない。以前は治療が困難であったため、不治の病とのイメージを持たれてきた。しかし、1980年代以降、化学療法や末梢血造血幹細胞移植療法 (peripheral blood stem cell transplantation; PBSCT)、骨髄移植 (bone marrow transplantation; BMT) や臍帯血移植の進歩にともない、治療成績は改善されつつある。とはいえ、それでも死亡率は4割と高い。
悪性リンパ腫や骨髄異形成症候群といった類縁疾患は通常、血中に腫瘍細胞がみられないため白血病には含まれないが、これらも進行すると血液中に腫瘍細胞が出現することがある。このことを白血化と呼ぶ。逆に、白血病のなかでも成人T細胞白血病・リンパ腫 (Adult T-cell leukemia/lymphoma; ATLL) のように、病態によっては血液中に腫瘍細胞の出現しないものもある。
また、上記の通り不治の病のイメージが強いことからフィクションでは癌と並びしばしば使用される。
[編集] 症状
白血病細胞が増加し、正常な血球が減少するため、白血球減少に伴う感染症(発熱)、赤血球減少(貧血)に伴う症状(倦怠感、動悸、めまい)、血小板減少に伴う出血症状(歯肉の腫脹や歯肉出血など)により判明することが多い。
[編集] 血の色
血液中の白血球は透明な細胞なので多少増えても白くはならないが、白血病が重症になり1立方ミリメートルあたり10万個程度になると白く見えてくる。また同様に、赤白血病(FAB分類M6)でも必ずしも血がピンクになる訳ではない。一方、家族性リポ蛋白リパーゼ欠損症では血の中に脂肪が溜まり血が乳白色となるが、これは白血病とは呼ばない。
[編集] 原因
原因は明らかでないものが多いが、多くの白血病細胞では染色体の欠損や転座が認められ、自律増殖能の獲得との関連が示されている。
放射線被曝、ベンゼンなど一部の化学物質などは発症のリスクファクターとなる。その他にウイルスが原因であるものが知られている。ひとつはエプスタイン・バール・ウイルス (EBV) が関わっている急性リンパ性白血病バーキット型(FAB分類ALL L3)である。もうひとつは日本で同定された成人T細胞性白血病で、レトロウイルスのひとつ HTLV-I の感染が原因であることが明らかになっている。
[編集] 分類
白血病における急性、慢性は一般的に用いる意味とは違っている。腫瘍細胞が分化能を失ったものを急性白血病、分化能を保っているものを慢性白血病と呼ぶ。
また、腫瘍の起源となった細胞が骨髄系の細胞かリンパ球系の細胞かによって骨髄性白血病、リンパ性白血病に分類する。このことから大きく以下の4種類に分類される。
- 急性骨髄性白血病 (acute myelogenous leukemia; AML)
- 慢性骨髄性白血病 (chronic myelogenous leukemia; CML)
- フィラデルフィア染色体と呼ばれる9番と22番の染色体長腕間の相互転座により、9番上のabl遺伝子が22番上のbcr遺伝子領域へ転座しbcr/abl融合遺伝子が形成される。この転座はt(9;22)(q34;q11)と略して表記する。この翻訳産物であるBCR/ABL蛋白は正常ABL蛋白よりも高いチロシンキナーゼ活性を持つ。このチロシンキナーゼ阻害剤がイマチニブである。
- 急性リンパ性白血病 (acute lymphoid leukemia; ALL)
- 慢性リンパ性白血病(chronic lymphoid leukemia; CLL)
これらはさらに生物学的な性質から細分される。しかし、慢性骨髄性白血病だけはほぼ単一の疾患概念となっている(原因となる染色体異常がフィラデルフィア染色体 (Ph1) 以外にはほとんどない)。
細かい分類法はいまだに研究途上だがFAB分類が広く利用され、特に急性骨髄性白血病の診療において威力を発揮している。
その他の分類としては急性白血病、骨髄増殖性疾患といった分類も存在する。
[編集] 代表的染色体異常
白血病では腫瘍性血液細胞に染色体異常が存在することが多い。これらは染色体異常#血液疾患における代表的染色体異常の項に纏まっているので参考にしてほしい。
アメリカの口腔外科医Hal Huggins著「Uninformed Consent」によれば、白血病の患者のうち、口内に虫歯治療用の水銀アマルガムの詰め物がある場合、これを完全に取り除けば白血球数が1日で5万個減少したり、詰め物の除去の後寛解したのに、再度テストのために水銀アマルガムを詰めた所、白血病が再発したりした症例がある。これは、水銀の毒性が白血病を引き起こす可能性があるということを示唆している。なお、水銀アマルガムの詰め物を完全に取り除いたら、化学療法の結果がある病院ではこれまでで最も良好であったとも書かれている(原因不明の病気の原因が水銀アマルガムであることも多い)。
[編集] 治療法
[編集] 予後
白血病の場合、治療により症状が改善しても、腫瘍がすべて消失したことを確認できるわけではないため、治癒とは呼ばず寛解と表現する。造血細胞が正常に分化し、白血病の症状が見られない状態を完全寛解と呼ぶ。 完全寛解を5年以上維持した場合、再発の可能性がほぼなくなったものと考え、治癒と見なす。治癒を得るには、顕微鏡だけで決める血液学的完全寛解では不十分であり、寛解後療法(地固め療法)と呼ばれる化学療法を継続して異常遺伝子の見つからない分子的完全寛解まで到達することが必要。なお、造血幹細胞移植療法は最強力の寛解後療法とされる(ただし、治癒後も治療を原因として発症する二次性白血病のリスクは残存する)。 しかしながら、治癒しても完全に白血病細胞がゼロになったとは断定し切れないため長期的に見た場合10年程度の期間では再発や二次性白血病を患う(再燃)おそれが残存する。再燃の場合は骨髄移植は親族以外では事実上できない(骨髄バンクが優先ランクを初回優先としている)。再燃した白血病細胞は非常に抵抗性が強く化学療法、放射線とも利きにくいため命を落とす確率が高くなる。
