茶漬け
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茶漬け(ちゃづけ)とは、米飯に茶をかけたもののこと[1]。近年ではだし汁もしくは白湯をかけたもののこともそう呼ぶ。通常はお茶漬けと呼ばれる。なお、白湯をかけたものは一般に、湯漬けという。 この料理・もしくは食べ方は一般に、お好みでご飯の上から熱い茶やだし汁をかける。茶をかける場合は煎茶(緑茶)やほうじ茶であることが多い。味の濃い食材を副菜として食をすすめることもあれば、好みで梅干や漬物、鮭や海苔・佃煮・塩辛・山葵・たらこ(辛子明太子)・イクラ・マグロ等の刺身などの具をのせることもある。
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[編集] 茶漬けの文化
日本と同じく米飯を主食とし、茶を嗜む中国においては、飯に茶をかけて食べるという食習慣はなく、一般的な中国人は、茶漬けという食習慣を知ったときかなり驚くようである[2]。
一般に茶漬けと言えば、熱い液体(熱い茶や熱いだし汁)をかけるものであるが、盛夏などには、よく冷えた麦茶などをかけて、冷たい食感を楽しみながら食べる人もいる[3]。
[編集] 世代とお茶漬け
古くから食べられていたのは、名の由来の通り、熱い白湯や茶をかけたものである。その手軽さから軽便食としては元より、豪勢なご馳走を食べた後の後口をさっぱりさせるため、また山岳食としても長らく親しまれている。これらでは、冷えて固くなった飯を急いで食べるために、飯だけを詰めた弁当箱に茶を掛ける人も見られる。
しかし、若い世代には市販のインスタント茶漬けのみを小さい頃から食べ慣れている事から、ご飯にインスタント食品の同製品でなく味のしない「お茶」をかけるのを好まない者、知らない者もいる。ただ1990年代以降に日本で発生した朝粥ブームもあって、粥の類似料理である茶漬けに凝る人も見られた。
近年では、熱いお茶や白湯の代わりに、冷たいお茶をかけた冷やし茶漬けなども見られる。
[編集] 歴史
[編集] 湯漬けと水飯
飯に水や湯、汁をかけるという供食方法が、日本への稲作、米食文化伝来とともに始まったことは確実である。乙巳の変の折、最初に蘇我入鹿の暗殺を命じられた者が宮中に赴く前、水をかけた飯を飲み込んだ、という逸話からも伺うことができる。時代が下った平安時代、『枕草子』や『源氏物語』などの文学作品にも湯漬けが登場する。冷や飯に水をかけたものは「水飯」(すいはん)と言い、源氏物語でも光源氏が食べたという記述がある。また、『今昔物語』、『宇治拾遺物語』には、肥満に悩む貴族・三条中納言と湯漬け飯の逸話が登場する。医師にダイエット方法を尋ねた中納言は、湯漬けと水漬けを食べてカロリーを制限する方法を勧められる。しかし鮎の熟れ鮨やウリの干物で水漬けを食べたところ、あまりの美味さに食べ過ぎて余計に太ってしまったという。
当時は炊いた飯は、お櫃にうつしてから食すのが一般的だった。当然、保温機能を持つ電気炊飯器や電子レンジなどが存在するはずもなく、炊き立ての飯も時間の経過ともに冷える一方であった。冷や飯は温度も下がり、水分も減少して食感が失われる。このため、冷や飯を美味しく食べる手段としても、熱い湯を掛けて飯を暖めたり水分を補う湯漬けは非常に有用であった。
室町幕府の将軍足利義政も、コンブや椎茸でだしをとった湯を、水で洗った飯にかける湯漬けを特に好んだという[4]。
[編集] 茶漬けの歴史
お茶漬けの始まりは、煎茶や番茶が普及し、茶が庶民の嗜好品として定着した江戸時代中期以降と言われている。煎茶は若干のグルタミン酸ナトリウム(うまみ成分)が含まれており、独特の芳香と相まって白湯を掛けるより美味である。今日の茶漬けの直接の始祖は、当時商家に奉公していた使用人(奉公人)らがその仕事の合間に食事を極めて迅速に済ませる為に、とった食事法であるといわれている。当時の奉公人らは一日の殆どを労働に充てており、また食事時間も上役に管理されていたため、自然とこのような食事形態が発生した。奉公先の質素な食事の中で「漬け物」は、奉公人にとって自由に摂れるほぼ唯一の副菜(おかず)であり、巨大なサイズの大鉢などに山のように盛られることが多かった。そのことも、お茶漬という食形態の定着に大いに関係したと推測される。また、元禄時代頃より、茶漬けを出す店として「茶漬屋」も出現し、庶民のファストフードとして親しまれた。
昭和初期の風俗を描いた永井荷風の名作「濹東綺譚」においては、玉の井の私娼が、配達されたお櫃入りの冷や飯とアルミ鍋に盛られた薩摩芋の煮付けを食べるにあたり、火鉢に掛けたアルミ鍋の薩摩芋、山盛りの沢庵とともに、茶漬けをさらさら掻きこむ描写が描かれている。
このような事からお茶漬けは、下層階級の食事形態とされ支配階級以上の家庭では大っぴらには食べず、やむを得ない場合の軽食とされた。[要出典]しかし、実利を尊ぶ庶民には、お茶漬けはその利便性から非常に重宝がられ普及した。
[編集] インスタント茶漬け
