Honda IMAシステム
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Honda IMAシステム(ホンダ・アイエムエー・システム、Honda Integrated Motor Assist System)とは、本田技研工業が開発した小型・普通乗用車用ハイブリッドシステムである。
目次 |
[編集] 概要
Honda IMAシステム(以下IMAと記述)は、ガソリンエンジンと電気モーターの双方の動力源を持ち、ハイブリッドシステムの種類としては、エンジンとモーター両方が並行して駆動する、パラレル型に分類される。電力は、自動車の制動、巡航運転時に発生するエネルギーを回生、余剰エネルギーをモーターが発電機となって回収し、バッテリーに充電するため、充電する作業は必要としない。エネルギー補給はガソリンの給油のみである。
主動力源はエンジンであり、モーターは必要に応じてアシストし、エンジンのトルクが不足する状況時にモーターが駆動しトルクが増大される。発進時や加速時などで余剰トルクが不要になり、燃費が改善できるようになった。停車時に作動するオートアイドルストップシステムと、IMAに採用されているエンジンの低燃費性能により燃費が向上し、フライホイールの役目をなす薄型ローターと一体化したモーターが動的に負荷変動を吸収するため、エンジンの回転は非常に滑らかなものとなっている。
採用車種としては、日本ではインサイト、シビックハイブリッドの2車種、北米ではアコードハイブリッドを加えた3車種であったが、2008年現在ではアコードハイブリッドは販売終了しており、二代目インサイトと二代目シビックハイブリッドが販売されている。
インサイト及びシビックハイブリッドの燃費性能は、国土交通省の「平成16年燃費の良いガソリン乗用車ランキング」[1]でそれぞれ1位と3位(10・15モード燃費値:36.0km/L及び31.0km/L)であった。アコードハイブリッドは、VCM(可変シリンダーシステム)を採用したV6・3.0Lエンジンとの組み合わせで、ガソリンエンジン搭載車に対し15馬力上回る255馬力の出力を発揮しながら、4気筒エンジン搭載車と同等の燃費性能を得ている。
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現行シビックハイブリッド(2007年ニュルブルクリンク24時間レース参戦車両) |
[編集] 構成
主動力源はあくまでエンジンであり、モーターアシスト機構を組み込んで、システムが作り上げられ、モーターは補助動力として設計されている。モーター・バッテリーは小型・軽量なものを採用し、シンプルなものとなっている。
[編集] エンジン
超低燃費を狙うには、エンジン単体で燃費性能を向上することも要求されることになる。
1997年にIMAが発表された際のコンセプトカー「J-VX」に採用されたエンジンは、VTEC機構とガソリン直噴機構を採用して低燃費を図った直列3気筒 SOHC 1.0L リーンバーンエンジンであった。1999年に発売されたインサイトに搭載されたECA型は、基本形式は同様であったがガソリン直噴機構は採用されなかった。
2001年に発売されたシビックハイブリッドには、さらに進んだLDA型 直列4気筒 SOHC 1.3L リーンバーンエンジンが搭載された。同年発売されたフィットのエンジンと同様にi-DSIを採用し、回生ブレーキ性能向上のため気筒休止VTECシステムや、樹脂製パーツや超小型パーツ等を導入して軽量化も図られている。気筒休止VTECシステムとは、自動車の減速時に効率良くモーターがエネルギーを回生できるよう、4気筒のうち3気筒のバルブをVTEC機構で休止させることによってエンジン出力と拮抗しないようにし、エネルギーの回生ロスを低減するよう設計されたものである。
2004年に北米で発売されたアコードハイブリッドは、J30A型 V型6気筒 SOHC 3.0Lエンジンと上記2車種と比較して大排気量のエンジンを搭載しているが、低燃費技術のi-VTECとVCMを採用、VCMによって巡航時は前側3気筒のみで駆動することによって低燃費を実現している。
2005年に発売された2代目シビックハイブリッドでは基本は初代と同じ1.3Lエンジンであるが3ステージi-VTECとなり全気筒休止も可能となった。全気筒休止により回生の効率向上し、低速クルーズと緩加速時にモーターのみでの走行モードの追加がなされ、3ステージi-VTECによる低速カム高速カムの切り替えによりエンジン出力が向上している。また、結果的にNOx対策向上をも含め、リーンバーンではなく理論空燃比に近づいた。
