飛地
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飛地(とびち、飛び地)とは、国家、都道府県、市町村、市町村の中の町や大字(おおあざ)等の行政区画の一部分が、別の国家や行政区画内に飛び離れて存在するもののこと。
目次 |
[編集] 概説
ある形態を飛地と見なすか見なさないかが、微妙な状況も多々見られる。多くの場合、それは陸地が水面によって分断されている場合である。たとえば、行政区画のごく一部が河川で分断されていて橋などで連絡していない場合飛地として扱うかは意見の分かれるところである。日本では島を含めないが、国家の飛地では島を含める場合もある。
ある行政区画が、同じ陸地に2つ以上の部分に分かれて存在している場合、その両方が海または同一の湖沼に面していても飛地と呼ぶのが普通である。しかし、トルコのイスタンブールなどのように、それらが海峡を介して非常に近接している場合には、飛地と呼ばないことがある。また、飛地が植民地である場合には、領土という観点では飛地であっても、飛地と呼ばないのが普通である。
日本では、住居表示の実施、土地区画整理等に伴う行政区画の変更、市町村合併などにより、飛地は次第に解消される場合もあるが、合併交渉の破綻により細分化される事例もある。
[編集] 飛地ができる要因
封建制下においては、同一の君主の所領が各所に分散していることは珍しくなかった。国民国家形成の際に旧来の領邦の境界を引き継ぐこともあり、その際に領土や行政区画に飛地が残ったという事例がヨーロッパ・インド・日本に多いようである。
その他の要因としては以下のようなものがある。
- 河川の流路変更に因るもの。
- 入植地(新田など)。
- 集落ごとの入会地設定やため池の設置などに因るもの。
- 隣接しない市町村の合併に因るもの
- 領土の買収に因るもの(アメリカ合衆国アラスカ州等)
- 貿易拠点として確保(スペインのセウタ等)
- 防衛拠点として確保(イギリスのジブラルタル等)
[編集] 国家の飛地
- アゼルバイジャン:ナヒチェヴァン自治共和国
- 北東にアルメニア、南西にイラン(東アゼルバイジャン州、西アゼルバイジャン州)が隣接
- アメリカ合衆国:アラスカ州
- 東にカナダユーコン準州、東南にブリティッシュコロンビア州、西にベーリング海峡
- アメリカ合衆国:ロバーツ岬、先端部だけがアメリカ領、ワシントン州に属する。これはアメリカとカナダ(当時はイギリス植民地)が北緯49度を国境線と決めたため、49度線を南に飛び出した岬の先端部分のみがアメリカ領。
- アメリカ合衆国:ミネソタ州レッドレイク・インディアン居住区
- 周囲はカナダとウッズ湖。
- アラブ首長国連邦:ナフワ
- アンゴラ:カビンダ
- イギリス:ジブラルタル
- イタリア:カンピョーネ・ディターリア
- インド:クチビハール
- 周囲はバングラデシュ
- ウズベキスタン:シャイマルダン地区
- 周囲はキルギス(オシュ州カダムジャイ地区)
- ウズベキスタン:ソフ地区
- 周囲はキルギス(オシュ州バトケン地区、カダムジャイ地区)
- オマーン:ムサンダム
- アラブ首長国連邦ラアス・アル=ハイマ首長国とホルムズ海峡に隣接。
- オマーン:マダ
- スペイン:リヴィア(カタルーニャ州ジローナ県の一部)
- スペイン:セウタ
- スペイン:メリリャ
- モロッコ(ナドール)と隣接、地中海に面する
- タジキスタン:ヴォルフ地区
- 周囲はキルギス(オシュ州バトケン地区)。
- 東ティモール:オエクシ
- 周囲はインドネシア(東ヌサ・トゥンガラ州)、北はサヴ海。
- ドイツ:ビューシンゲン
- 周囲はスイス、ライン川に面する。
- バングラデシュ:クチビハール
- 周囲はインド
