非正規雇用

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非正規雇用(ひせいきこよう)とは、期間を定めた短期契約で職員を雇う雇用形態。期間を定めない雇用契約を結ぶ正規雇用の対義語。非典型雇用などともいう。

日本では、非正規雇用の職員にはいわゆるパート(パートタイマー)、アルバイト契約社員派遣社員が含まれる。

目次

[編集] 世界における経緯

産業革命以降、産業の中心が工業となり、フルタイム労働者労働力の中核となった。また、この過程で男性は仕事、女性は家庭という性的な役割モデルが確立されていく。

ところが、第二次世界大戦以降、サービス産業が成長していくことにより変化が起こる。サービス産業は労働需要の変化が激しく、1日の中でも需要が一定しない特色を持つ(例えば、スーパーレジでは時間帯によって必要な労働力が変わる)。そのため、サービス産業はフルタイム労働者よりも、非正規雇用であるパートタイム労働者の方が都合が良かった。また、女性の社会進出が進んでいったが、一方で女性は家事も担っていたためにフルタイムで働くのが難しく、パートタイムは都合が良かった。

こうして、パートタイム労働者は労働市場の中で規模を拡大していったが、一方で待遇格差など様々な問題も生じることになる[1]

[編集] 日本での経緯

戦後、工業が発達するに従って労働力が足りなくなると、農家の次男、それでも足りなくなると主婦をパートタイム労働者として雇うようになる。

その後、バブル経済崩壊後の平成不況では、コスト削減の圧力から正規雇用(フルタイム労働)である正社員の採用を抑制し、非正規雇用の非正社員を増やすことで、業務に対応していくようになっていく[2]

労働者数の推移をみると、1980年代から雇用者に占める非正社員の比率は少しずつ増加し、1990年に初めて20%を超えた。以降は、ほぼ横這いで推移していたが、1990年代後半になると増加傾向が著しくなり、1999年に25%、2003年には30%を超えた。これは主に女子学生、中年女性のパート・アルバイトが増加したことと、男女(特に女性)ともに派遣・契約職員が増加したためである[2]

2008年10~12月期平均データでは過去最高34.6%を記録し、3人に1人超を占めるようになる。また、2008年版青少年白書では、10代後半の非正規雇率は約7割と報告している。

[編集] 待遇への取り組み

※アメリカやヨーロッパには、日本や韓国のような正規、非正規という明確な区分はない[1]

[編集] ヨーロッパ

早い段階から、フルタイム社員とパートタイム社員の均等待遇(同一労働同一賃金)の動きがある。フランス1981年ドイツ1985年に差別的取り扱いを禁止している。欧州連合(EU)では、1997年にパートタイム労働指令が発令された。これにより、パートタイムを理由とした差別の禁止と、時間比例の原則を適用することとなっている。背景として、産業別の労働協約と賃金体系があり、フルタイムとパートタイムとで賃金が違うということがあまりなかったことが挙げられている[1]

企業の側は、賃金に対しては抵抗をせず、年金については一部抵抗した。これは、年金にかかるコストがパートタイムの方がかかるためである(例えば一人のフルタイムを30年雇った場合と、30人のパートタイムを1年ごとに雇った場合とでは、同じ労働量に対して後者の方が事務コスト等が高くなる)[1]

労働組合の側は、フルタイム社員の取り分が減るとして抵抗した[1]

[編集] アメリカ

均等待遇という原則は法制化されていない。これは、それぞれの雇用形態は企業と労働者の間の契約で取り決められたものだから、政府が法律で介入することはしないという考え方による。ただし、多くの産業別労働組合内でペイ・エクイティ原則が整備されている。よって、同じ仕事をしながら賃金に大きな差が出るということはありえない[3]

また、アメリカでの不平等とは人種や性、年齢といった自分で選択できないものであり、フルタイム、パートタイムといった雇用は選択の結果という考え方がある(そのため、人種、性等での雇用差別への法律での対応はなされている)。

そのため、労働者が広域な労働組合を組織し、企業や地方自治体に待遇改善を図る方向で動いている[1]

[編集] 韓国

2006年11月30日に国会を通過・成立した「非正規職保護法」がある。(1)雇用期間が2年を超えた有期雇用者は無期雇用とし、派遣労働者は直接雇用とすること、(2)賃金・勤務条件で正社員と不当に差別してはならないといった内容。

韓国では1997年の経済危機をきっかけに非正規化が一気に進み、韓国の非正規社員率は55パーセントと日本の過去最高である33パーセントをはるかに超える高い状況だったこともあり、法が成立したが、実際には非正社員が2年勤務の法実施の直前に大量にクビ切りしている事例が増えている。企業側にとっての抜け道と不備がある法案で、非正規雇用の長期化は避けられたが、逆に継続雇用に支障をきたしているため、労働者全体の地位向上にはあまり効果が出ていないことが伝えられている[4]