2009年に発売された2代目インサイトでは、上記シビックハイブリッドのエンジンを基本とするが、i-VTECは3ステージから2ステージに変更となり、気筒休止と通常動作の切り替えのみとなった。そのため、シビックハイブリッドに比べて最大出力は若干低下している。引き続き、低速クルーズでモーターのみの走行が可能になっている。
[編集] モーター
薄型DCブラシレスモータ(交流同期電動機)を採用している。インナーローター式でエンジンクランク軸に対しては直結で減速ギアは持たない。使用する電圧はインサイトでは144Vであった。サイズは幅が60mmと薄型で軽量であり、それをエンジンに直結させている。エンジン直結という性格上、プリウスなどと比較して高速型モータである。また同様の理由でレイアウト上、軸方向の薄型化が必須である。このため軸方向が短い集中巻で、リラクタンストルク(モーターのトルクはマグネットトルクとリラクタンストルクの和で決まる)を利用しない表面磁石式モータ (SPM) の設計思想になっている。始動/停止と頻繁に繰り返されるであろうことを考慮し、ブラシレス化することによって耐久性を高めている。エンジンでは車種によって互いに違うものが搭載されているのに対し、モーターに関しては、どの車種においても上述の概要を有するものが一貫して採用されている。とはいえ、モーターの改良は行われており、シビックハイブリッドのモーターを例に挙げると、ローターを焼結拡散結合製法なる製法で製造[2]したり、銅線の形状を丸から四角にすることで高密度化を図ったり,内部の磁気回路に改良の手を加えることで、従来のインサイト用のモーターと比較し、アシストトルク・回生トルク共に約30%向上したという。
2代目シビックハイブリッドからは磁石をSPM(表面磁石型)からIPM(埋め込み磁石型)に変更したことにより、リラクタンストルクの有効利用も可能になり、トルク、出力ともに大幅な性能向上が行われている。
144Vという電圧は、国内の法律により以前制限されていた電圧であり、法律の改正(電気用品安全法)を受け、トヨタは現行のハイブリッドカーの使用電圧を既に前モデルより上昇させている。動力回生性能の向上においては、電圧はより高いほうが発生出力に対しコスト的に廉価に構成ができることから、ドライブ電圧は順次あがっていく方向にあり、2代目シビックハイブリッドでは150Vに達しているが、2代目インサイトはバッテリーセル削減の為か100Vになっている。それにあわせてモーター最大出力も2代目シビックハイブリッドに対して減少した。
[編集] バッテリー
1999年にインサイトに採用された蓄電装置はコストの低いニッケル水素(Ni-MH)電池が「IMAバッテリー」と名付けられ採用されている。電池は円筒形モジュールであり、個々のセルが20個直列に接続されて1つのユニットを構成し、3時間放電率で6.0Ahの容量を持ち、パナソニックEVエナジー製である。モーター同様に小型化が図られ、ラゲッジスペース下・後輪の間のスペースに設置されている。バッテリーのそばにPCU(パワーコントロールユニット:モーター及びバッテリーを制御する装置)が配置されている。
シビックハイブリッド用のバッテリーもニッケル水素(Ni-MH)電池であるが、改良は様々な面で図られて更なる小型化で容積を約30%削減し、性能向上も図られた。このIMAバッテリーにPCUを統合、IPU(インテリジェントパワーユニット)と名付けられ、電装ユニット全体の容積を約50%削減でき、このIPUをリヤシート裏に沿って設置し、4ドアセダンとして実用になる程度のトランクスペースが確保できるようにした。
[編集] キャパシタ
コンセプトカーのJ-VXには、「ウルトラキャパシタ」と名付けられた蓄電装置を採用していた。ウルトラキャパシタとは一種のコンデンサであり、充放電時のエネルギーロスが少ない・充電時間が短い・寿命が長い、と長所が多く、次世代の蓄電装置と言われている[3]。しかしコストが非常に高いのが最大の難点であり、量産車での採用は見送られている。
ただし、大容量低インピーダンスのキャパシタは、バッテリーの等価インピーダンスを下げる目的で、現行のどのハイブリッド車のパワーユニットにも必ず搭載されている。
[編集] 動作
- 始動
- エンジンキーを捻ると、まず12V補機バッテリーからIMAシステムのIPUに電力が供給され、IMAバッテリーの力でIMAモーターを回しガソリンエンジンを始動する。一般的なセルモーターを使わずに始動するため、セルモーターの回転する高音や大きな振動は発生しない。