- ブルネイ:テンブロン
- ベルギー:アントウェルペン州 バールレ=ヘルトホ
- ロシア:カリーニングラード州
- 北にリトアニア、南にポーランド(ヴァルミア・マズールィ県)が隣接する。
[編集] 過去に飛地だった地域
- アラブ連合共和国:シリア
- エジプトとシリアが連邦国家を形成したことにより飛地化。シリアの連合脱退により飛地解消。
- 大韓民国:黄海南道の一部
- ドイツ / プロイセン王国:東プロイセン
- ホーエンツォレルン家が治めるブランデンブルク選帝侯領とプロイセン公国(のちの東プロイセン)が、17世紀に段階的に統一国家プロイセン王国となり、飛地化。1772年、第一次ポーランド分割により間のポーランド領がプロイセン領西プロイセンとなり飛地解消するが、第一次世界大戦によりかつての西プロイセンはポーランド回廊としてポーランド領となり、東プロイセンは再び飛地化。第二次世界大戦中はポーランド西部がドイツに併合され、再度飛地解消。第二次世界大戦後、東プロイセンは隣接するポーランドとソビエト連邦に二分して割譲され、国家単位では飛地とはならなかったが、ソビエト連邦領は隣接するリトアニアではなくロシア共和国の一部とされたため、連邦内共和国単位で飛地となった。ソビエト連邦崩壊後、ロシアの飛地「カリーニングラード州」となった。
- プロイセン王国:ライン地方
- 西ドイツ:西ベルリン
- パキスタン:東パキスタン
- パナマ
- オマーン:グワダル(Gwadar)
[編集] 行政区画の飛地
以下に挙げる飛地はあくまで代表的な例であり、これ以外の小さな飛地は多数存在する。
[編集] 日本
- 山形県寒河江市大字中郷
- 山形県西村山郡大江町大字左沢
- 周囲は寒河江市大字柴橋。
- 茨城県龍ケ崎市馴馬町(女化神社)
- 周囲は牛久市女化町。
- 栃木県那須塩原市板室字三斗小屋温泉(三斗小屋温泉)
- 栃木県佐野市仙波町
- 栃木県河内郡上三川町
- 周囲は下野市。
- 栃木県足利市羽刈町
- 埼玉県行田市大字小敷田
- 周囲は熊谷市池上、上之。
- 埼玉県深谷市横瀬
- 埼玉県熊谷市妻沼小島
- 周囲は群馬県太田市(東方は古戸町、北方は牛沢町、西方は堀口町、押切町)。
- 埼玉県上尾市大字平方
- 周囲は川越市大字東本宿、下老袋。
- 埼玉県さいたま市西区大字宝来
- 周囲は上尾市大字平方、川越市大字古谷上。
- 埼玉県さいたま市岩槻区大字笹久保新田
- 周囲は同市緑区大字高畑、大字上野田。
- 埼玉県比企郡吉見町大字中曽根
- 周囲は熊谷市小八林、箕輪、冑山。
- 埼玉県比企郡嵐山町大字川島
- 周囲は比企郡滑川町大字水房。
- 埼玉県南埼玉郡菖蒲町大字柴山枝郷
- 周囲は南埼玉郡白岡町大字柴山。
- 千葉県我孫子市根戸の一部。
- 周囲は柏市。(柏市根戸、柏市富勢)
- 千葉県船橋市丸山、藤原
- 周囲は鎌ケ谷市。
- 千葉県船橋市潮見町
- 東京都練馬区西大泉町
- 東京都稲城市矢野口(よみうりランド内東京読売巨人軍室内練習場)
- 東京都西多摩郡瑞穂町大字殿ヶ谷(横田基地)
- 周囲は武蔵村山市大字岸。
- 神奈川県川崎市麻生区岡上
- 神奈川県小田原市曽比
- 周囲は南足柄市。
- 新潟県刈羽郡刈羽村大字油田、黒川
- 富山県中新川郡上市町広野新
- 周囲は滑川市小森、本江。
- 福井県三方郡美浜町久々子
- 山梨県南都留郡富士河口湖町船津
- 周囲は富士吉田市新倉。
- 山梨県南都留郡富士河口湖町勝山
- 周囲は富士吉田市上吉田。
- 長野県上伊那郡南箕輪村北沢
- 長野県佐久市平林(2005年3月31日までは南佐久郡臼田町大字平林)
- 三重県尾鷲市須賀利町
- 大阪府池田市空港(大阪国際空港のターミナル近辺など)
- 大阪府豊中市石橋麻田町