また、この法の適用が大企業に限られていて効果が限定的で、労働者の固着化・外注化が進むなど却って非正規職労働者に不利にはたらく、といった批判も出ている。

平均月収88万ウォン程度で暮らす若者を指してある社会学者が名づけた「88万ウォン世代(88만원 세대)」という語が流行語となるなど、ワーキングプアは韓国でも大きな社会問題である。

[編集] 日本

非正規雇用から正規雇用への転換については、制度自体がない企業も多く、制度がある企業でも適用例はさらに少ないのが実情である。また多くの会社が非正規雇用に対する差別や冷遇は当然という認識があり、即戦力として扱えるスキルをもっていないと正社員と同様の収入になる事は難しい。

ただし、一部では2002年から2007年までの景気回復による人手不足から、小売・流通業のように非正規雇用から正規雇用へと転換する動きがあった。小売・流通業は、出店等による人材不足感が高まっており、例えば

などの動きがあった。

また、他の産業では

といった動きや、前述の小売業や外食産業で人手不足を背景としたパート待遇の改善(試用期間を経た正社員採用など)の動きについての報告(2008年4月時点)がある[7]

一方では、正社員の中にも「名ばかり正社員」と言われる、非正規社員と大差ない給与で、雇用保険や厚生年金に未加入で、昇給やボーナスもない労働者が目立つようになっており、正社員も非正規社員と同等の劣悪な労働環境に追い込まれるケースが増加している。

従来は、労働組合正社員のためのものという認識がまかり通っていたが、非正社員の増加及び正社員の組織率の低下を受けて非正社員のための労働組合(首都圏青年ユニオンなど)も誕生し、非正社員の加入を認める労働組合が増加した。しかし、100年に一度と言われる大不況を受け、大企業の労組でさえも非正規労働者の雇い止めを問題にできないでいる。連合幹部によれば、「不況の影響が大き過ぎて正社員の処遇を守るのが精一杯」という[8]

[編集] 日本の事情

[編集] 形態の種類

以下に、日本での形態の種類を記す。

[編集] パート、アルバイト

期間契約労働者の一種。厳密な定義はなく、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)では「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者よりも短い労働者」。労働力調査総務省)では、「勤め先での呼称がパート・アルバイトである者」となっている。企業の現場では、パートとアルバイトを厳密に区別していない場合がある。

一般的に、正社員と比べ労働時間が短く、時間あたりの賃金が安い。労働基準法の適用範囲内だが、現状では多くの面において適用されているとは言い難い。福利厚生などの対象にもならないことが多い。

構成は、学生主婦が多いため、男性よりも女性が多い。また、年齢構成では15~24歳といった若い世代よりも、30、40歳といった中年世代の方が多い[2]

パートは略称で、正式にはパートタイマー。語源英語のPart Timer。

アルバイトについては、アルバイトも参照のこと。

[編集] 契約社員

短期契約で雇われる形態を広く指す。製造現場に勤務する者は特に臨時工期間工などとも呼ばれる。高度な技術を有した専門職の人が1年以内の契約を結んだり、一度退職した職員が再雇用で嘱託社員として雇われる形態も含まれる。固定給のみならず、営業職に多く見られる完全出来高制のような形態もある。

構成は、高齢層の割合が高い。また、若年層でも契約社員になる割合は増えている[2]

[編集] 派遣社員

企業が派遣会社と契約を交わし、派遣会社が雇っている職員が企業に派遣されて業務を処理する形態。指揮命令権は派遣先にある。

長い間、職業安定法の下、きわめて限定的な雇用形態として位置づけられてきており、労働者派遣法の制定により正式に法律で規定されたのは1986年。当初は業種が制限されていたが、1999年、2004年に同法が改正され業種が拡大、それに伴い、派遣職員は契約社員ほどではないが増加している。

構成は、女性と男性とでは女性が多い[2]

労働者派遣事業人材派遣も参照のこと。

[編集] 請負社員

請負社員を参照。

[編集] 賃金体系

  • 正規雇用が年齢給であるのに対し、定期昇給のない職務給である。

[編集] 傾向

  • 大企業と中小企業とでは、中小企業の方が非正規雇用の割合が大きい[9]
  • 男性と女性とでは、女性の方が増加傾向にある。特に若年層でその傾向がある。例えば、バブル景気前(1984年)とバブル崩壊~その後の景気回復(2006年)とを比べると、若年層に占める正規雇用の割合は、男性に比べて女性の方が低下幅が大きい[10]