- 発進
- エンジン:ON モーター:ON
- エンジンをモーターがアシストする。オートアイドルストップによりエンジンが停止していた場合、エンジンが始動する。全気筒休止機構がない場合、エンジン出力のみを駆動力とする。
- 2代目インサイトからクラッチ制御が高度化され、クラッチの早掴みを行っている。モーターのトルクを有効利用して低回転からクラッチをつなぎ半クラッチ時間を短縮すると、摩擦による燃費低下の抑制、発進・加速レスポンスの向上がもたらされる。
- 加速
- エンジン:ON モーター:ON
- エンジンをモーターがアシストする。エンジンは低回転域のトルクが低いため、0回転から最大トルクを発生する電気モーターによるアシストは、発進時同様非常に効率的である。
- 巡航
- エンジン:ON モーター:OFF
- 基本的にエンジンからの駆動力のみで巡航走行をする。モーターは停止し、駆動力に関与しない。巡航時の燃費対策は、エンジンの低燃費技術に依存することとなる。巡航時からアクセルを踏み込んで加速状態となれば、再びモーターはアシストを開始する。
- 低速巡航
- エンジン:OFF モーター:ON
- 時速30~40km程度の巡航の際、IPUの条件判断により、エンジンが全気筒休止しモーターのみの駆動となる。全気筒休止機構がない場合このモードはない。
- 減速・制動
- エンジン:OFF モーター:ON(発電)
- 従来の自動車では減速・制動する際に発生するエネルギーを捨てていたが、IMAではモーターが回生ブレーキとなり、バッテリーが充電される。このときエンジンが全気筒休止することでエネルギー回生効率が高められている。全気筒休止機構がない場合、ブレーキ倍力装置にインテークの負圧が必要なためエンジンが駆動するが、燃料噴射はカットされる。
- 停車
- エンジン:OFF モーター:OFF
- オートアイドルストップによってエンジンが自動的に停止する。
- ただしバッテリー残量が不足している場合、エンジンが駆動してバッテリーへの充電が行われる。他にも、セレクタレバーが「P」「R」「L」のいずれかのレンジにある場合、あるいはエアコン稼働負荷が大きかったりエンジンが冷えているなどの場合はIPUの条件判断により、オートアイドルストップがキャンセルされる。
[編集] トヨタ・THSとの比較
ハイブリッドシステムの中で、代表的なトヨタ自動車のTHS(Toyota Hybrid System)と比較してみる。
[編集] カテゴリの差異
IMAは、エンジン・モーター両方が並行して駆動する「パラレル方式」と呼ばれるカテゴリに入る。THSは、エンジン・モーター両方が並行して駆動することもできるが、エンジンの駆動力で発電し、その電力でモーターにより車輪を駆動し、エンジンは直接車両駆動に関与しない「シリーズ方式」の性格をも備える。「スプリット方式」もしくは「シリーズ・パラレル併用型」に分類される、THSは、シリーズ型・パラレル型両方の特徴を持つ物で、その比率を変える事で、変速を行っていく。 THSは、エンジンと発電部とモーター駆動部が個々独立していて機構は複雑だが、エネルギーの変換という観点から設計自由度が大きい。
[編集] 構成の差異
IMAが広義のパラレル型を採用し、モーターを補助動力という位置付けにしているのは、システムの小型・軽量・シンプル性によって車両へのシステム導入の容易さを狙った設計思想による。現にIMA搭載車にはその特徴が表れている。基本構成はエンジン・モーター・バッテリー・PCU(パワーコントロールユニット)などの制御機器である。特にエンジン以外は小型・軽量であるが、その分性能はTHSと比べて控えめになってしまう。対してTHSの基本構成はエンジン・モーター・バッテリー・PCUに加え、発電機(IMAではモーターが発電機としても動作する)となっている。THSは上述のような性格から、IMAと比較するとどうしても大型・複雑となってしまう。 ただし、THSには内燃機関エンジンが苦手な低回転時のトルクをエンジン回転(速度と関係なく最適な回転数となる)=>発電=>モーターというルートで稼げる利点がある。モーター・バッテリーの出力・容量は、目指す目的が異なるため、IMAのものより一般的に上になる。