- 周囲は池田市石橋、箕面市瀬川。
- 大阪府豊中市蛍池西町3(大阪国際空港の駐機場近辺)
- 周囲は池田市空港。隣接する池田市空港も飛地であり、豊中市の飛地は「飛地に囲まれた飛地」の二重飛地である。
- 大阪府堺市西区築港浜寺西町
- 堺市に属する埋立地。隣接する高石市を経由しなければこの場所へ行けない。
- 大阪府高石市南高砂
- 高石市に属する埋立地。隣接する泉大津市を経由しなければこの場所へ行けない。
- 大阪府泉大津市綾井、および大字名不明の各所(国道26号西、泉北有料道路高架下、雇用葛葉住宅内の数箇所)
- 大阪府泉南郡田尻町泉州空港中
- 関西国際空港の内の田尻町域に属する部分。町内から直接この場所へ行けない。
- 大阪府泉南市泉州空港南
- 関西国際空港の内の泉南市域に属する部分。市内から直接この場所へ行けない。そればかりか、この場所は全域が国際貨物ターミナルなどがある制限区域のため、一般人は足を踏み入れることすらできない。
- 兵庫県伊丹市小阪田 (大阪空港駅近辺)
- 周囲は大阪府池田市空港と大阪府豊中市蛍池西町3。隣接する豊中市蛍池西町3は池田市に囲まれた飛地である。府県にまたがる飛地である。
- 兵庫県川西市満願寺町
- 周囲は宝塚市。
- 奈良県北葛城郡河合町大字佐味田
- 周囲は広陵町大字寺戸。
- 和歌山県東牟婁郡北山村(全域)、新宮市熊野川町玉置口、熊野川町嶋津
- 和歌山県橋本市高野口町名倉(一部)
- 広島県尾道市浦崎町、百島町
- 周囲は福山市。
- 広島県大竹市栗谷町奥谷尻
- 周囲は廿日市市大野奴メリ谷。
- 福岡県北九州市小倉南区空港北町
- 北九州空港の内の北九州市域に属する部分。市内から直接この場所へ行けない。
- 長崎県佐世保市浅子町、旧小佐々町地区
- 熊本県荒尾市本井手
- 熊本県荒尾市原万田
- 周囲は福岡県大牟田市船津町。背景は本井手の飛地と同じ。
- 鹿児島県阿久根市鶴川内
- 周囲は出水市野田町上名。
- 鹿児島県志布志市有明町野神(大隅カントリークラブ)等
- 周囲は大崎町野方。「飛地」という名称のバス停がある。
- 鹿児島県曽於郡大崎町井俣
- 周囲は志布志市有明町原田、野神。
[編集] 市町村合併(平成の大合併)による飛地事例
いずれも非隣接自治体同士が合併したための飛地である。飛地になる予定も含む。
[編集] 既合併・既編入
- 北海道釧路市(2005年10月11日新設合併)(釧路市、阿寒町、音別町)
- 音別地区が飛地。
- 北海道伊達市(2006年3月1日編入合併)(伊達市、大滝村)
- 大滝地区が飛地。
- 北海道沙流郡日高町(2006年3月1日新設合併)(門別町、日高町)
- 旧・日高町地区が飛地。合併前の門別町役場が新しい日高町役場になったため。
- 青森県北津軽郡中泊町(2005年3月28日新設合併)(中里町、小泊村)
- 小泊地区が飛地。
- 青森県五所川原市(2005年3月28日新設合併)(旧・五所川原市、金木町、市浦村)
- 市浦地区が飛地。
- 青森県東津軽郡外ヶ浜町(2005年3月28日新設合併)(蟹田町、平舘村、三厩村)
- 三厩地区が飛地。
- 群馬県高崎市(2006年1月23日編入合併)(高崎市、倉渕村、箕郷町、群馬町、新町:後に榛名町も編入)
- 新町地区が飛地。
- 群馬県桐生市(2005年6月13日編入合併)(桐生市、新里村、黒保根村)
- 新里地区・黒保根地区が飛地。
- 岐阜県可児市(2005年5月1日編入合併)(可児市、兼山町)
- 兼山地区が飛地。
- 岐阜県大垣市(2006年3月27日編入合併)(大垣市、上石津町、墨俣町)
- 上石津地区、墨俣地区が別々の飛地。
- 徳島県三好市(2006年3月1日新設合併)(三野町、池田町、山城町、井川町、東祖谷山村、西祖谷山村)