したがって数ヶ月に1度、異常白血球細胞数の検査を生涯に渡って行い、再発・再燃に備えるべきである。
1980年代以降、化学療法、および造血幹細胞移植が発達し、治療成績は向上しつつある。しかし、依然として重篤な疾患であることに変わりはなく、特に高齢者の患者においては治療が困難な場合も多い。なお、化学療法に関しては、制吐剤が改良されたため、施行中のクオリティ・オブ・ライフ (QOL) は改善されている。
白血病の中でも最も緊急性の高いものであった急性前骨髄球性白血病 (APL) は、ビタミンA製剤であるオールトランスレチノイン酸 (ATRA) が著効する(分化誘導療法)ことが発見されて以来、白血病の中では治療成績が良好な疾患となった。
2004年10月には、猛毒として知られる三酸化ヒ素(亜ヒ酸)製剤が再発または難治性の急性前骨髄球性白血病を適応として厚生労働省から承認された。催奇性のため大規模な薬害をおこしたサリドマイドも、白血病の治療薬として現在有望視されている。
[編集] 歴史的な定義の遷移
2007年現在、白血病の定義は過渡期にあり、用語が混乱している点が多々あるため、それらの歴史的な遷移を理解することは非常に有効である。なお、クリアーカットな定義というものは、2007年現在の医学水準では不可能であり、その混乱の中で診療を行い続けなければならない。
もともと、白血病とは末梢血中に白血病細胞(今でいう芽球)が出現する病気として定義された。臨床症状が出現し、医療機関を受診し死亡するまでの期間を観察すると、経過の早い群と遅い群がみられ、それぞれ急性白血病と慢性白血病と分類されるようになった(治療法がある現在ではまず行われない)。経過が早い群では芽球が著しく増加しているのに対して、経過がゆっくりとした群では成熟した白血球が増加していることがわかってきた。そのため、急性白血病は分化障害があり白血球裂孔が存在するのに対して、慢性白血病では分化障害はなく末梢血に様々な分化成熟過程の白血球が出現する(すなわち白血球裂孔が存在しない)と理解されるようになった。末梢血の芽球の成熟過程によって分類されるようになったのである。やがて、白血病は幼若な白血病細胞が骨髄で増殖する腫瘍性の疾患であるということがわかってきた。また、白血球だけではなく、他の血球でも同様の病態が生じることがわかってきて骨髄増殖性疾患という概念が生まれた。
白血病を理解するにおいては、リンパ腫の定義も知っていなければならない。リンパ腫とは、異常なリンパ球がリンパ節をはじめとするリンパ組織で増殖し、そこで腫脹する病気として定義された。そのため、悪性リンパ腫で腫瘍細胞が末梢血中に出現すると、白血病の古典的な定義を満たしてしまい、白血病と言えてしまうこととなる。悪性リンパ腫と白血病が区別できなくなると非常に困るので、そのような病態を悪性リンパ腫の白血化と呼ぶこととなった。定義上は、リンパ腫は白血化しない限り、末梢血に白血病細胞が見られることはない。リンパ球にはリンパ節という器官があるため、非常に病態の解釈が難しい。骨髄でリンパ球の異常が起こり、白血病となりリンパ節に浸潤したのか、リンパ節で異常がおこりそれが白血化し骨髄浸潤をしたのか区別できなくなるのである。2000年のWHO分類以降、リンパ性白血病と悪性リンパ腫を無理に区別することはないということとなっている。実際、慢性リンパ性白血病ではリンパ腫が先行したもので、それが白血化したものに過ぎないと考えられている。WHO分類でも、リンパ性白血病とリンパ腫は本質的には同じもので、両者の区別を行う意義はないと考えられている。しかし、急性リンパ性白血病は症候学にリンパ腫よりも急性骨髄性白血病に近いため、リンパ性白血病をすべてリンパ腫として扱うという考え方は、臨床家には受け入れられない。そのため、古典的には急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病を急性白血病としてまとめるという方法がとられている。
また、骨髄腫という概念もある。これは形質細胞が腫瘍化したものであるが、不思議なことに骨髄で腫瘍化する。リンパ腫という段階が生じているのかも不明であるため、別の概念で理解されている。リンパ系に関して特に定義が混乱しているのは、リンパ球の体内での成熟過程がそこまで解明されていないためである。
近年、がん幹細胞仮説というものが提唱されているが、これは急性骨髄性白血病にて考案された仮説であり、この分野の概念の移り変わりが非常に早いことを示している。WHO分類なども改訂される予定であり、医学の進歩をこれからも感じられる分野である。
[編集] 関連疾病
[編集] 関連項目
- 悪性腫瘍
- 腫瘍学
- 血液学
- 急性白血病
- JALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)
- 骨髄増殖性疾患
- 骨髄移植
- 骨髄バンク
- 全国骨髄バンク推進連絡協議会
- 骨髄移植推進財団
- 日本さい帯血バンクネットワーク
[編集] 参考文献
| 引用番号 | 書籍名 | 発行 | 版 | ページ | 著者 | 出版 |
| (1) | STEP内科(3)代謝・内分泌 第2版 | 2002年11月1日 | 第2版第1刷 | p.74-75 | 監修:板垣 英二 | 海馬書房 |
[編集] 外部リンク
- JALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)
- ヒト白血病の再発は、ゆっくり分裂する白血病幹細胞が原因- 抗がん剤に抵抗性を示す白血病の新しい治療戦略にむけた第一歩 - 2007/10/22 独立行政法人 理化学研究所