THSの変速機は、動力分割機構・発電機・モーター・減速機で構成される非常に特殊なものである。この機構は、エンジン・モーターを無段階に変速できる機能を持つ、一種のCVT(無段変速機)であり、一般的なCVTとはかなり構造が違う。しかし、THSそのものが変速機となっている為に、パラレルハイブリッドとは違って変速機を組み合わせる必要は無い。その為、この機構に関しては高価なトルクコンバータを使わない分だけコスト面では有利な構造とも言える。IMAの変速機は、一般的なAT・CVTであり、IMAの為だけの特別な変速機は無いが専用の設定の物が使われる。なお、変速機構が通常の車と大差無い事から、初代インサイトにはMTも設定されている。IMAは全車タコメーターを装備しているのに対し、THSは機能上(エンジンの回転数を運転者が決定出来ない為)あまり意味が無い事から、タコメーターを搭載していない[4]。
[編集] 動作の差異
IMAでは、エンジンは停車時以外は絶えず回り続け、加速時にはモーターも駆動、減速・制動時にはモーターが発電機となってエネルギーを回生しバッテリーに充電するというパターンである。
THSでは、加速時のみならずあらゆる場面でモーターが駆動に関与することとなる。PCUがモーターも駆動させた方が効率的と判断すれば、積極的にモーターを回して駆動に関与させるのである。そのためモーター駆動用電力は、エンジンが発電機経由で生み出したものを直接使用するようになっており、エネルギー的にはロスが大きくなるものの、トルク変換は、電気物理的特性により非常にフラットなものになるため、機械的なものより、はるかに有利となる。
減速・制動時はIMAと同様、モーターがエネルギーを回生しバッテリーに充電する。またTHSでは、エンジンを止めたままモーターのみで走行することが可能で、これを発進時や低速走行時に行う。このためAT車で起こるクリープ現象は、THSではモーターに微弱な電流を送ることで擬似的に発生させるようになっている。
[編集] 性能の差異
車両重量やエンジン排気量などの違いがあるため、比較が難しいが、トヨタのTHSシステムのほうが高出力モーターのパワーが有効に利用でき、加速性能やモーター走行領域拡大による燃費性能で有利である。THSでは大排気量エンジンとの組み合わせにも成功し、ハイブリッド車が遅いというイメージを払拭するものになっている。燃費性能を比べると、IMAはモーターのみの走行領域が狭いことで、渋滞路においてはTHSに比べて優位性が低くなる。しかし、郊外や高速道路の走行では良好な燃費性能を持つ。雑誌などで、2代目インサイトと2代目プリウスの燃費性能を比較した記事があるが、同等の燃費になっているものもある。IMAは電気駆動系がシンプルという利点を持ち、2代目インサイトでは低コスト化にも挑戦している。逆に、THSは電気駆動系が複雑であるものの、トランスミッションを機構に組み入れる為、エンジン以降の構造体は単一となる。
両者ともに一長一短であり性能に勝敗をつけるのは難しいといえるが、両者の求める特性や技術手法の違いが、必要とされるモーター出力、モーター駆動電圧及びバッテリー容量の差として表れ、製造時に用いる資源リソース(製造コスト)、リサイクル時の環境負荷において若干の差を生む。
製造コスト面においては、バッテリーを含むIMAシステムは20万円程度のエクストラコストで容易に各種4輪製品に搭載可能と公言されており、昨今の自動車業界不況の中、企業収益面への負担においてはIMAにやや分がある。
[編集] 搭載車種
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ 平成16年燃費の良いガソリン乗用車ランキング
- ^ 新型車「シビック ハイブリッド」(市販予定車)を第35回東京モーターショーにて公開 本田技研工業 2001年10月18日
- ^ http://www.tdk.co.jp/techmag/knowledge/200611u/index2.htm
- ^ THSと同様な機構を使うフォードのハイブリッド車(フォード・エスケープ ハイブリッド)は例外としてタコメーターを搭載してる
[編集] 外部リンク
- ホンダIMAシステム解説ページ(1997年IMA発表時)
- Honda IMAシステム解説ページ
- 新Honda IMAシステム解説ページ
- ホンダ・インサイト
- ホンダ・シビックハイブリッド
- MOTOR SHOW 97 HONDA J-VX
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最終更新 2009年10月28日 (水) 05:21 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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