- 三野地区が飛地。
- 鹿児島県奄美市(2006年3月20日新設合併)(名瀬市、笠利町、住用村)
- 笠利地区が飛地。
- 新潟県上越市(2005年1月1日編入合併)(上越市、中郷村、他)
[編集] 合併によるその他の飛地
[編集] 合併以外の事情により発生した飛地
[編集] 過去に飛地だった地域
[編集] 合併により解消された飛地
- 青森県むつ市宇曽利湖、恐山菩提寺周辺
- 青森県弘前市大字国吉(等)
- 福島県福島市立子山
- 群馬県高崎市 旧倉渕村地区
- 埼玉県川口市新郷地区
- 埼玉県上福岡市南台
- 神奈川県相模原市 旧相模湖町・津久井町地区
- 長野県飯田市座光寺
- 静岡県静岡市清水区蒲原
- 静岡県浜松市篠原町(一部)
- 新潟県新潟市岩室地区(旧・西蒲原郡岩室村)
- 福井県丹生郡朝日町小川(越知神社)
- 三重県一志郡三雲町米ノ庄地区
- 兵庫県津名郡淡路町浦、仮屋、久留麻、釜口
- 広島県福山市内海町、内海町イ、内海町ハ、内海町ロ
- 周囲は沼隈町。
- 2005年2月1日の合併(沼隈町の福山市編入)により飛地状態解消。
- 広島県呉市下蒲刈町(下蒲刈島)
- 山口県新南陽市高瀬・和田地区
- 香川県三豊郡大野原町青岡
- 徳島県麻植郡山川町字西野峰
- 佐賀県東松浦郡浜玉町鳥巣
- 鹿児島県鹿児島市東桜島地区
- 鹿児島県薩摩郡宮之城町柊野
- 鹿児島県出水市荘
- 鹿児島県出水郡高尾野町江内
- 沖縄県那覇市首里(旧・首里市)
- 真和志市の那覇市編入により飛地解消。
[編集] 日本以外
- ケンタッキー州(アメリカ合衆国):フルトン郡の一部
- パレスチナ自治区(イスラエル):ガザ地区
- 周囲はエジプトとイスラエル本土。
- 京畿道安山市大阜島(大韓民国)
- 仁川広域市江華郡(大韓民国)
- 橋でつながっている先は京畿道金浦市。もともとは京畿道所属であったが、1995年に仁川広域市へに編入されたため飛地になった。
- 大邱広域市達城郡多獅邑、河濱面(大韓民国)
- 完州郡伊西面(大韓民国全羅北道)
- 河北省(中華人民共和国):三河市など
- 朝陽区(中華人民共和国北京直轄市):北京首都空港
- 周囲は順義区。
- ブレーメン州(ドイツ):ブレーマーハーフェン
- スルプスカ共和国(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
- ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦(国家であるボスニア・ヘルツェゴビナ共和国とは別)とブルチコ行政区により領域がほぼ二等分されている。
[編集] 過去に飛地だった地域
- 分割占領時代のドイツのアメリカ軍占領地区:ブレーメン州
- 周囲はイギリス軍占領地区。米英仏占領地区を領土とする西ドイツの成立により解消。
[編集] 脚注
- ^ これら4箇所の飛地は、市域確定時に該当する土地の所有者が住んでいた市に帰属したため。朝日放送ムーブ!の「ムーブ!の疑問」より。
- ^ 浅子町と小佐々町(2006年3月31日、佐世保市に編入合併)は陸続きの半島で、佐世保市の他の地域には佐々町を経由しなければ行けない。現在、鹿町町と北松浦郡江迎町が佐世保市と合併協議を行っており、合併が実現すれば地図上では飛地状態ではなくなるものの、浅子町・小佐々町から佐世保市中心部へ最短距離で移動するために、佐々町を経由しなければならない現状は変わらない。
- ^ 江戸時代に、当時の三池藩が灌漑用水を融通してもらった見返りに肥後藩に提供したもの
[編集] 参考文献
- 吉田一郎著 『世界飛び地大全―不思議な国境線の舞台裏』 社会評論社 2006年 432頁 ISBN 4-7845-0971-2