[編集] その他

1年間の収入合計が103万円を超えた場合、所得税を納める義務が発生するため、パート・アルバイトは賃金を103万円以下に抑えようとすることが多い。

[編集] 特徴

非正規雇用の特徴は、正規雇用に対して

  • 総じて、時間あたりの賃金が安い(例えば、女性出産に伴う就業パターン変化による生涯賃金の推計を行見ても、正社員として働き続ける場合と出産退職後パートタイマーとして再び働き出した場合では、賃金だけで2億円近い差が生まれるとしている)[11]
  • 労働時間が短いことが多い
  • 雇用契約期間が短い
  • 福利厚生が不十分
  • 景気が悪くなれば解雇され、雇用が不安定
  • 正社員になることが困難(フリーターも参照)
  • 女性が多い(特に中高年)
  • 男性は、結婚率が低い(結婚#未婚化・晩婚化参照)

という点が挙げられる。

[編集] 使用者側(雇う側)のメリット・デメリット

メリット

  • 需要や収益の変化に対応した調整を、職員の増減で行いやすい
    アメリカ合衆国では多くの企業であらゆる従業員を容易にレイオフ可能である[1]
    ※日本は正社員の賞与などの賃金や残業代などの労働時間で調整する傾向が強い
    フランスでは解雇制限がある。
  • 時間あたりの賃金が安く、退職金社会保険料を払わないことも多いため、人件費を抑制しやすい[1]
  • 社員の教育費が削減できる

デメリット

  • 知識・技術を社内に蓄積しづらい。製造業では熟練工、サービス業ではいわゆるベテランが育ちにくい
  • 正社員と比べ会社に対する忠誠度・責任感が低い(特に派遣社員は、派遣先の社員ではないため、他社の人間の派遣社員へ忠誠度・責任感を求めること自体ミスマッチといえる)

等が挙げられる。

[編集] 雇用者側(雇われる側)のメリット・デメリット

メリット

  • 自分の都合に合わせて仕事の時間や期間を調整できる[12]
  • 多くの企業に触れて経験を積むことが出来る

デメリット

  • 賃金が安い。賞与が出る場合がほとんどない
    • 仕事の内容が正社員と同じであっても、低賃金である
  • 勤続年数が増えても、仕事の能力が上がっても昇給はほとんどない(=使用者にしてみれば人件費を抑制出来る)
  • 退職金が払われないケースが多い
  • 常に自分自身でスキルアップをはからねばならない
  • 雇用形態が短期契約のため、将来への展望が不安定
    • 短期契約ゆえに単純作業しか割り当てられない場合が多く、職歴になりにくい

等が挙げられる。

[編集] 非正規雇用者の現状

非正規雇用者は極めて弱い立場にある。2000年代は輸出産業である製造業が好調だったが、人手不足は外国人労働者を含む派遣社員を中心に非正規雇用でまかなわれた。そのため、海外市場の減速が製造業を直撃した2008年秋頃から、非正規雇用者の解雇・雇い止めが増加。職を失った多くの非正規雇用者たちが路上へ放り出された。また、製造業以外の職種でも非正規雇用労働者の解雇・雇い止めが進んでいる。

[編集] 中国

中国の非正規雇用の定義は

『非正規就業とは、正規の職場での正式な社員契約を結んだ就労ではない、個人経営者や屋台、露店での販売員、家庭内手工業や企業の臨時契約社員などを指す。』[13]より引用

となっている。このため、例えば起業家も非正規雇用に含まれる[13]

非正規雇用者は少なく見積もっても約1億3000万人いる(2006年時点)と言われ、かれらは社会保障を受けることが出来ないため、社会保障の整備を求める指摘がある[13]

[編集] 脚注

  1. ^ 「均等待遇の国際比較とパート活用の鍵―ヨーロッパ、アメリカ、そして日本」(2004年10月)(水町勇一郎)
  2. ^ 労働力調査」(厚生労働省)による
  3. ^ 雇用環境も福祉も欧米以下!日本は「世界で一番冷たい」格差社会
  4. ^ 2007年12月15日放映 NHKスペシャル「ワーキングプアIII 解決への道」
  5. ^ 『トヨタ 08年春は3500人採用 期間工登用は1200人』2007年3月13日付配信 フジサンケイビジネスアイ
  6. ^ 『<三井住友銀行>派遣社員2000人を正社員化へ』2007年12月6日付配信 毎日新聞
  7. ^ 「激烈!パート獲得大作戦 「お試し」「前給」…あの手この手の流通・外食」『日経ビジネスオンライン』日経BP社、2008年4月30日付配信
  8. ^ 読売新聞 2009年3月19日
  9. ^ 平成14年 就業構造基本調査による
  10. ^ 労働力調査による
  11. ^ 「家族とライフスタイルに関する研究会報告」(平成13年 内閣府
  12. ^ 例えば、第45回関西財政セミナーでは、「主婦などは正規社員にはならず短時間で働きたいという人もいる」という声も上がっている(2007年2月9日付配信 産経新聞より)
  13. ^ 『都市部の非正規就業者、全国で1億3000万人!大卒の起業家もそのなかに―中国』2007年12月22日付配信 Record China
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[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年11月6日 (金) 19:36 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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