1952年には、画期的な商品であるインスタントのお茶漬け、永谷園の「お茶づけ海苔」が考案、発売された(ただし永谷園の会社設立は翌年である)。これらは乾燥させた具(かやく)と茶(抹茶)や出し汁の粉末を混ぜたもので、ご飯の上にかけて湯を注ぐとそのまま茶漬けになるという簡便な製品である。
1990年代以降、このインスタントお茶漬けでは、実験的にバラエティーに富んだ具材のものが開発・発売されている。「ラーメン茶漬け」、「中華茶漬け」、「ウーロン茶漬け」などである。元より茶漬けが気取らない喫食方法であるがために、それらも含めてコンビニエンスストアやスーパーマーケットの定番商品の一つになっている。
インスタント茶漬けに入っているあられであるが、この原型は京都のぶぶづけに求める事ができる。ぶぶづけでは、米粉から作られたあられや餅を揚げたおかきが加えられ、香ばしさを添えている。永谷園の創業者でインスタントお茶漬けのパイオニアである永谷嘉男が、父親の助言により、インスタント茶漬けにあられを取り入れたという。美味しさもさる事ながら、保管中の湿気を取るという意味でも好都合であり、他のメーカーも追随した。
[編集] 茶漬けにまつわる儀礼
茶漬けは京都弁でぶぶづけとも呼ばれるが、京都で他人の家を訪問したときに「ぶぶづけでもいかがどすか」と勧められたり出されたりした場合、それはたいていの場合において暗に帰宅を催促しているものである。勧められた場合は丁重に断って帰宅するか、実際に出された場合には食べ終わったら退散することが好ましいとされている。この場合はお代わりを要求したりはしないのが無難であり、また常識とされる。なお、これは、食事のしめの一つである茶漬けを出すことで、終わり(長居の終わりや会話の終わり)を指しているとされている。
食品メーカーの永谷園は1990年代末より、お茶漬けを豪快に食べるコマーシャルを展開、美男の広告代理店社員や公募された一般の消費者等による「フーフー、ジュルジュル、ハフハフ、モシャモシャ」と音を強調したシリーズをテレビ放映、ラジオでも音のみの広告を展開した。同シリーズは、音が汚らしいという不評も聞かれはしたが、それ以上に視聴者に食欲をそそらせる事に成功したともいわれる。
庶民の間で愛されるお茶漬けだが、これを忌み嫌う習俗も存在する。かつての日本では、樵、牛方、馬方、マタギ、鉱山掘りなど、山中で危険な肉体労働に従事する者は「汁かけ飯」を極端に忌み嫌った。仕事に「味噌をつける」ことになり、縁起が悪いからという。牛方が連れ立って朝食をとる際、一人でも飯に汁をかけた者がいるとその日の旅程は中止になり、滞在費はその汁かけ飯を作ったものが負担した。ただ、「汁かけ飯」ではなく、「飯を入れた汁」は問題が無かった。トンネル掘りの作業員が「汁かけ飯」「茶漬け」を忌み嫌う有様は、「黒部の太陽 (テレビドラマ)」でも描写されている。
[編集] 茶漬けに類似した料理
室町時代末期頃には芳飯(法飯とも書く)という料理が出現した。これは白飯もしくは混ぜご飯に七種類の具(野菜類が多い)を乗せ、その上から湯桶に入ったお焦げにだし汁を加えたものを掛けた料理である。正式な本膳料理や精進料理にも供され、おかわりする事も可能な料理であった。現在でも長野県善光寺等で精進料理の一種として供されたり、鹿児島県の奄美大島には鶏飯(けいはん)、沖縄県には菜飯(セーファン)という芳飯に類似した料理が残されている。
[編集] 茶漬けの影響を受けた料理
明治時代の名古屋市では、「ひつまぶし」という鰻料理が生まれた。最後はお茶漬けにして食べる事とされている。
詳細は「ひつまぶし」を参照
[編集] 茶漬けにまつわる話題
- 戦国時代の武将織田信長などは出陣の前に湯漬けを食べたという話がある。
- 江戸時代の高級料亭八百善では一杯一両二分という高額なお茶漬けを客に出したことがある。茶漬けに合う水を飛脚でわざわざ取り寄せたためこの値段になったという。
- 明治の文豪、森鴎外は、饅頭茶漬けが好物だった。理由は、大の甘党の上に、ドイツ留学中に細菌を顕微鏡で見て以来潔癖症になってしまったため。饅頭を四つにわけてご飯の上に載せ、煮えたぎった煎茶を掛けて食べたという。
- 新宿「すずや」の「とんかつ茶漬け」は特異な茶漬けの例として有名である。
[編集] 出典・脚注
- ^ 広辞苑「飯に熱い茶をかけたもの。茶漬飯」
- ^ 語学春秋社『かがやく受験生たちの物語(望月光)』第5章 著者が北京の食堂で中国の友人に茶漬けを実演し、大変驚かれるエピソードが紹介されている。
- ^ 昭和期からTVなどで紹介されていたことがある。昭和期にティーバッグ方式の麦茶が広く販売されるようになって以来、日本の家庭では、夏季には冷蔵庫に冷たい麦茶を常時備えているところも多く、冷えた麦茶は手近・手軽な選択肢なのである。なお、冷たい食感を求める場合、炊きたての米飯などは、一旦ざるなどで冷水に通して冷やす方法がある。米飯が熱いと、冷たい茶と混じった段階で全体的に生ぬるくなり、冷たい食感とならない。夏季に冷たい茶漬けを好む人がいるのは、夏季には熱い麺類の代わりに冷やし中華や冷たい盛そば・ざるそば類のほうを好む人々がいるのと同じ原理であると言えよう。
- ^ NHK教育『歴史に好奇心 あの人は何を食べてきたか(2)足利義政の湯漬け』


